ファイル_2018-01-08_15_05_04

祖父の本棚

僕の祖父は本の虫だった。一緒に住み始めたのは小学1年生が始まるくらい。本の出費が高くつくから図書館へ通い続けていた。カバンには読み終えた無数の本がパンパンに詰まっていて、帰ってくると新しい本でいっぱいになっていた。

リビングに腰掛けテレビを見るか、本を読むか、時折バイトにも出かけていた。僕が記憶する祖父の姿はリビングで真剣に物語に向き合う風景だ。部屋は床から天井まで本棚で埋め尽くされていた。その祖父は昨年天寿を全うした。

昨夜の僕は、本を読み終えてしまい本棚を物色していた。もう何周目かになる本や途中で読み飽きた本が祖父の本棚と同じように京都の我が家にも陳列されている。椅子を持ってきて高い段の本棚を物色し、ペラペラと開き、次はどの物語に進もうか悩んでいた。

ふと窓に映る自分の姿が見え、「これじいちゃんと同じだ」と祖父を思い返したのである。幼少の僕が暇でゴロゴロしている横で祖父は本を読み終え、本棚の前で次はどれを読もうかと真剣な顔してページをめくる。その姿そのままが窓に映っていた。

もちろん僕も祖父も生まれた時代が違うわけで、接する娯楽も違うだろう。祖父で言えば本と映画、それに野球かな。よく幼い時は一緒に映画館へいった。沈黙の艦隊見に行って急にお色気シーンに展開して、さっと目隠しされたっけな。懐かしい。

時代は進んで僕らには本や映画、ゲームに今ならNetflixとかね。いろいろあるよ。もし同級生だったら、一緒にコーラかお酒でも飲んでNetflixを朝まで見たのかもしれない、そんな想像をして、いい風景だなとか思ったり。

あの世で会えるかわからないし、あるのかもわからないけど。
あと何十年後かにはそちらに伺う予定なのでデビルマンのリメイクがすごくてとか、ストレンジャーシングスが面白すぎてとか、一緒に祖父が愛した酒でも飲んであの世の映画館で腰を深く落として話したい。

僕の枕元にはいつも祖父から借りたまんまの本が数冊置いてあって、寝る前に少しずつ読んでいる。次帰ったら祖父の本棚に読んでいた本を返して、新しい本を鞄パンパンにいれて帰ってくる。その姿もまた祖父をみているようだ。



いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。