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【読書録】『よしながふみ『大奥』を旅する』太陽の地図帖編集部

今日ご紹介する本は、『よしながふみ『大奥』を旅する』(2021年、平凡社、太陽の地図編集部)。よしながふみ氏の『大奥』という漫画作品のガイドブック的な本だ。

私がこの本を購入したきっかけは、よしながふみ氏の『大奥』という漫画作品を、漫画アプリで読み、かつ、最近、同作を原作とするNHKのドラマを観たことだった。(なお、TBSでも過去にドラマ化されている。また、近々、Netflixでアニメ化の予定もあるということだ。)

大奥とは、ご存知のとおり、江戸時代に、将軍の夫人である御台所や側室らが居所のあった江戸城の後宮エリアのことだ。この大奥を扱った物語や映像作品は多いが、よしながふみ氏の『大奥』は、とてもユニークな作品だ。

(以下ネタバレあり、ご注意ください。)

この『大奥』という作品の特徴をひとことで言うと、男女逆転SF時代劇だ。謎の疫病の蔓延により若い男性の数が激減してしまい、江戸時代の日本が、女将軍の率いる女性社会になっていたというストーリー。将軍が女性なので、正室や側室は男性となり、大奥も女の園ではなく、男の園、という設定になっている。

そして、この作品は、スケールがとても壮大だ。16年の長きにわたり雑誌に連載され、コミックの冊数は全19冊。徳川家光の時代から幕末にかけて、13人の将軍による260年の治世にわたる、大奥における人間関係や、江戸時代の世の中の動きについて、物語仕立てにしている。そして、そのストーリーが、史実にかなり忠実であることに、とても驚かされた。

この作品にすっかり魅了された私は、作者のよしながふみ氏のことや、この物語についてもっと詳しく知りたいと思った。

そこで、この本『よしながふみ『大奥』を旅する』を買ったのだが、大正解だった。

よしながふみ氏の『大奥』作品を解説するため、様々な内容で構成されている。きれいなイラストが多く、原画やネームなども豊富に掲載されている。歴史上大きな役割を果たした将軍やキーパーソンとなる家臣などの人物像について、大変わかりやすく解説してくれている。

そして、当時の時代背景についての歴史コラムも充実している。

江戸城の解説。城好きにはたまらない。

さらに、登場人物相関図と、登場人物図鑑が秀逸で、とても役立った。壮大なストーリーを追っていくうちに、人物のつながりが分からなくなり混乱してしまっても、これがあれば大丈夫!

登場人物相関図。
登場人物図鑑。

ところで、この本に収録されていた巖谷国士いわやくにお氏のエッセイに、以下のくだりがあった。

・・・この作品には、歴史の単なる読み替えというよりも、日本社会から男性の支配を差し引いたらどうなるかという仮定にもとづいて、一種の実験を試みている気配がある。(p80)

日本社会から男性支配を差し引く実験。そういう観点で『大奥』という作品をもう一度読んでみると、女性優位の日本社会というものがいつか到来するとすればどんなものになるのか、漫画の登場人物を通してリアルに想像することができて、とても興味深い。そういう社会の良し悪しは別にして・・・。

この本は、よしながふみ氏の漫画『大奥』と、それを原作とするドラマ作品のファンの方には、きっと大いに楽しんでいただけると思う。江戸時代の歴史に興味のある方、お城好きの方、更には、ジェンダー問題に興味のある方にも、『大奥』作品とセットでおすすめしたい。

ご参考になれば幸いです!

コミック(漫画)はこちら。

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