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#8 対話は続くよ、どこまでも〜わたしたちの民主主義/『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』特別企画

対話型の街頭演説「青空対話集会」で、市民とのコミュニケーションを行う立憲民主党の小川淳也さん。衆院選が終わってからも続く対話集会の様子を、和田靜香さんがコツコツ記録していきます。対話の先に何が見えるのか?『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』とあわせてお楽しみください。

3月15日(火曜日)晴れ

 オンラインでの青空対話集会の最終回。63名が参加した。質問は以下の通り。

1 政権交代はいつを目指していますか?
2 今日まで「この世界はおかしい」と思いながらもコツコツと頑張って生きてきたけれど、今こそ声をあげないと未来が続かないので自分が声をあげてがんばろうと思いました(という当事者意識を持つことの宣言)
3 アメリカのNATO東方拡大政策が戦争を起こしたようなものなのでウクライナを中立地帯にすべきだ。
4 参議院選に向けての党の公約を中学生でも分かる言葉で発表してほしい。
5 党の公約だが円安のことや石油価格の上昇に対する対策を盛り込んでほしい。
6 PTA問題を研究しているが、PTAは日本社会でいつのまにか強制参加にさせられていて主にお母さんたちの負担になっている。個々では声をあげているが、政治としても声をあげてほしい。
7 参院選への熱量をどうしたら上げていけるものでしょうか。

 この日は30分のオンライン対話で、小川さんが終いに「30分と短いかもしれません。こんなこと言うのもなんですが、1時間になると間延びする感じがするときもあるんです。それが30分だとピリッと集中できて、お互いに発言も簡潔にしようと努力してリズムが生まれ、やっていてポジティヴな気持ちになります」と言ったように、サクサクっと終わった。

 質問4の「党の公約を中学生でも分かるような言葉で発表してほしい」には、小川さんも「ひとつの基準点として中学生でも分かるように、というのはすごくいいことだと思います」と答えたが、本当にいいこと、すばらしい提案だと思った。

 政治の言葉が難しすぎる!というのは常々私も感じていること。国会の、特に委員会での質問で交わされる法律用語や、省庁のホームページなど読んだら、「これは何を言いたいのか?」とちんぷんかんぷんなことも多い。でも、それらは私たちの生活のためにあるもの。私たちが分からないでどうする? もっともっと分かりやすい言葉で語って、書いてほしい。

 だから、党の公約だって、なんならすべての漢字にルビをふるぐらいの配慮があってしかるべき。また文字で出すだけでなく、音声でも、点字でも出すなど、みんなが分かるようにすると、さらにいいように思う。

 分かりやすい言葉で、誰にでも分かるように公約を発表する。内容も大事だけど、そうやって伝えようと努力することは、私たちとつながろうとする姿勢そのものだと思う。

3月19日(土曜日)晴れ @博多編

 今年はずっとオンラインで行われてきた、りっけん青空対話集会。今回はマンボウ(まん延防止等重点措置)が明けて、博多の街頭で行われた。

 対話はやはりリアルで、お互いの顔を見て行うと、熱量がぜんぜん違う。私はネット越しに見ていたが、その場の熱気がグングン伝わって来た。小川さんの声にもずっと張りがあり、このときを待ってました!という風だ。

 冒頭、この青空集会についての説明が小川さんから、改めてあった。

 「元々は(地元の)高松の公民館で30人、50人の方が来てくださって対話してきました。ところがコロナになって、室内が駄目だからと表に出ました。スーパーの前、駅頭。わざわざお運びくださる方も大勢いらっしゃるんですが、偶然に通りがかりの人もいらっしゃる。そこで色んな思いや声を預かることの大切さをすごく感じてきました。これから先も厳しく、難しい時代が続くと覚悟しています。だから、耳ざわりいい話だけじゃすまないと思っています。でも人間同士ですから、分かり合えない部分があるなら、それは何故なのかを相手の立場をも理解し、合意点を見つけていくことが大事です。世代を超え、ジェンダーを超えて新しい社会を作っていくなら、原動力は対話しかないと固い信念と強い思いを持っています。これからまた全国津々浦々おじゃまして、あらゆるお声、立場、考え、悩み、願い、希望に、真摯に真正面から向き合わせていただきたいと思います」

