ロックダウン45日目

一体マイアミの都市封鎖から何日経ったんだろうかとカレンダーで数えてみたら今日で45日目だ。

出産したときに産休を1カ月取って家に居ただけで軽い鬱になった。あの時は典型的な産後鬱だったのでホルモンのアンバランスもあったんだろうけど家にずっと居るというのが耐えられなかった。
今回のコロナは無条件に選択の余地なく街自体がロックダウンになり「感染するかも」という恐怖もあり「ウロウロしてて感染したりさせたりすると患者激増で医療崩壊するからみんなで街を守らねば」という使命感のようなものもあり。食糧調達と犬の散歩以外は、特に文句も言わずに家に1日中居る。

基本、私は1人で過ごすのは平気だとずっと自負してた。今回は必須ビジネスのダンナは仕事に行ってて家には高校生の娘が2人居るけどオンライン授業や友達とのチャットや好きな事を部屋でずっとやってるか姉妹で遊んでるので家族はいるけど食事を作る以外は結構好きな事をする時間はたっぷりある。日本で買ってまだ読んでいなかった本を引っ張り出してみたり観たかった映画をレンタルして観てみたりとせっかく時間が出来たのだからと、コロナのニュースを見て恐怖や不安に駆られている時間以外は上手く過ごしていたと思う。職場(美容院)の同僚ともグループメッセで毎日やりとりしているしお客さんともテキストや電話で近況チェックしてるし日本の家族ともほぼ毎日やりとりしてる。なによりSNSの時代で本当に助かっている。

それでもやっぱり突然に気持ちがドーーン落ちた瞬間はやってきた。2週間くらい前だったかな。
コロナのニュースを見るのが嫌になりグループメッセの返信送るのも嫌になりご飯を作るのも嫌になり、本当に何もしたくないし誰とも喋りたくない。以前は楽しかった「1人の時間」が苦痛でどうしようもない。
産後鬱の時とは違って結構この落ちた状態はダラダラとしばらく身体に纏わり付いた。産休の時は1カ月と期間が決まっててその後仕事に復帰する事は決まっていたけど、このコロナの都市封鎖は出口が見えないので始末が悪い。ここからここまでと一定の期間内に起きる事に対しては人間はわりと対応できるけど、ここからどこまで?いつまで?という状況には上手く対応出来ないんだろう。

小学校5年の時に水泳の時間に遠泳があった。遠泳って言っても25mプールをひたすら行ったり来たりしてただ自分の限界まで泳ぎ続けるだけのもの。1列に並んで一斉にスタートした同級生が1人また1人と脱落する中で、畑さんという女の子と私だけが延々と泳ぎ続けた。何キロ泳いだのか正確に覚えてないけど負けたくない一心で先生に止められるまでひたすら泳いだ。
このくらい私は泳ぎがそこそこ得意だった。
LAにいた大学生の時、友達の男の子がサーフィンを教えてくれることになった。カッコいいことに挑戦するのは大好きなので早速ビーチに繰り出した。まずはパドリングからという事でボード押して沖の方へ向かおうと思った瞬間、急にパニックになった。ちょうど浅瀬から一気に深くなる場所で今まで足が底に着いてたのに一歩踏み出したら海の底に沈みかけた。何やら喚いて必死にボードにつかまったけど波があるので沖の方に流されてしまう。尋常じゃない私の様子に友達がすぐに来てくれて一旦浜に戻り、私から小学校の時の遠泳の話を聞いていた友達は「キミは泳げなかったのか??」と呆れ顔。いや、泳げるんだけど足がつかないから怖いし波があるから向こうのほうまで行くのも怖いと言うとお手上げポーズされた。結局、ライフジャケット装備で絶対にやってみたいと言い張る私のわがままで至近距離のパドリングと立ってなんとなく進んでる程度(波に乗ると間違っても言えない)で私は納得(挫折)してサーフィンは卒業した。
その後時は流れマイアミでダンナと知り合い子供が生まれるまでよくあちこち旅行した。近場のバハマに行った時のこと。浅瀬のビーチの沖合に砂浜の小島が見えててバーがあって飲めるようだ。ダンナがあそこまで泳いで行ってみようと言うのだが、やっぱり足がつかない地点から怖くて進めない。
「お前、水泳大会出たって言うとったやんけ!」
「出たしめっちゃ泳げるし!」
「やったらあそこまで行こや」
「途中足つかないから行くのヤだ」
私が頑として行かないので結局遠浅の島でピニャコラーダは夢に消えた。以来、ダンナは今でも私が泳げると言ったのは嘘だと思っている。

私は底がどれだけ深いか分からないものが怖い。
私はどこまで行っても海しか見えない沖合に向かうのが怖い。
私はまっすぐ泳いでいるはずなのに流される波が怖い。
これは精神的な現象であり生理的な現象でもある。

2週間前に訪れたあのガクッと急に落ちた瞬間もなんだか同じような現象だった。
何もやる気が起きない中で漠然とした恐怖みたいなもの。
あーーー何だろうな、この嫌な感じ、とソファーにごろ寝して考えてた時に思い出したのがあの得体の知れない海に対する私の漠然とした恐怖だった。

なるほどね、アレにやられたか。じゃ、しょうがないか。と自分で勝手に納得と完結し、その後気分が軽くなった。
落ちて以降、作る食事は一気に手抜きになったけど、先は長いし見た目よりも栄養第一とストレス削減最優先でいいやと適当にやっている。

もう最近ではロックダウン生活に慣れてきたので「無収入生活長くなっちゃったけど、まあいいや」「健康ならまあいいや」となんでもまあ良しとしてるので、逆に都市封鎖が解けてビジネス再開後に向けての建設的な準備というレベルアップした生活する余裕が出てきた。美容院で使用する殺菌・消毒剤の使用取り扱いの受講と試験を完了し証明書も取った。美容の講習会にはよく参加して認定証は色々あるけど初めてオンラインで面接試験受けて人数限定のカラーリスト認定もされた。

海は怖いけどまあいいや、と腰くらいまで浸かって沖を眺めて美しい景色だけでも楽しもう。


(写真は一昨日一部解除になったマイアミ南部のビーチへ殺到するボートの群れ。マイアミビーチはまだまだ解除は先になりそう)


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