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自閉症研究の歴史と原因論③

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、2024.05.01配信のメルマガ内容(後半)です。


前回に引き続き、自閉症の歴史と原因論です。
「自閉症の子どもたちと”恐怖の世界”」(白石勧著 花伝社)より。

※私の独断で白石さんの電子書籍をさらに割愛し断定的に書いています。よく知りたい人は白石さんの原著書をご覧ください。

1-5. 母親への信頼

■ 母親の認知が恐怖(緊張)を抑える

幼い子どもは母親と遊園地に行ったとき、母親からはぐれて迷子になると、パニックになって泣く。しかし、母親と再会すると泣きやむ。幼い子どもは母親を認知できないと恐怖が生まれ、母親を認知すると安心が生まれる。

この現象を、幼い子どもの精神(脳)に「母親の認知が恐怖(緊張)を抑える」という構造が形成されていると解釈した。その構造を現したのが以下の図である。

母親の認知
↓↓↓↓↓↓
恐怖(緊張)

この構造を想定することで、幼い子どもは母親を認知できないと恐怖が生まれ、母親を認知すると安心が生まれるという現象を理論的に説明できるようになる。

この現象から生まれる子どもの母親への感情を「信頼」と定義した。普通の子どもには母親への信頼が生まれているが、自閉症の子どもには母親への信頼が生まれていない。

■ 自閉症の子どもと恐怖の世界

自閉症の子どもに母親への信頼が生まれていないのは、母親を認知しても、母親のそばにいても、母親に抱かれても、安心が生まれないからである。

母親を認知しても、母親のそばにいても、母親に抱かれても安心が生まれないので、自閉症の子どもには安心の世界がない。安心の世界がないので、安心の世界の外側の不安の世界もない。自閉症の子どもには、安心の世界もなく、不安の世界もなく、恐怖の世界しかない

母親でさえも信頼できない自閉症の子どもにとって、地球は恐怖の世界。それで自閉症の子どもは多くのことを恐れるのである。

■ 同一性の固執

カナーが「孤立」と「同一性の固執」を自閉症の診断基準にしたように、同一性の固執は自閉症の子どもの代表的な特徴である。

同一性の固執は恐怖が原因
自閉症の子どもはいつも同じ道を歩く。いつも同じ物を食べる。いつも家具の位置が同じであることにこだわる。これまで、自閉症の子どもがなぜ同一性に固執するのかわかっていなかった。これから、自閉症の子どもが同一性に固執する理由を説明する。

たとえば、地雷が埋まっている草原に、あなたが前回通った道があったとする。今日、あなたは前回と違う道を通るだろうか。当然、前回と同じ道を通るだろう。前回安全だった道と違う道を通ることは、命の危険を犯すことを意味するからである。

自閉症の子どもも前回と同じ道を通る。それで、いつも同じ道を通るのである。自閉症の子どもがいつも同じ道を通るということが、自閉症の子どもの世界が恐怖の世界であることを示している。前回安全だった道と違う道を通ることは、命の危険を犯すことを意味するからである。

自閉症の子どもは前回と同じ物を食べる。前回食べて安全だった物と違う物を食べるのは、命の危険を犯すことを意味するからである。

自閉症の子どもは、家具の位置が前回と変わっていることに気がつくと、すぐに元の位置にもどす。家具の位置を元の位置に戻すということが、自閉症の子どもの世界が恐怖の世界であることを示している。家具の位置が前回と変わっていると、前回安全だった世界が変化したことを意味し、命の危険を意味するからである。

私たち大人は前回と違う道を通ることを恐れない。この角を曲がったら何があるだろうかと、前回と違う道を楽しむことができる。また、前回と違う物を食べることを恐れない。また、部屋の模様替えを楽しむことができる。

私たち大人が多少の変化を恐れないのは、私たち大人の世界が安心の世界だからである。私たち大人と自閉症の子どもでは住んでいる世界がことなる。

母親を信頼できない自閉症の子どもの世界は恐怖の世界なので、安全であることを経験したことしか安心できない。それで、前回と同じであるという同一性の固執が生まれるのである。

■ 母親への信頼はどのようにして生まれるのか

自閉症の子どもに母親への信頼が生まれていないのは、母親の子育てが原因ではない。母親が優しく育てても、自閉症の子どもには母親への信頼が生まれない。

そこで、なぜ自閉症の子どもには母親への信頼が生まれないのか考えた。しかし、いくら考えてもわからなかった。

この問題を考えていると、普通の子どもの母親への信頼はどのようにして生まれるのかという疑問がわいてきた。

普通の子どもの母親への信頼はいつの間にか生まれている。一般的には、授乳をしたり、オムツを替えたり、抱いたり、あやしたりといった母親の子育ての積み重ねで、子どもに母親への信頼が生まれると考えられている。

しかし、自閉症の子どもには母親への信頼が生まれない。

■ 答えは刷り込み

母親への信頼はどのようにして生まれるのか? この問いを、答えが見つからないまま抱えていた。すると、ある日、「刷り込み?」とひらめいた。

ほとんどの方が、母ガモの後をヒナが追いかけている映像を見たことがあると思う。カモのヒナが母ガモの後を追いかけるのは、母ガモを刷り込んでいるからである。たとえカモのヒナでも、母ガモを刷り込まないと母ガモの後を追いかけない。

刷り込みの研究で有名なコンラート・ローレンツの『ハイイロガンの動物行動学』という本に次の文章が出てきた。

被験動物を隔離飼育することによって・・・すべての刷り込み過程を可能な限り妨げると臆病で、一緒に行動をしようとはしないハイイロガンになる。

ハイイロガンは仲間と群れを作る鳥だが、刷り込みを妨げられたハイイロガンは臆病で、仲間からできるだけ遠く離れて座った。その障害の現れ方は「自閉児」と似ていた。

ローレンツのこの文章を読んで、人間の子どもの母親への信頼も刷り込みで生まれると確信した。母親への信頼が刷り込みで生まれるのであれば、母親がいくら優しく育てても自閉症の子どもに母親への信頼が生まれないことを説明できる。

人間の赤ちゃんも刷り込みをしているのだろうか?

次回に続く


白石氏の電子書籍の目次は以下のとおりです。
※なお、本記事は白石氏の了承のもと公開しております。

第一部 自閉症の原因と予防
  第1章 自閉症の原因
  第2章 刷り込み
  第3章 新生児室
  第4章 自閉症予防の5カ条
第二部 自閉症の正しい理解と支援
  第5章 自閉症の正しい理解
  第6章 後期発症型の自閉症
  第7章 恐怖症の治療
  第8章 恐怖症の治療と教育



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