 質問も次々、多岐に渡って飛んだ。質問者も老若男女、色々な人がいた。

1 個人情報保護法を改定してほしい。妻の保険証を役所で受け取ることもできない。国会では黒塗りの資料が出て来て、ろくに「森友・加計・桜を見る会」の政治問題も追及できない。
2 野党共闘を一気に進め、政策合意を早急に結んでほしい。私は市民連合福岡の者だが、私たちが選挙を戦うときの旗印を早く欲しい。
3 アメリカ出身で日本の永住権を持っているが、選挙権がない。永住権のある外国人への選挙権はどうなるか?
4 テレビも新聞も見ない、政治に興味もない私たち大学生の世代のこと、政治家はどう思っているのか? この現状をどうしたいのか?
5 ウクライナとロシアの戦争ではメディアでの情報合戦があり、フェイクニュースも問題だが、日本でも情報が信じられないことが多々ある。
6 コロナの後遺症で立っているのが辛いが、がんばって来た。野党は批判ばかりと言われるが、しっかり批判して、より良い政策を作るのが野党の仕事だ。昨年も「国会を開きましょう」ぐらい言ってほしかった。
7 大学生だが、どうしたら若者に政治へ関心を持ってもらえるか、選挙に行ってもらえるか。私たち自身、どういう行動をとればいいか?
8 女性議員が少ない。増やすための研究や活動をずっとここ福岡でしてきて、2018 年に候補者の男女数を均等にする法律ができて喜んだのに、(「政治分野における男女共同参画推進法」:国会議員や地方議員の選挙において、男女の候補者数をできる限り均等にするよう努力することを政党その他の政治団体に促す法律)、昨年の衆議院選挙では逆に女性議員の数は減ってしまった。立憲民主党は泉健太代表が次の参議院選挙では法律通りに50%の女性候補者を擁立すると言っているが、小川さんの情熱も同じか?
9 たまたま岐阜県から来て通りがかりで見ている。子どもが3人いて1人が北海道、1人が九州だが、たとえば九州から、北海道から、外国の軍隊に攻められたら日本はどうするのか? どう対応するのか?

30年も日本に住んでいるのに投票できない

 まず気になったのは質問3のアメリカ出身で日本の永住権を持っているという方。30年も日本に住み、英語を教えたりしているという。しかし、選挙権がない。これはどうなるのか?という質問だった。とても重要なことだ。

 これに対する小川さんの返答はまず、日本における移民の状況から。

 「今、1億2千万人あまりが住むこの国で、外国籍の方は300万人近くがお住まいです。さらにウクライナから避難してくる方をいかほど受け入れることができるか、近々、立憲民主党でも法案を出して、新たな在留資格をもうけたいと考えています。日本社会はこれから人口が減って、高齢化率が上がっていきます。その中でいかに国際社会と親和的に強調していけるか、大きな問題です。ちなみに日本で一番外国人比率が高いのは群馬県の大泉という街で日系ブラジル人の方が大勢おられ、外国人の割合は19%を超えています。東京新宿区も外国人比率は10%近い。日本は国際化が進んできていますが、ウィシュマ・サンダマリさんが入管で亡くなられたこと、難民認定率の低さなど、日本社会は国際社会の標準から随分遅れています」

 その上で、選挙権について話した。

 「選挙権をどうするか、ここでただちに私にも決意や権限がありません。でも、EUでは国政選挙権は持ちませんが、地方選挙権は定住している外国人が持っています。それは実はヨーロッパにとどまらず、地方参政権を外国人の方が行使している例は多々あります。ただちに結論や方針を申し上げるには時間がかかりますが、日本社会のあり方を一緒に考えさせていただきたいです」

 というもの。

 外国人の参政権については度々議論がなされてきたような、されてないようなで、昨年の衆院選のときには朝日新聞にそのことについて記事が出ていた(「議論されなかった『外国人参政権』 与野党ともに公約に掲げても」2021年11月3日)。

 この記事中、外国人参政権について研究している、名城大学の近藤敦教授(憲法学)は「参政権は基本的な人権。世界的には、外国人の地方参政権や二重国籍を認める国が主流になっている」と話していた。また同記事にあって、実は私も知らなかったのだが、「国連の人種差別撤廃委員会は18年、日本に対して、在日コリアンの地方選挙権を保障するよう勧告」しているのだそう。今回、青空対話集会に外国人の方が参加して初めて発言してくれたことで、このことを考えることができた。

