見出し画像

【温泉】温泉分析書を読むための知識(保存版)

私が温泉を訪問して、掲示してある温泉分析書を読む際に参照する基礎知識集です。随時更新予定です。

あくまで自分のメモのためにまとめたもので、マニアックすぎて、あまり多くの方のお役には立たないかもしれません。ご興味のある方のみご参照ください。

温泉分析書の実例

まずは、草津温泉「千代の湯」(湯畑源泉)の入口に掲示してあった温泉分析書。ハイライトは私が付したもの(以下同じ)で、こちらのお湯について注目しているポイントを示した。酸性で硫黄を含む草津温泉らしいお湯。

画像9

こちらは、松代温泉「松代荘」の温泉分析書。成分の含有量がすごい。

画像8

石和温泉「深雪温泉」の温泉分析書。単純温泉だが、湧出量が多く、贅沢な源泉掛け流し。

画像13

さらに、茨城県の「湯の澤鉱泉」の温泉分析書。泉温が25度未満であり、鉱泉分析法指針に定める物質の含有量がないため、療養泉とはならず、泉質名はつかない。しかし、温泉法第2条の別表に定める炭酸水素ナトリウム量を満たすことから、温泉法上の温泉である。

画像12

温泉の定義

温泉法2条1項

「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。

温泉法第2条別表

画像13

鉱泉の定義

鉱泉分析法指針1-1

鉱泉とは,地中から湧出する温水および鉱水の泉水で,多量の固形物質,またはガス状物質,もしくは特殊な物質を含むか,あるいは泉温が,源泉周囲の年平均気温より常に著しく高いものをいう。
温泉法にいう「温泉」は,鉱泉の他,地中より湧出する水蒸気およびその他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)を包含する定義である。
鉱泉は,温泉法第 2 条別表に従い,常水と区別する(第 1-1 表)。
鉱泉のうち,特に治療の目的に供し得るものを療養泉とし,第 1-2 表により定義する。

鉱泉分析法指針第1-2表

画像14

(※平成26年の改定により、銅イオン(1 mg/kg 以上)とアルミニウムイオン(100 mg/kg 以上)が削除され、よう化物イオン(10 mg/kg 以上)が新たに追加された。)

鉱泉の分類

泉温の分類

鉱泉が,地上に湧出したときの温度,または採取したときの温度を泉温という。鉱泉を泉温により次のとおり分類する。

冷鉱泉  25 ℃未満
低温泉  25 ℃以上 34 ℃未満
温泉   34 ℃以上 42 ℃未満(※狭義の温泉)
高温泉  42 ℃以上

液性の分類

酸性      pH 3 未満
弱酸性     pH 3 以上 6 未満
中性      pH 6 以上 7.5 未満
弱アルカリ性  pH 7.5 以上 8.5 未満
アルカリ性   pH 8.5 以上

浸透圧の分類

鉱泉の浸透圧を,溶存物質(ガス性のものを除く)または凝固点(氷点)により次のとおり分類する。

※溶存物質 (ガス性のものを除く) mg/kg ・凝固点
低張性  8000 未満・-0.55 ℃以上
等張性  8000 以上 10000 未満・-0.55 ℃未満-0.58 ℃以上
高張性  10000 以上・-0.58 ℃未満

療養泉の泉質の分類

塩類泉

溶存物質 (ガス性のものを除く)が 1000 mg/kg 以上のものを陰イオンの主成分に従い分類。主成分とはミリバル(mval)値が最も大きいものをいう。

1) 塩化物泉
陰イオンの主成分が塩化物イオン(Cl-)であるもの。
 ナトリウム-塩化物泉(ナトリウム-塩化物強塩泉)
 カルシウム-塩化物泉
 マグネシウム-塩化物泉
2) 炭酸水素塩泉
陰イオンの主成分が炭酸水素イオン(HCO3-)であるもの。
 ナトリウム-炭酸水素塩泉
 カルシウム-炭酸水素塩泉
 マグネシウム-炭酸水素塩泉
3) 硫酸塩泉
陰イオンの主成分が硫酸イオンであるもの。
 ナトリウム-硫酸塩泉
 マグネシウム-硫酸塩泉
 カルシウム-硫酸塩泉
 鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉
 アルミニウム-硫酸塩泉
<陽イオンと陰イオンについて>
世界中のほとんどの温泉の成分は、
●陽イオン4種(ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム)
●陰イオン3種(炭酸水素、塩化物、硫酸)
の合計7種のイオンで占められている
と言っても過言ではない。
したがって、温泉の主成分と言うとき、通常はこれら7種のイオンを指す。ただし、酸性泉では水素イオンが主要陽イオンとなる。また、アルミニウムイオンや鉄イオンが加わることもある。
(※別府温泉地球博物館のウェブサイトより要約。https://www.beppumuseum.jp/archives/epo02.html

単純温泉

溶存物質(ガス性のものを除く)が1000 mg/kg に満たないもので,泉温が 25 ℃以上のものを単純温泉という。また,現地(湧出地)での pH 測定値が 8.5 以上の単純温泉をアルカリ性単純温泉という。

特殊成分を含む療養泉

1) 特殊成分を含む単純冷鉱泉

①単純二酸化炭素冷鉱泉 
②単純鉄冷鉱泉 
③単純酸性冷鉱泉 
④単純よう素冷鉱泉 
⑤単純硫黄冷鉱泉 
⑥単純放射能冷鉱泉(単純弱放射能冷鉱泉・単純放射能冷鉱泉) 

2) 特殊成分を含む単純温泉

①単純二酸化炭素温泉
②単純鉄温泉
③単純酸性温泉
④単純よう素温泉
⑤単純硫黄温泉
⑥単純放射能温泉(単純弱放射能温泉・単純放射能温泉)  

3) 特殊成分を含む塩類泉

以下の場合は、泉質名の始めに以下のとおり付記する。
●水素イオンを 1 mg/kg 以上含有する塩類泉:「酸性-」を付記。
●総硫黄,二酸化炭素,ラドン,総鉄およびよう化物イオンを限界値以上含有する塩類泉:「含二酸化炭素-」,「含よう素-」等と付記。  

特殊成分の表記順位

特殊成分を2種類以上含有する場合は、次の順番で記載する。

画像14

新旧対照表

現在の泉質名(新泉質名)は、昭和54年に、国際基準に合わせるため、それまで使っていた旧泉質名に代えて導入されたもの。

画像15

画像16

適応症

一般的適応症

泉質を問わず共通する適応症。以下は、環境省のリーフレット「温泉療養のイ・ロ・ハ」より。
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/ha.pdf

画像10

泉質別適応症

日本温泉協会様のウェブサイトより。

画像9

禁忌症

同じく、日本温泉協会様のウェブサイトより。

画像11

参考資料

環境省ウェブサイト

「別府温泉地球博物館」様の泉質についての解説のページ

日本温泉協会様のウェブサイト

私の過去の温泉記事へのリンク集はこちら。


この記事が参加している募集

サポートをいただきましたら、他のnoterさんへのサポートの原資にしたいと思います。