「それだったら、弦月湯に行ってみたらいいんじゃない?」
悩める日々を送るデザイナー・悠平は、カフェ・ポート・ブルックリンのマスター、セキネコの言葉で弦月湯のnoteを検索する…
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#短編小説
小説「あんぱんと弦月湯」第4話(最終話)
これまでのお話
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第4話(最終話)
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「それじゃ……乾杯!」
「乾杯!」
カフェ・ポート・グラスゴーで、俺はセキネコさんと静かに祝杯を上げた。久しぶりのこまごめ村エールを喉に流し込む。旨い。
「やっぱり、金曜夜のグラスゴーでの村エールは旨いですね」
「久しぶりだもんね、悠平くん」
「そうですね。この3ヶ月ほど、なかなか
小説「あんぱんと弦月湯」第3話(全4話)
これまでのお話
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第3話
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「ふはあ……」
離れの縁側に座って八月の夕空を見上げながら、俺はあんぱんをひと口齧った。あんこと柔らかなパンのハーモニーを味わったあと、番台で買った瓶入りの冷たい牛乳をぐいっと飲む。これこれ。これなんだよ。口の中に広がるあんことパン、牛乳の三位一体の調和を喜びながら、目をつむる。ああ、まじで旨い。生きててよかった
小説「あんぱんと弦月湯」第2話(全4話)
これまでのお話
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第2話
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「すげえ……」
大人になってから見る弦月湯の内装は、自分という存在の芯に迫ってくるようだった。美術を僅かなりとも学んできたから、ここに使われている技術がどれだけ凄いかも理解できる。彫刻家・若月弦二郎が自分という存在のすべてを賭けて、この内装に取り組んできたことが肌身で感じられた。思わず、俺は身震いした。
グラスゴーでの山口さんと