 思い返せば昨年の衆院選時。小豆島から高松に戻るフェリーの中で、私は小川さんに参政権のない、この国に住む人たちのことも思って選挙活動をしてほしいとお願いをした。このときに小川さんは、「『国民』というところから漏れてしまう人、選挙になると、その人たちがいつも置き去りにされてしまう。その人たちを忘れてはいけない」と答えた。

『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』

 「国民」というところ……というのは、私が『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』に、国民という言葉について書いたことを指している。「国民」という言葉には「その国の国籍を持つ人々」という法的言語としての意味合いがつくので、私の立場では使わない。「国民は~」と使うと、日本国籍を持たない人たちを含まないことになり、その人たちを傷つけたり、一緒に日本にある問題を考えることができなくなるからだ。ただ小川さんは国会議員で、憲法に定められた「国民の代表者」であるので、小川さんが「国民」と言うことには問題がない。ちょっとややこしいので、詳しくは本を読んでみてください!

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』

 国民というところからはずれてしまう人たちの参政権の問題は、これからも対話が進んでほしい。永住権があり、その地で働き、納税もしている人たちが(国政ではなく)自治体の選挙にも参加できないことは、日本における外国人に対する諸問題(技能実習生の問題など)にも通じている。日本は外国人の人権を、本当に軽視しているように思えるんだ。それが情けない。

大学にもドンキにもマツキヨにも投票所を!

 さて、この日は大学生からの質問が2つ、

 質問4「テレビも新聞も見ない、政治に興味もない私たち大学生の世代のこと、政治家はどう思っているのか? この現状をどうしたいのか?」と、
質問7「大学生だが、どうしたら若者に政治へ関心を持ってもらえるか、選挙に行ってもらえるか。私たち自身、どういう行動をとればいいか?」。

 それぞれ、当事者として政治に関心が薄い若者層を、どうしたら政治に関心を持つようにできるだろうか?ということ。当事者層が対話集会に足を運び、こんなに考えていることにまず感激してしまったのだが、小川さんはどう答えていたか。

 まずは質問4への答えだ。

 「皆さん一緒に考えてほしいことがあります。今、10代20代がこの国では(人口比率で)少数派で、こんなことはどの国の歴史にもありません。日本でも10代20代は社会で多数派だったのが普通でした。私の世代は同級生が200万人います、私の親世代は250万人、今は生まれてくる赤ん坊が毎年80万人です。同時に長寿化が進んでいます。人類の歴史始まって以来の、この無力感を大人の世代も共有してほしいんです。昭和の時代は、明日は今日よりよくなる、今年より来年は給料が上がる、再来年は車を買い、その次は家を買うと、みんなで明るく展望していました。今はむしろ逆です。若い世代は、明日は今日より厳しいかもしれないと生きてる世代です。この世代の気持ちを共有してください。財政、社会保障、エネルギー、気候変動に私たち大人社会が真正面から向き合ってこなかった結果として、そのつけは、この、次世代に先送られていくことになります。私も大人社会の無責任を、その一人として感じています。構造変化の問題を大人社会に生きる一人として、国会の一人として直視をして、大人社会すべてのみなさまと真正面から議論して、なんとか次世代に責任を果たしていきたいと思います。

 その上で、日本では投票率が年齢+10%と言われています。10、20代は2~3割しか投票に行きません。なぜ、10,20代は行かないのか? 無力感に襲われているのか、余裕がないから行かないのか。たとえば北欧型の社会、10,20代も80%以上投票に行くんですね。それはなぜなのか? 北欧ではあなたの人生はいかに社会とかかわっているかを、小さな頃から学校でこんこんと教えられています。家でも親が子供に支持政党を持つようにと、あたりまえに話す。日本も『社会は政治参加によって変えられる可能性がある』と、真摯に伝えて教えていく必要があると思います。若いみなさんには、ぜひ、一緒に問題を解決していくパートナーになってほしいとお願いします」

