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NPOの代表が書道ライブ配信をして国際交流した軌跡

誤算だった。顔バレするのも、書道が人の目にさらされることも、なんなら展示につながることも。

コロナ禍になって、多くの人の時間の使い方、日常の過ごし方の当たり前が変わった2020年。私もそのうちの1人でした。

幸い新しいプロジェクトも立ち上がり人生初のクラウドファンディングも実施し「何かが変わるんだ」と周りに認識してもらう記念すべき年になりました。一方で、周囲のペースがふっとスローになったその年は、いろんな現実とプレッシャーに追われていた自分に気づき、なんだか肩の荷が少し降りた気がしました。

周りがスローペースになり、世の中の当たり前を問う雰囲気になった今こそ、今なんとなく背負っているものを少し取っ払う実験が、今ならできるのかもしれないと思うようになりました。

好きなことをするぞ!!!!!そんな日々を過ごした成果を一度形にすることにしました。

ここからのお話は、11月21日から26日まで、書家でアーティスト(書花人)の田村雪峰さんと、書を起点とした二人展【point or dot.】を開催するに至るまでの長い長い道のりです。

告知だけ見たい人は目次から飛んでください。

そうだ、ゲーム配信をしよう

書道の話をするんじゃないのかと思われた方、申し訳ありません。先に謝ります。お付き合いいただけたら答え合わせできるんでよかったらお付き合いください!長いと思うので、ななめ読みでOKす。

遡ること2020年3月。新しい事業立ち上げに関するクラウドファンディングを本格化する打ち合わせ数時間前、「Nintendo Switchがほしい…」と思いながらNintendoのオンラインストアをのぞいたら、午後に先着購入でSwitchが販売されることを偶然知りました。当時Switchは品薄状態だったのに、公式で買えるかもしれないと知ったときの喜びのまま、勢いよく一気にページのリロードを繰り返しながら奇跡的に購入にこぎつけます!

その頃ちょうど『あつまれどうぶつの森』が流行りまくり、わたしはスキあらばあつ森のゲーム配信を見ていたりしました…

「やりたい…わたしも島を作りたい…」
ただ、事業を持つ法人の代表である私は、どうしても「ただゲームしているだけだと時間の消費をするだけ」と、罪悪感を感じる事になりそうなのは予想がついていました。一応法人経営してきただけあってか、1つのことで2度3度美味しくないと罪悪感で苦しくなるし、もったいなくて動けないのです。

「楽しいことをしながら追加でなにか価値を生み出せないか…」

そんなときに「わたしもライブ配信してみればいいのでは?」と思い立ちました。配信しながら他の人と楽しい時間を過ごす、なんなら投げ銭とかに行き着いたらラッキーでは!?なんて。

とはいえネガティブなことやリスクも当然よぎりました。

  • NPOの代表がそもそもゲームなんてしていていいのだろうか(いわんや配信をや)

  • NPOの代表としての印象としてどうなんだ?

  • ってかNPOの代表として配信しても誰も来なそうでそれはモチベが下がる…流石に多少の視聴者はいてほしい

全部「NPOの代表として」という枕詞がどうしてもくっついてくる自分に気づいたので、「個人として」「遊びで」やればいいじゃないか、という視点に行き着きました。(至ってシンプル)

個人として遊ぶにあたって、視聴者をどう増やすか(視聴者数ゼロ人は嫌だ)という点だけ懸念がありました。一方配信サイトを見るとどこもかしこもあつ森配信ばっか!!!そして私はあつ森以外するつもりはありませんでした!!!もう血の海に飛び込もうとする気満々でした。

ってことで、来てもらうための別の強みを作る必要がありました。いろいろと考慮した結果「100日間、毎日同じサイトでひたすら配信し続ける」というだけでした。全く戦略性がなくてお恥ずかしいですがw、ただとりあえず「毎日見かけるやつ」になろうとしました。

舞台はTwitch。1ヶ月以上かけて準備した配信初日、友達2人に来てもらった以外は、あとは個人でただ毎日スキマ時間で配信をしていきました。

いろんな運やタイミングで人が増えるようになり、最終的にはトイレいっぱいの島ができ、視聴者の人たちからトイレをたくさん贈られる配信になっていました(?)

