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お産と自閉症 新生児室①

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、2024.05.10配信のメルマガ内容です。

前回に引き続き、「自閉症の子どもたちと”恐怖の世界”」(白石勧著 花伝社)より。
今回は新生児室①です。

※白石さんの書籍を割愛し結論を中心にお伝えしています。詳しく知りたい人、文献も見たい人は原著書をご覧ください。


これまでに分かったこと

  • 一般に「母親への信頼は刷り込みである。刷り込みがないと信頼がおけず、母親への甘えもなく、傍にいても安心できず不安が生じ、さらには恐怖を感じるようになる。恐怖のために同一性に固執し孤立する」

  • 「鳥では、刷り込みには、母親を特定するだけではなく、自分が属する種や、仲間の種や、繁殖相手の種を特定する機能があることが分かっている。また、自分の種への共感能力が生まれるという機能がある」

  • 「哺乳類でも、早成種であるキリンの子やカバの子だけではなく、晩成種であるネコの子も生後早期に刷り込みが生じている」

  • 「人間の赤ちゃんも刷り込みによって頼るべき母親を特定している。したがって、自閉症の子どもに母親への信頼が生まれていないのは刷り込みの障害が原因である」

第3章 新生児室

自閉症の子どもに母親への信頼が生まれていないのは、生まれた赤ちゃんを母親からはなして新生児室に入れるといった、病院の出産環境がおもな原因である。

3-1. 新生児室の普及

■ 母子同床

カナーは1930年に、ジョンズ・ホプキンス大学病院の小児科にアメリカで最初の児童精神科を開設した。

最初に自閉症の子どもが来たのは1935年である。最初の10年で4人しか自閉症の子どもは来ていない。現在の日本では、カナータイプと言われている自閉症の子どもは約300人に1人と言われている。

カナーの症例で11名の自閉症の子どもで一番早く生まれた子どもは1931年生まれだった。それより前に生まれた自閉症の子どもはひとりもいなかった。

私(※白石氏)は1949年生まれで団塊の世代(1947~1949)である。地域にも学校にも子どもがあふれていた。しかし、私は子どものころ、自閉症の子どもに1人も会ったことがなかった。

団塊の世代までの出産はほとんどが家庭出産で、出産直後から母子同床である。直後から母子同床であれば、刷り込みに障害が生まれる余地はない。それで、団塊の世代に自閉症の子どもはほとんどいないのである。

■ 新生児室

19世紀後半に、フランスのパスツール(1822-1895)やドイツのコッホ(1843-1910)、日本の北里柴三郎(1853-1931)や野口英世(1876-1928)に代表されるように、細菌学が興隆した。そして、1918年から1920年にかけてスペイン風邪が大流行した。

このような経緯があって、赤ちゃんが細菌に感染しないように殺菌消毒をした保育室が考案された。その後、殺菌消毒をした新生児室に隔離するようになった。

小児科医の三宅廉(1971)から引用する。

アメリカに於いては一九二二年、ヘス(Hess)が初めて感染防止のため、保育室を作り、母と隔離して保育することを考案して以来、一九四六年に至るまで、専らこの方法がアメリカに於いて採用され、ヨーロッパ諸国間に拡がり、その結果期待どおり新生児の罹病率、ひいては死亡率の減少を来たしえた。日本に於いても、この方法が近代病院の特色として採用され、好成績を挙げて来た。(p.102)

三宅廉(1971)

三宅は保育室(新生児室)の採用で、新生児の死亡率が減少したと書いている。しかし、本当に新生児の死亡率が減少したのだろうか。

現在、ユニセフに認定された新生児室がない「赤ちゃんにやさしい病院」が世界で15000ほど普及している。
もしも、「赤ちゃんにやさしい病院」が新生児室のある病院よりも新生児死亡率が高いという統計があれば、「赤ちゃんにやさしい病院」はこれほど普及していないはずである。

多くの方は、病院の新生児室は家庭よりも安全だと考えていると思う。しかし、病院はいくら掃除がしてあっても、感染症に関しては安全とは言えない。また、薬剤耐性菌による院内感染のリスクもある。感染症の予防のためという目的で新生児室が考案されたが、逆に、感染症に関しては新生児室よりも家庭の方が安全である。

したがって、新生児室の採用で新生児死亡率が減少したというのは何かの間違いである。
ところが、高名な医師が、新生児室の採用で新生児死亡率が減少したと書いたのである。誰もが信じた。

世界で一番子どもが幸せな国と言われているオランダでは、約4人に1人が自宅出産である。出産は自然なことで病気ではないという発想である。ちなみに、水泳の池江璃花子選手は自宅のお風呂で、水中出産で生まれている。

オランダでは、病院出産でも出産後3時間ほどで退院する。そして、出産後8日間、1日8時間、無料で国家資格を持った訪問看護師が自宅に来て、授乳の仕方や沐浴の方法などを教えてくれる。そして、掃除・洗濯・買い物・食事の用意といった家事全般をしてくれるだけではなく、上の子がいたら上の子の世話もしてくれる。

病院は感染症の危険が高い高額なホテルのようなものである。日本もオランダのように退院を早くして、無償で母親をサポートする制度を作る必要がある。これはコストパフォーマンスが非常に高い制度である。

自閉症になる子どもがいなくなるだけではなく、産後鬱も減り、赤ちゃんの虐待も減り、少子化の対策にもなるだろう。上の子も、長い間母子分離されないので、ストレスがたまらない。生まれてきた下の子を優しく迎えることができる。


(以上、白石さんの本から要旨を伝えています。立場によっては異論もあるかも知れませんが、どれも注目すべき内容です)

次回は新生児室②です。



白石氏の電子書籍の目次は以下のとおりです。
※なお、本記事は白石氏の了承のもと公開しております。

第一部 自閉症の原因と予防
  第1章 自閉症の原因
  第2章 刷り込み
  第3章 新生児室
  第4章 自閉症予防の5カ条
第二部 自閉症の正しい理解と支援
  第5章 自閉症の正しい理解
  第6章 後期発症型の自閉症
  第7章 恐怖症の治療
  第8章 恐怖症の治療と教育


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