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【温泉】下部温泉「古湯坊 源泉舘」(山梨県身延町)

今日ご紹介する温泉は、下部温泉「古湯坊 源泉舘」さん。温泉好きには有名なお宿だ。

公式サイトには次のような案内文がある。

源泉舘の『武田信玄公かくし湯大岩風呂』は1300年前から多くの人々の傷や病を癒してきました。戦国時代には武田信玄公が許可証を発行し、温泉を大切に守ってきたという資料も残っています。
現在では、手術後の傷や火傷などの外傷性の傷病に良いとされ、全国から多くのお客様が湯治を目的に来られます。

足下から湧き出る、約30℃の源泉が浴槽を満たしているため、循環・加水・加温を一切していない「本物の温泉」に入浴することができます。
源泉に優しく包まれる不思議な感覚を、是非体験してみてください!

この解説文にあるとおり、こちらの温泉は、武田信玄の隠し湯のひとつであり、戦国時代から1300年以上にわたる伝統ある湯治場なのだ。約30度の冷たい源泉が足下から湧き出る大きな岩風呂が名物だ。

戦国武将と温泉をこよなく愛する私にとって、こちらのお宿は、長らく、憧れの場所だった。昨年(2022年)7月、湯治用のお部屋の予約が取れたため、ひとりでふらりと出かけることにした。


宿へのアクセス(電車と徒歩)

このときは、電車で向かった。甲府から、JR身延線で、下部温泉駅まで乗る。下部温泉駅からは、お宿の送迎がある。しかし徒歩で歩いても20分ほどだと分かり、運動がてら、駅から歩いて向かうことにした。

甲府から電車にて
こぢんまりとした駅。
少し上り坂。
橋を渡る。
レトロな街並み。

外観

ようやく、到着! 奥にお宿が見えた。赤い鳥居と、レトロな看板が目を引く。

鳥居の右側にあるのが、別舘「神泉」。名物大岩風呂とともに、湯治客用のお部屋のある建物だ。

そして、鳥居の左手の坂を上がると・・・。

その先に、本舘がある。こちらは旅館棟だ。

別舘「神泉」

館内

こちらが、別舘「神泉」の玄関。そのすぐ左右に、大岩風呂への入り口がある。

武田信玄の書状が掲示されていた。さすが、信玄の隠し湯!

玄関から向かって右手に、「男子入口」。

そして、玄関から向かって左手に「女子入口」。

この大岩風呂、入口と脱衣所は男女別だが、浴場はひとつだけ。完全な混浴なのだ。後でじっくりご紹介しよう。

何故かモナリザの絵。

客室

私が宿泊したのは、この別舘の湯治用のお部屋だ。至ってシンプルな造りだが、とても清潔だ。

特筆すべきは、この、ガーゼのタオル。そして、タオルクリップ!

混浴の大岩風呂は、男女が気兼ねなく一緒に湯浴みできるよう、タオル巻きがOKなのだ。そして、乾きやすいガーゼのタオルを貸してくれる。さらに、タオルがはだけないように、タオルを留めるクリップまで貸してくれるのだ。これは、女性には大変ありがたいご配慮だ。

大岩風呂への入り方の説明と、別舘とは別棟になっている本舘の案内の説明。大変分かりやすい。

ところで、大岩風呂の入り方だが、源泉は30度と冷たいため、同じエリアに、適温に加温された温泉浴槽が用意されている。冷泉で湯浴みをする際には、冷たい源泉と加温温泉の交互浴をするのが基本だ。お宿の説明によると、身体を洗う→源泉20分→加温の上がり湯3分→源泉→上がり湯、と繰り返し、最後はサッと源泉でしめると良いということだ。

大岩風呂

それでは、いよいよ、お待ちかねの、名物・大岩風呂へ。

「女子入口」から、女子用の脱衣所へ。

中央の脱水器にはお世話になった。

服を脱ぎ、ガーゼのバスタオルを巻き、クリップで留めて、いざ、行かん!

ドアを開けて、浴場エリアへ。

そこは、岩を多用した、広い不思議な空間だった。ほんのり暗い。そこに、タオル巻きの老若男女が10人ほどいた(写真は別の機会に撮影したもの)。

浴場手前には、洗い場が設けられている。カーテンのついたエリアもある。女性でも、カーテンの内側で、誰にも見られることなく身体を洗うことができる。皆さんマナー良く、ひとりずつ順番を守ってお使いだった。

そして、こちらが、加温浴槽。上がり湯だ。触ってみると、ちょうど良い温度に温められていた。

上がり湯用の加温浴槽

上がり湯の側には階段があり、その下の方にある源泉浴槽につながっている。

階段を下りると・・・。

なんと広い源泉浴槽! ちょっとしたプールのような大きさだ。

反対の角度から。上の写真の右手前、下の写真の右奥の暗い部分が、穴のような状態で、足元が深くなっている。ここが人気のスポットのようで、常時、誰かが、すっぽりと穴の中に入っていた。

