都市と地方をかきまぜる

『都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡』 高橋博之

概要
地方が疲弊していると言われると想像しやすいが、実は都市の方が疲弊している。人工物の中で暮らし、自由を求めるために労働に縛られている人々。それは、生きる実感を喪失しているといえる。
その中で、著者が編集長をしている食べる通信を通じて、都市の人は生産者の生産物にかける思いや生きがいを知り、SNSでコミュニケーションをとったり実際に作業を手伝うことで、生きる実感を得ている。
これからの社会では、生産物を舌だけで消費するのではなく、頭と心も使って消費していくのだ。

私たちが、スーパーに行き商品を買うときに目安としていることは何だろうか?価格や見た目のきれいさが大半を占められ、そこに生産者の方の生産物に対する思いが含まれている場合は少ないと思う。

都市出身の人は、自分が食べている生産物がどのように育てられているか知らない人が多い。私は農家さんのところでバイトしているが、「玉ねぎがこうやって生えているの知らなかった。」とか、熟してないトマトを「これもトマトの品種の一つですか。」と農家さんに聞く後輩に見たことがある。スーパーで生産された物しか見たことがないためにこのように思ってしまうのはしょうがないことなのかもしれない。

しかし、自分が食べているものがどのように作られているか知らないということに、危機感を抱く必要がある。食べ物の生産を知ることは、食に対する興味にもつながってくると考える。これが、失われてしまったら、食事はサプリメントや点滴等に置き換えられてもいいということになってしまう。それでは、この本にもあるように自動車がガソリンで動いているのと同じことである。食事とは、ただの栄養補給や最低限生きるために行なうのではなく、幸福感や共感を得て、心に色彩をもたらすものではないのだろうか。

食べるという行為に興味や疑問を持ち、ただ消費するのではなく心と頭を使ってまるごと消費することで、生きているという現実を噛みしめることを可能にする。

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