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【読書録】『温泉博士が教える最高の温泉』小林裕彦

今日ご紹介する本は、小林裕彦氏の『温泉博士が教える最高の温泉』

この本は、温泉ガールである私が、最も頻繁に参照している愛読書のひとつだ。ひとことで言ってしまうと、そのタイトルのとおり、最高の温泉を紹介する、温泉紹介本だ。

著者の小林裕彦氏は、本業は、なんと、弁護士さんである。お忙しいであろう弁護士業のかたわら、全国2983か所(平成30年3月末現在)を巡られたそうだ。

最近、温泉紹介本は、巷に多く溢れている。しかし、本書は、多くの類書とは一線を画する。

温泉の真の姿に迫っており、奥が深い。たとえば、「温泉業界の深くて暗い闇」というくだりでは、温泉業界において、旅行客や湯治客には知らされない、業界の裏話などにも切り込んでいる。特に、「公正取引委員会の温泉に関する調査報告」によって、温泉業界の闇が明らかにされたことを示したくだりや、温泉法による情報開示についてのくだりは、法律家ならではのロジカルな説明が、とても分かりやすい。

そして、小林氏は、温泉についてのご自身の6つの主張を述べている。私は、この部分を読んで、心底共感した。ここで、そのエッセンスを是非引用させていただきたい。

① 循環風呂や塩素殺菌の温泉は、温泉ではないことを明確にすべき
② 消費者に対して温泉に関する基本情報を開示すべき(源泉については参考にとどめ、浴槽内の泉質の情報を開示すべき)
③ 循環風呂には温泉分析表の掲示義務は不要
④ 循環風呂は、療養泉の効能があるかを確認したうえで適応症の掲示を認めるべき
⑤ 源泉かけ流しの定義を明確にすべき
⑥ 源泉かけ流しにまで塩素殺菌を事実上強制するような条例は即刻改正すべき

このように、温泉について強い意見を持つ小林氏が、本書にて、特に素晴らしいと考える本物の源泉かけ流しの温泉を300湯、まさに「厳選」している。

特に「総合力の高い旅館30選+α」については、そのうちいくつかを既に訪問したことがあるが、本当に文字通り総合力が高く、納得のいく素晴らしいセレクションだった。この30選は、是非制覇してみたい。

そして、「ジャンル別オススメ温泉」へと続く。この、ジャンル別の切り口が、大変ユニークだ。日本の温泉がこのようにバラエティに富んでいるとは、驚きだ。

「五大共同浴場」「七大足元湧出温泉」「新五大美人・美肌湯」「三大山の中温泉」「新三大秘湯」「五大湯治温泉」「五大冷泉」「五大炭酸泉」「十大絵になる温泉」「七大ドバドバ温泉」「五大強烈臭温泉」「五大質素な温泉」「五大鄙びた温泉地」「十大野湯」「五大不思議温泉」

そして、最後に「心を鬼にして選んだ地域別おすすめ温泉200選」がリスト化されている。上記の「総合力の高い温泉」「ジャンル別温泉」から漏れた温泉から、厳選して200選に絞り込んだという。宿泊施設もあれば、日帰り施設もある。やはり、こちらに掲載されている温泉も、いくつか訪問済みのものがあるが、いずれも素晴らしいものばかりだった。

さらに大変重宝するのが、巻末の「温泉INDEX」だ。本書で紹介された300選の温泉が、北海道から鹿児島県まで、北から南へ、順にリスト化されている。

どこかに出張や用事、旅行などで遠出するときには、この本を見て、目的地付近に良い温泉はないか?とチェックするのが、もはや私の習慣になっている。

なお、このリストを眺めていると、都道府県によって、温泉の充実度に大きな偏りがあることがわかる。

たとえば、北海道、青森県、福島県、栃木県、群馬県、長野県、大分県、鹿児島県などには、たくさんの温泉がランクインしている。他方で、茨城県、埼玉県、福井県、滋賀県、広島県、香川県、徳島県、沖縄県からは、残念ながら、1件も紹介されていない。温泉というのは自然の恵みなので、偏りがあるのは仕方のないことだろう。

このように、私がこの本から得た情報は多く、どれも有益なものだった。さらに、小林氏の温泉体験談的なコラムも、なかなか面白く、読み物としても楽しませていただいた。

温泉を愛する皆さんには、買って損はない一冊だと断言する。

ご参考になれば幸いです!

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