岩村の七蔵襲撃事件の真相/町田康
山の中、谷間の小さな村。あたりは既に薄暗い。そんななか、渓川のほとり、後に杉木立を背負った一軒の前に四人の男。しきりになかの様子を窺っている。だが、ひっそりとして人の気配がない。「じゃあ、俺たち、裏をみてこよう」と目配せして、大熊と六太郎が裏の様子を探りに行く。すぐに戻ってきて、「やっぱり、ひっそりしていやがる。ただなかに人の気配はした。七蔵がなかに居やがることは間違《まちげ》ぇねぇ」と言う。
「じゃ、斬り込むか」
「おおそうしよう。嫌な仕事はさっさと済ましちまおう。だけど