こうなることを彼は予想していたの?
門限まであと10分。
私の住む国は日本と違い、
外出制限という政府からの規則があった。
運悪く警察に捕まれば、
罰金の支払いを要求される。
日本円で約15,000円のペナルティ。
「コーヒーだけでも飲んでいったら?」
急いで帰ろうとする私に
キッチンから戻ってきた彼が呼び止める。
「ううん、もう帰らなきゃ・・」
ケーキやコーヒーなんてどうでも良かった。
(これから電車に乗るわけでもない
あなたにとっては
罰金だって、
大したこと無い金額かもしれないけど)
心の奥底ではこんなことを私は呟いていた
急いで玄関に向かう私に彼が言った。
「ちょっと待って」
小さな紙袋を渡された。
私はその中身を見る時間もないまま、
彼の家を出た。
早く帰らなきゃ。
駅まで一緒に行くという彼に軽くお礼を言い、
足早に駅構内へ向かう。
電車に乗ると沢山の人がいて
ちょっと安心した。
なんだかんだで門限はあって無いようなものだと
後日ここに長く住む人達から聞いた。
結局この日、
彼からは指一本触れられなかった。
門限18:00
なんて、めんどくさい国に私はいるのだろうか。
彼はわざと時間を言わず、
私を帰らせないようにしたのかと一瞬疑ったけれど
私と同じで、ただ気づかなかっただけ
「彼は、本気で私のことを気に入ってくれている」
だから触れてこないのだ
そう思っていた。この時は。
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