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【読書録】『AI新世』小林亮太/篠本滋/甘利俊一

今日ご紹介するのは、今年8月に発売されたばかりのAIに関する書籍、『AI新世』(文春新書、2022年8月20日発行)。

本書の著者者・監修者は、この分野の研究に携わっている学者さんたちである。

まず、著者のひとりである小林亮太(こばやし・りょうた)氏は、国立情報学研究所助教などを経て、現在は、東京大学数理・情報教育研究センター准教授。もうひとりの著者である篠本滋(しのもと・しげる)氏は、京都大学理学研究所准教授などを経て、現在、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)客員研究員だ。そして、監修者である甘利俊一(あまり・しゅんいち)氏は、東京大学工学研究科教授、理化学研究所脳科学総合研究センター長を経て、現在は、理化学研究所栄誉研究員、提供大学先端総合研究機構特任教授。文化勲章受章者でもある。

いやはや、錚々たるメンバーだ。

「AI」とは、"Artificial Intelligence" の略で、日本語に訳せば「人工知能」となる。しかし、このAIという言葉が何を意味するかについては、専門家の間にも統一された見解がないという。

この本は、「AI」と総称されるソフトウェア技術にできることや、AIによってもたらされると思われる今後の社会の変化などについて、専門家の先生方が、この分野についての素人にもわかりやすく説明してくれる、入門書ともいえる本だ。

AIによる技術の進歩については、最近、メディアで見聞きしない日はないが、それらがどいうものなのかについて、私は、あまり理解できていなかった。

本書では、AIでできることとして、画像の認識と生成、音声の認識と生成、文章の認識と生成について、豊富な具体例を交えてわかりやすく解説してくれる。そのうえで、ありとあらゆる応用ができること、さらに未来でできそうなことについて予測する。

これを読んで、AI技術の多くが、実はもうすでに私たちの生活に欠かせないものになっていることがよく分かる。改めて、テクノロジーがもたらす最近の世の中の進歩の速さに驚愕する。

そして、第一次産業、第二次産業、第三次産業に分けて、AIがもたらすさまざまなメリットや、考慮すべき点についての説明を進める。AIの更なる発展により、人類がこれから直面するたくさんの課題、たとえば、就労者数の減少などによる課題の、解決に結びつく可能性があることがわかる。

他方で、AIの普及により、今まで人間が行っていた仕事がなくなるおそれがあることについても、率直に指摘する。そのうえで、ベーシックインカムの必要性などにも言及する。

さらに、この3人の座談会の様子も収録し、そのなかで、「AIが人間を超えることはありうるのか」という究極の問いについての考えも披露してくれている。

AIの進歩は素晴らしく、人間が解決してほしい問題を与えれば、それに対して最適な解を見つけてくれるようになりました。その点でAIは人間を超えています。しかしAIは、新しい問題を見つけ出したりそれにチャレンジしようとする「心」は持っていません。人間は、好奇心、向上心があるからこそ、ワクワクするようなものを作れるのではないでしょうか。機械はそのような心を持てるようになるとは思えません。

p277

私は、IT、デジタル、AIといった分野には全く疎いのだが、本書は、私のようなど素人にも大変読みやすく書かれている。これからの世の中、AIなしに社会生活を送ることは不可能になるだろうから、誰もが基礎的な知識を持っておくにこしたことはなかろう。この分野の研究者や専門家にはおそらく物足りないだろうが、AIについて基礎的な知識を得たい一般の読者にはオススメだ。

ご参考になれば幸いです!

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