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#9 対話は続くよ、どこまでも〜わたしたちの民主主義/『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』特別企画

対話型の街頭演説「青空対話集会」で、市民とのコミュニケーションを行う立憲民主党の小川淳也さん。衆院選が終わってからも続く対話集会の様子を、和田靜香さんがコツコツ記録していきます。対話の先に何が見えるのか?『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』とあわせてお楽しみください。

3月21日(月曜日)晴れ @逗子編

 毎週、主に火曜日に東京・有楽町駅前で定期的に行われてきた青空対話集会。それが3月中旬には”青空対話祭り”のように相次いで行われた。

 21日の祝日には立憲民主党の衆議院議員、早稲田ゆきさんと共に逗子駅前で開催され、冒頭で小川淳也さんは「プーチンさんにひとこと言いたい」と話を始めた。

ロシアの野党が機能していたならば

 「あの国にまともな野党がいたら、絶対にこんなこと(戦争)は起きなかった、あれほどの長期政権でなければ、絶対にこんなことは起きなかった。まさにこれは少数意見の野党不在の独裁政権の中で起きる、極めて危険な政治の、極限の表現であり、ゆるされざる暴挙であります。

 もし、プーチンさんが22年にもわたる長期政権を担っていなければ、こんなことはしてないでしょう。メドベージェフさんを大統領に立ててインターバルを作り、その後にまた自ら再就任して、このざまです。長期政権、独裁的傾向のある政権にメリットはひとつもありません。

 そしてロシアでは野党が機能していません。170人あまりの野党候補が立候補しようとして160人以上断られているそうです。もし、野党がいれば、プーチンはこんなことができたか? そう考えます。権力を預かった側の人間が、自らの保身体面に走った瞬間に、権力はおかしくなります。そのときにきちんと野党があるか。

 さらにもう一つ大事なことは報道の自由が担保されているか?です。ロシアには報道の自由がありません。民主主義とは、つまるところ、健全な野党の存在と、報道の自由に行きつく。民主主義はこの2つに行きつくと思います」

 この話を聞いて、私は戦争する国の「政治」と「政治家」を初めて意識したというか。ああ、そうか、長期政権と野党不在、さらに報道の自由という民主主義の基本が失われたことで、「戦争」という最悪の結果になるのだな、と初めて腑に落ちて、ストンと理解した。

 ロシアやウクライナで起こっていることは遠い、なんだか別の次元の話のようにも正直思えていたが、いやいや、まったく日本でも起こり得る。戦争は政治家が起こしてる、政治によって起こるんだって、至極当たり前のことを今さらながら理解した。

 プーチンさんは何も特別に化け物でもない。権力を保持したく、政権に固執して長く大統領の地位にとどまっている政治家。それが独裁へとつながり、野党も姿を消した。翻ってみたら、今の日本だって、そんなに変わらない。日本でだって戦争はありえることだ。戦争は政治が起こす。政治が間違いを犯すと戦争になるんだと、つくづく思った。これは戦争という政治。政治の失敗なんだ。なんて恐ろしいんだろう。

 では、この日の質問。

1 自分は看護師で毎日ワクチンを打つ業務にあたっているが、医療従事者の感染者数も死亡者数もまったく伝わってこない。
2 ウクライナのゼレンスキー大統領が国会で演説する意義を知りたい。
3 政権交代の秘策を教えてください。
4 プーチンが核のボタンを押さないか心配だ。日本の安全保障体制はどうする?
5 小川さんと早稲田さん、それぞれが思う「正義」を教えてください。
6 地元に住んでいるが、7月の参院選の候補者はもう決まっているのか?
7 今回のオミクロン株は在日米軍から各地で広がった。在韓米軍はPCR検査をしてから韓国に入国していたのに、日本はなぜできないのか?

(早稲田ゆきさんと小川淳也さん)

「コロナ病棟に行け」と言われそうで

 まずは、質問1の看護師さんの言葉に「ガシッ」と首根っこをつかまれた気持ちがした。

 「私もみなさんと同じで次の世代にマシな日本を残したいと頑張っている、個人のクリニックで働く看護師です。毎日、通常の診療の合間とか、診療終了後、来院された方々にワクチンを打っています。毎日残業してヘトヘトです。でもコロナの病棟で働いている人はもっとヘトヘトだと思います。そういう人が倒れたときに、いつそっちに行ってくれと言われないかハラハラしています。医療従事者の感染者数も、死亡者数もぜんぜん伝わってこない、何やってんの? どうなってんの? 私たちどうなるの? 「あんたね、子育て終わったんだから(コロナ病棟のある)病院に行きなさいよ」っていつか言われるんじゃないかって、閣議決定で適当に決められるんじゃないかって、ヒヤヒヤしてるんです。私は、これを聞いてほしかったんです」

 そうそう、こういう魂の叫びというか、私たちの心からの叫びを政治家が聞く。これこそ、青空集会のすばらしいところだ!と思った。こういう声こそ、政治家に聞いてもらいたい! そうだよね、私たち? 