最初に源泉に入ったときには、大変冷たく感じた。これは、寒がりの自分には無理かな・・・、と、若干、後悔した。

しかし、しばらく我慢して浸かっていると、だんだん身体の芯からじんわりと温かくなってきた。何とも言えず心地よい気分になり、うとうとしてきた。

水面を眺めていると、底から時折、ぷくぷくと小さな泡が浮き上がってくる。生まれたての泡をじっと見つめていると、浮世での雑念が消えてゆき、無の境地に至る。これぞ、マインドフルネス。

そして、暫く経って、身体が冷えてきたと感じ、適温に加温された上がり湯に移動し、浸かってみた。

おお、あたたかい! 何とも言えない安心感に包まれ、思わず声が漏れる。

暫く温まった後、もう一度、源泉に戻る。すると、また、ヒヤッとする。しかし、そこからまた心地よい癒しのひとときが始まってゆく。こうして、無限ループにはまっていく・・・。

この温泉で感動したのは、お客さんたちのマナーの良いことだ。皆さん、この癒しの交互浴を求めてやってきている。ひとり客も多い。静かに源泉を見つめている方や、目をつぶってじっと瞑想している方が殆どだ。普通の温泉とはずいぶん趣が異なる。

こうして、薄暗い静かな空間で、冷泉に身を委ねていると、あっという間に時間が過ぎていった。周りにも、1時間以上浸かっていらっしゃるお客さんがが多かった。

なんという神秘的な、非日常的な空間であることか・・・。

そして、こちらが、大岩風呂の温泉分析書。

泉質は、単純温泉(弱アルカリ性)。泉温は30.2度。PH値は8.4。そして、湧出量は「構造上測定不可 自然湧出」とある。それもそのはず、浴槽の真下から源泉が湧出しているのだ。これほど新鮮な源泉にはそう簡単にはお目にかかれない。

また。入浴法の案内が壁に掲げられていた。入浴回数は1日5回、午前に2回、午後に3回というのが推奨されるということだ。

そして、以下のような解説もあった。1300年の歴史を誇る岩風呂だが、東日本大震災(いわゆる3.11)で、温泉に変化が生じたとか。湯量が増え、泉温も1度上がったらしい。自然の神秘。温泉は生き物なのだ。

本舘

こちらのお宿で有名なのは、上記の別舘「神泉」の大岩風呂だが、本舘のほうにもよい温泉があるという。大岩風呂から上がり、暫く部屋で休んだ後、本舘のお風呂に向かってみた。

こちらが、玄関。「風林火山」という文字が目につく。信玄愛が強い。

温泉へ向かう廊下。壁上部には、信玄の武将たちの絵が掲げられていた。ここでも、強い信玄愛が感じられる。

こちらの温泉は、男女別になっている。こちらは、女湯入り口。

そしてこちらが、女湯の湯船。シンプルだが清潔。

こちらが、温泉分析書。

泉質は、アルカリ性単純温泉。大岩風呂と違って、動力揚湯している「しもべ奥の湯」という源泉から引き湯しているらしい。泉温は49.4度。湧出量は200リットル。PH値は9.4。

こちらのお湯が名湯であるとの記事も、掲示されていた。

適温であり、若干の硫黄臭、硫黄味がする。鮮度も良い。こちらも、極上のお湯だ。男女別なので、安心して裸で入れる。バスタオルがはだけないように気を使わなくても良い。体を大きく伸ばして、ほっと一息つくことができた。

食事

別舘でのお食事は、お膳でお部屋まで運んでくれるシステムだ。

夕食

このように、お部屋までお膳を届けてくれた。2段になっている。

テーブルの上に並べてみる。ヘルシーな料理が並ぶ。優しいお味で、とても美味しかった。

朝食

朝食も、やはり部屋食。やはり、2段のお膳がお部屋まで運ばれてきた。

テーブルの上に広げる。こちらも、模範的な日本の朝ごはん。お味も良い。

こういうヘルシーな食事をいただきながら、冷泉に浸かって湯治を続けていたら、殆どの人は、身体のコンディションが劇的に改善するのではなかろうか。ここに住みたい・・・と真剣に思った。常連さんのお話を聞くと、かなりの長期にわたって滞在をされるも多いということだった。

そして、朝食後には、本舘ロビーでのコーヒーサービスを楽しませていただいた。嬉しいご配慮に感謝。

おまけ・熊野神社

本舘と別舘の間にあった赤い鳥居。これをくぐると、どこに通じているのか? チェックアウト前に、少し散策してみることにした。どうやら、裏山に神社があるらしい。

石段をどんどん上ったその先には、「熊野神社」が鎮座していた。

場所柄、病気平癒を願う書き込みがあった。

そしてなぜか『下部の宿』という歌の歌詞が奉納されていた。昭和60年にヒットした歌謡曲らしいのだが、YouTubeで検索しても、ヒットしなかった・・・。

1300年の歴史を持つ、信玄の隠し湯。そこでの神秘的で非日常的な時間は、私の「温活」のなかでも、特に印象に残る体験のひとつとなった。

素晴らしいお湯でした。お世話になりました!

こちらの旅館の公式サイトはこちら。

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