 さらに質問7への答え。

 「先ほどもお話しましたが、若い人がどうすれば投票所に行くことに意義を感じるか?です。日本では学校でも家でも政治の話はタブーですよね。政治の話はするな、そう言われて育ちます。それでいきなり18歳になると、『投票へ行こう』と言われる。そりゃ意義がピンとこないはずです。だから何度も申し上げますが、主権者教育をやることがいちばん大事です。社会は自分たちが変えていく、そう教えることが大事です。加えて大事なことは、投票する環境じゃないでしょうか。インターネットで投票できる環境や、さらに、みなさんが通う学校にも投票所があれば、と思います。そうして参加してみて、意味や意義を考えるという体験を積んでいくことが大事だと思います」

 これを言われて、そうか、意外とインターネットで投票できること、大学や駅など、みんなが当たり前に立ち寄るところで投票できる環境を整えることがまずは先かもしれない?と思った。そうして参加することで、徐々に投票する意味や意義が生まれてくるのでは? やっているうちに、人間はあれこれ考えるものだ。有権者教育をコツコツ積み重ねるのも大事だが、まずは形から!じゃないけど、まずはやってみる!というのはどうだろう? 大学生たちよ、大学に投票所作ってもらってください。いや、私たちがそれ、もっと言わなきゃダメだね。大学や駅、できたらスーパーにも投票所を! ドンキはどうだ? マツキヨは? 日常的に若い人たちも行く場所に投票所を設けよう! そうしたら投票率は上がります。

通りすがりで国会議員に聞いてみた。

 さて青空集会が屋外で行われていいところは、通りすがりの人が参加すること。政治家との対話に行こう!と思う人はやはり少数だ。でも、たまたま通りかかって、なんだろ?と覗いて質問する。それが実現できるのはやはり屋外ならではで、この日も最後にそういう質問者さんが登場。

 質問9「たまたま岐阜県から来て通りがかりで見ている。子どもが3人いて1人が北海道、1人が九州だが、たとえば九州から、北海道から、外国の軍隊に攻められたら日本はどうするのか? どう対応するのか?」

 この質問への答えはこうだった。

 「たまたま通りかかってくださって、ありがとうございます。これが青空対話集会のひとつの可能性でもあるんです。それで、今、想像力をはたらかせました。北からロシア、台湾海峡から中国、いろんな国防上のリスクは常にあると思います。しかし日本はいわゆる大陸国家ではありません。海で隔たれた海洋国家であります。海がもたらす防御の力は大陸国家に比べるとかなり状況は違います。その中で、現実的で安心できる安全保障環境を整えて行く責任が私たちにはあります。しかし、核武装をしていこうと言う安倍さん(安倍元首相)や維新のような人(日本維新の会)たちの主張は、過剰に緊張を高めたり、過剰に敵対心を高めたりすることにつながります。エネルギーも食料もほとんど輸入に頼る日本ですから、国際社会との繋がりを大事に、信望信頼を集めるお国柄でいなければそうしたものの輸入もままらないないです。専守防衛を旨としつつも確実な防衛力を備えているという絵姿にもっていくべきだと思っています。抑制的だが現実的な対応をとりたいです」

 ロシアによるウクライナへの侵攻、戦争で、いつもに増して防衛問題が脚光を浴びているが、どうもリベラル層は防衛問題と真正面から対峙することを避けてしまう傾向があるかもしれない(は~い、私です)。2015年、安倍政権で安全保障関連法案が強行採決されて成立し、集団的自衛権の行使が容認されて日本は自国への攻撃の有無にかかわらず武力行使が可能になった。そのときは私も反対反対!と叫んで、日本には憲法9条があるんだ、戦争反対、日米安保も反対、基地も反対、ぜんぶ反対!と思った。なんというか、9条をバーンと掲げて、「んだから、ダメ~!」と口を真一文字に結んで立ち塞がるという風。

 でも、あるとき「日米安保」を破棄したら、その分さらに防衛費が増えるんじゃないの?と言われて、えっ?そうなの?と疑問に思った。さらに共産党も万が一、窮迫不正の侵略を受けたら「自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守ります」と言ってると知って、驚いた。国民の命や主権、独立を守るのは、政治の当然の責務だからだという。

 私は「9条がある」と言って、頑なに防衛問題に目を背けてきたけれど、小川さんの言う「抑制的だが現実的な対応」というのがどういうものか、日本の防衛はどうあるべきか? それこそ現実的に考えるべきなのだと思った。


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