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【無料公開】はじめに/長﨑周成『それぜんぶ企画になる。 うしろだてのない放送作家が新しいエンタメで世を沸かす20の方法』より

8月末に発売する、長﨑周成『それぜんぶ企画になる。 うしろだてのない放送作家が新しいエンタメで世を沸かす20の方法』より「はじめに」を無料公開いたします。
本書は、フワちゃんTVをはじめエンタメ界に「新しいメジャーの波」をつくった長﨑の刺さる企画術など、そのジョブ理論をライフヒストリーとともに本邦初公開する書籍です。  
誰もがメディアをつくる時代に最高の仕事をするための一冊。

はじめに

 「フワちゃんの人」
 これが僕のことを知っている人の印象だと思います。YouTubeではカメラで撮りながらフワちゃんと喋っていて、「しゅうせい」と呼ばれている人。フワちゃんのマブ、デカい、何者なのかはわからない、デカい、かといって、謎の存在というわけでもない、とにかくデカい。
 こんなイメージだと思います。ほとんど正解です。
 身長186センチで体重は90キロあります。
 電車に乗ると中吊り広告がのれんみたいに、ファサッと顔の位置にきます。
 外見こそ少し日本人離れしていますが、僕はいたって平凡な男です。

 もう少し中身の話をさせてください。
 僕の職業は、放送作家です。主にテレビ番組の企画を考えたり、台本を書いたりする仕事です。最近は、時代の流れもあり、CMやYouTube、Netflix  Japanのお仕事など横断的に企画する機会をいただけるようになりました。
 色々な場所でお仕事をするうちに、僕のなかで、企画をつくる一番の醍醐味のようなものがわかってきました。
 それは「王道をイチからつくること」です。
 若輩者ではありますが、色々な企画を考え、つくってきた結果たどり着いた僕のひとつの答えです。マンガなら『少年ジャンプ』。 映画なら「ハリーポッター」。音楽なら「ビートルズ」。
 企画をつくるとき、どんな狭い入り口から入ったとしても、意識するのは常に「王道」。限られた嗜好の人たちではなく、世間一般の多くの人が支持しているエンターテイメントが「最も面白い!」というか「強い」と信じています。老若男女が分け隔てなく楽しめて、笑ってくれるものが最強という思いは、揺らぎません。
 もっと言えば、ただの王道は目指しません。
王道は最強だけど、すでにある王道を目指して企画を調整しない。王道から最も遠いと思われていたものを時間をかけて、徐々に王道にひっくり返していく。
 この概念がすり替わっていくような「価値観の転覆」を起こすのが、僕は企画づくりの醍醐味だと思っています。

 この本は、そんな僕のライフストーリーとジョブ理論で構成されています。「刺さる企画」についてや、「企画の出し方」「企画の詰め方」「プレゼンの乗り切り方」「面白い仕事を増やしていくために何をするといいか」「価値の転覆を起こすにはどうすればいいか」といったことが書かれています。さらに、師匠をもたなかった僕が経験し、実践している「売れるためにやったこと」ぜんぶが書かれています。
 そして、「友だち」というキーワードもこの本の内容には欠かせません。多くの才能を目撃し、一緒に仕事をしてきました。「価値観がひっくり返って王道になる瞬間」が、醍醐味だと書きましたが、その最たるものを実際に身近な友だちで目撃できることにもなりました。
 それが、フワちゃんです。
 フワちゃんがテレビに出だした数年前は、「また変なタメ口キャラ出てきたで」と言われる、イロモノ枠にいました。最初ヤフコメで「失礼キャラ一発屋タレント乙」とよく知りもしない匿名の誰かに書かれていたりもしました。
 しかし、特異なキャラクターは次第に受け入れられて、いまではゴールデン番組に連日出演する、王道の人気者です。
 底抜けに明るくて、誰に対してもタメ口。スタイルは、ポップなカラーのスポブラとお団子ヘアー。いつでもどこでも、スマホ&自撮り棒を片手にテレビに出て大御所に失礼をかましていく。そんな面白いヤツは売れるに決まっている! と、いまでは言われるかもしれませんが、出だしの頃のフワちゃんは「あたおか(頭がおかしいという意味)素人YouTuber 」と思われていました。少なくとも、息の長いタレントだとは思われていなかったはず。
 しかし、少しずつ「芸能界の面白い人たち」に魅力が伝わり、姪っ子のようにみんなに愛されていって試行錯誤と改善を重ねていくうちに、フワちゃんの異質性が王道に「ひっくり返って」いったのです。(フワちゃんがマジで面白い、ということが大前提ですが) 
 時の運とか、巡りあわせも、あるかもしれません。しかしブレイクは間違いなく、偶然ではなく必然でした。

 “たまたま”そうなっていったのですが、今では「友達と仕事をする」が自分の信念にもなっています。
 M‐1甲子園という高校生の漫才の大会で、YouTubeチャンネル「岡田を追え!!」の岡田康太さんと出会い、年下だと思ってタメ口をきいて「先輩やぞ! おら!」と怒られたり、大学時代、ワッハ上方という難波の小さな劇場で霜降り明星など、超尖りまくりメンバーたちと合同お笑いライブをしたり。駆け出しの放送作家時代は、今や売れっ子の芸人やAD、新米マネージャーらとルームシェアなど……常に“本物たち”の煌々と輝く才能を目の当たりにする環境にいました。
 現在、仕事をしているメインのメンバーのほとんどがガチの友だちです。
喧嘩とかしたら大変そう、と思われがちですが今のところ、うまくいっています。

 そんなことをぐるぐると頭のなかで考えた結果、「すごい個性たちを目撃し、一緒に楽しく仕事している普通の人」の書く話は、それはそれでニーズがあるのかもしれないと、考えるようになりました。Amazonレビュー星ひとつ、メルカリ1円販売だけは勘弁してください。
 僕だけが体験したことを一生懸命、書くつもりです。
 僕もまだまだ、現場でもがきながら、模索中なのです。
 でも、先に述べたように、普通の僕が試行錯誤してきた企画のつくり方や、すごい個性の友だちと仕事を続けていく方法は、多くの社会人の方に活用してもらえると思います。書いていて気がついたことですが、メジャーで勝つ! ということを目がけて仕事できるのは、ある意味で「普通の人」のほうが強いのだと思います。
 「長﨑周成は、こんなやり方で、うまくいったんだ!」「ボコボコにした城田優みたいな顔してるのに! ずるい! 私もやってみよう!」と、真似してくれたら本望です。

長﨑周成(ながさき・しゅうせい)
1991年生まれ。放送作家。株式会社チャビーCEO。芸人、テレビ制作会社勤務を経て現職。地上波テレビ番組の企画構成を担当しつつ、2018年に「フワちゃんTV」/「フワちゃんFLIX」をフワちゃんとともに開設。2019年に20代放送作家を中心とした企画会社「チャビー」を設立。 お笑い・バラエティ企画を中心にさまざまなメディアを横断して企画。 企画構成:「Netflix Japan」「ZIP!」「週刊さんまとマツコ」「ドラえもん」「AUNコンビ大喜利王決定戦」「百喜利」など


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