 これに小川さんの答え(抜粋)は、こちら。

 「医療現場の最前線に立たれている方へは待遇も含めて、十分な手当てがいきませんと、人間ですから、善意で踏ん張れても、社会として、持続可能な絵姿になりません。きちんとした尊厳ある待遇も含めて、敬意を払うべきだとそう思っています。しっかりと手厚い支援、手当てが届くようにする、これは私どもの仕事です。本当にありがとうございます」

 そう、お金だ、お金。お金が大事だ。これはまた早急に国会で話し合ってもらいたい。医療従事者にはお金を、お金をたっぷりと、届けてほしい。心から願う。

私はあたりまえに銃や大砲や核兵器を怯えていいんじゃないか?

 そして、みなさんが戦争を心配していて、次々にそれに関する質問が飛んだ。

 質問4は「プーチンが核のボタンを押さないか心配だ。日本の安全保障体制はどうする?」で、日本の安全保障体制について、私も前回の対話集会に続いて、またまた考えることとなった。

 というのも、小川さんの回答がこれまた「あっ」というもので、防衛に対する考えが、また私は少し変わることになる。以下は回答、その抜粋です。

 「軍事力は問題を引き起こすことはできるが、解決することはできない。アフガン侵攻でも、イラク戦争もそうです。なぜなら、政治とは、統治とは、人心だからです。人心によって、人心を治められたときに初めて問題は解決する。軍事力によって銃によって、大砲によって、核兵器によって人心は怯えることはあっても、治めることはありえないんです。だから過度に軍事力に重きを置き、ましてや『敵基地攻撃』とか『核共有論』とか、腕力さえ鍛えておけばという、そういう姿勢をとること自体、平和立国日本としての品位に関わることだと思います。同時にこの国はほとんど輸入に頼っています。食料でもエネルギーでも。核武装しようとしているイランや北朝鮮を第三国はどう見ていますか? 第三者からの見え方も十分想像しなければならない。とするならば、軍事力に過度に依存する怯えや恐れとは正対して戦いつつ、一方では専守防衛の、自国の防衛装備は現実的観点から十分備えなければならない。日米安全保障条約も現状、含まれざるを得ないと思います。あまり前のめりにならないよう気を付け、落ち着いて日本の防衛装備を最低限備えておくという準備を怠らないようにしたいと思います」

思うに、これはなかなか「名演説」というものだったんじゃないだろうか。

 「政治とは、統治とは、人心だからです。人心によって、人心を治められたときに初めて問題は解決する」と言われて、私は「あっ」と思った。ほんと、そうだ。

 前回、防衛についてもっと考えたいと思ったと書いたが、なんというか、私の頭の中では戦闘機がエンジン音を爆音で響かせて並んでる、みたいな図が浮かんでしまっていた。軍事力アレルギーのくせに、「いや、軍事力、大事よ。整えてこそよ。それが大人の対応よ」なんて思いこもうとしていた。

 でも、「軍事力によって銃によって、大砲によって、核兵器によって人心は怯えることはあっても、治めることはありえないんです」と聞いて、ほんとうだ!と初心に帰る気持ち。私はあたりまえに銃や大砲や核兵器を怯えていいんじゃないか? 私のような一市民が、軍事力に対しては怯えていることこそが、抑止力になるんじゃないか? そう思った。

 軍事力への怯えこそ、戦争へと、この国を向かわせない力になるんじゃないか? もちろん、最低限の準備は必要だ。それは共産党も綱領の中で「いますぐ自衛隊を失くそうなどとは考えていません」とし、「あらゆる手段をもちいて命を守ります」と書いている(しんぶん赤旗 2022年号外「あなたの『?』におこたえしますリーフ」より)。

 いいんだ。そうだ、そうだ。私は軍事アレルギーのまま、変わらず軍事力を恐れ、怯えていきたい。そして、戦争へ向かおうとする、核兵器を備えようとかいう声に、恐れで対抗していきたい。


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