次郞長、八百ヶ嶽の窮境を救ふ/町田康
恋の恨みで密告したコン吉を制裁して気が済んだ次郞長は三河を去り、気儘なやくざの旅に出て尾張の知多郡、大野村にやってきた。伊勢湾に面して活気に満ち、海運業も盛んな土地である。ということはどういうことか? そう、金と物と人が溢れているということである。ということはどういうことか? そう、娯楽に満ちあふれているということである。そして当時の娯楽と言えば? そう、演劇と売春と賭博である。
という訳で大野村に足を踏み入れた次郞長は、当たり前のように博奕場に直行した。
ここでも次郞