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僕らの炎も混ぜてくれ

高速道路を駆け抜ける車。助席でどこまでも続く山々を眺める。
仲間とともに京都を北上する。この道は何度目だろうか。
ドライバーと視線が合うことはない。黙々と会話をし続け、目線は前に。
未来の話をあっちへいったり、こっちへいったり。

移動時間と家にいるときだけが休んでいる。
休んでいても未来の話でワクワクしている。暮らしも仕事も垣根がない。
あるとすれば仕事は一つの実験でしかない。この暮らしと仕事の間くらいの言葉しかない時間を僕は愛おしく思っている。

車の灰皿は僕の銘柄でいっぱいだ。
窓を開けて煙を逃す。春と夏の間の心地よい風が車内に入り込む。
話すことに夢中で、途中どこに向かっているのか忘れていた。
今月の半分以上が遠いどこかへお出かけしている。
果たしてこの仕事はなんなのか、年を追うごとに迷宮に迷い込んで行く。

PAで水を買う。ごくりと飲み干してグッと体を伸ばす。
この仕事はなんなのだろうと、また思う。
町おこし?ブランディング?アイデア?クリエイティブ?
そのどれでもない。ふと、そう思った。

僕らの仕事は「関係性を結ぶ」ことなんだと思う。
表層的なことではなく根源的なこと。
グッとほどけぬよう固く強く結ぶために今移動している。
膝を付き合わせて、腹を割って話をしよう。

年上、年下関係ない。
どんな仕事をしているか、そんなこともっとどうでもいい。
想ってることを聞かせてくれ。何をしたい。どんな未来がいい。何に怒っている。何が喜びか。ほら、もう一杯飲もうや。

ムッチャかっこいいやんけ。それはお前が悪い。暗い顔すんな。
顎あげて、目線をあげて。もう少し上、そうそうちょっとお天道様見えるくらいがちょうどいい。背筋伸びる。胸を張れ、汗を流せ、失敗しろ、決断しろ、大丈夫となり走っとるし困ったら声かけて。でも、やるのは君たちだ。

どこにいっても、同じようなことをしている。
本当のことを聞かせてくれ。俺もそれを見せるから。
何枚も扉を開けて、そこでぐっと肩を組む。関係性をつないでいって、仲間をたくさん増やしていって、想いを伝播させていくんだ。

僕らは京都から松明を持って、さまざまな場所へ行く。
そこに少し火をくべる。僕らの炎も混ぜてくれ。
大きく燃やすやり方知ってるんだ。誰もがわかる狼煙をあげよう。
せっかくなんかの縁で同じ時代、生きてて会うことができて、こうやって酒を飲み交わしてるんだ。やるなら俺らの面白いと信じれることをやろう。

みんなで集めた火種を消さぬよう。
酒でも持ち寄って海の音でも聞きながら、焚き火に想いをくべ続けるんだ。
どっちが前か、わかってるか?
耳をたてろ、心臓の音を聞け、ワクワクする方があるだろう。
それが前だ。

今週は、滋賀と福井へ。
来週は、浜松と神河、米子へ。
再来週は、姫路へ。

そこの炎に俺も混ぜておくれ。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。