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詩⑥


白けた空気の中に吐息を重ねて

大きな窓にはレースがかかる

網目の隙間からのぞくように

顔を近づけて外を求めた


とどろく音が遠くで聞こえ

残った空には雲ができた

青空と、雨雲と、飛行機雲

私も雲を作っていたとき

夜空だって飛べたとき

まだ夢があったとき

あの時に行きたい


タイムマシンは粗大ごみで

過去は燃やすごみに

捨てられないのは空を飛んでいた

何者にでもなれそうな翼


覚えのない賭けごとに

負けた翌朝、静かな家

夢だったのかと一息ついた

甘いお菓子に気を取られ

触れてしまった最初の爆弾

戻れないことを悟った日


絶対なんてないことを

忘れていた僕に

丁度良く教えてくれた人


太陽が

そっと映し出す汚れに

心をえぐられ壊れていく家

日だまりの

安らぐ家が沈んでいく

見かねて一人、手を振って、出ていった人


感覚をつなぐ物はすべて

漂白剤で洗い流した

それでも残る、小さな汚れ、微かな臭い


大好きな人はもういない

大きな足跡を残して消えた


白けた空気の中に吐息を重ねて

大きな窓にはレースがかかる

網目の隙間からのぞくように

顔を近づけて外を求めた


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