我が島のトイレットロード

自分のチャンネルで投げ銭が出来るようになった記念では、紆余曲折がありゲーミングPCを買う流れになり、そのまま初めてキーマウ操作ゲームをすることになったバイオハザード7で、最初のボス4時間くらいかけてようやく倒したこととか、今となってはいい思い出です…NPO法人の代表らしからん気がしてきた…
なお、おかげでゲーミングPCキーマウで遊べるようになりました。

顔出しし始めつつまだマスクで隠していた頃。討伐した喜びでブレる人。ちなみにこの後号泣する

100日に近づくにつれて、こうして他のゲームもいろいろしていくうちに、配信100日マラソンはフィナーレを迎え、色んな人におめでとうと言ってもらえました。

Twitchでおそらく初めて書道配信をした人

で、書道の話はどこにいったのかって話なのですが、ここからが本題です。おまたせしました。

配信連続100日がたった頃には状況は変わっていて、匿名で遊んでいた配信は、いろいろあって顔も出すようになりました(今でもこの判断が正しかったのかは謎だけどもうしょうがない)。

チャンネルにモデレーターさんもついてくれていて、みんなリアルで会ったことがなかったけれど、機材のこと配信環境のこと、本当によく親切にしてくれました。会ったこと無いけどめっちゃ仲よくなるのあの感じ、2009年に初めてTwitterを使うようになってそこから人間関係が広がった、あの懐かしさを感じました。

100日終わった後、今後どうしようかという相談会をモデレーターのみなさんがしてくれたときに、モデレーターのTahkosan

そういえばちゃむさん書道長年やってたって言ってたよね、Twitchは海外の人がいっぱいくるから書道の配信でもやってみたら

と提案をしてくれました。

正直ライブ配信の世界でゲームなんてレッドオーシャンすぎて、よほどのことがない限り勝ち上がっていけません。私自身、別に配信者として稼ぎたかったわけでもないので、Twitchはわたしの個人的な遊び場だったのですが、そろそろ飽きを感じていたのも事実でした。視聴者数が増えないとそれはそれでモチベーションは上がってはいかないですし。

飽き性な私が人生で一番続けたのが書道でした。4歳から教室に通い、8歳ごろに硬筆だけでなく毛筆をやらせてもらえるようになり、段をさっさと取り終えて、高校からは部活でたくさん字を書きました(遊んでました)。社会人になってからは筆を持たなくなっていたのですが、実はこのタイミングで偶然、裏で書道の練習も再開させようとしていたのです。

その時ちょうど、友人の田村雪峰さんが、オンラインでの書道教室を開講するとのことだったので、そこで学び、臨書を復習していく予定でした。そんなタイミングも重なり、少し配信をお休みしてからは、臨書の練習配信をしていくことにしました。

Tahkosanの読みはあたっていて、ライブ配信でゲーム…じゃなくて書道(というか書きながら雑談)を主に週末とかにするようになったんですが、気づいたら様々な国の人たちが配信にきては” love Japan! Shodo! Kanji! ”と、私の配信にコメントし集まってくれるようになりました。どういうこと?


この頃には配信オーバーレイも変わってきました。チャット、カメラ2台構成。
マイクや機材も変化していきました。

わたしのDiscordサーバーではアートの面白い情報を教えてくれたり、書道の質問をイタリアからしてくれたりと広がっていきました。日本の文化大好きな海外の学生さんが、作品をほしがってくれたこともありました。

実際に海をこえて届いた作品

その様子を見ていた雪峰さんが、

ライブ配信でこうやっていろんな国の人が楽しんでくれているのは、業界を盛り上げる上でもライブ配信はすごく意味があるよ!

と一番このお遊びに価値を付与してくれました。いい友達を持ちました…

ライブ配信で得られたこと、悩んでいること

Twitchでの配信は本当に勉強になりました。顧客づくり、コミュニティづくり、人付き合い、エンターテイメントの作り方…

コミュニティづくり、雑談と進行については、実は仕事でワークショップデザインやファシリテーションをしてきた経験が役に立っています。特にコラボ配信のときは、そのスキルを応用した自分を自覚しました。というか、視聴者の人に褒められたってのが正しい。

また、ビジネス的にスケールの難しい専門性高い仕事をしていた私にとって、適切な努力をすれば人が集まってくれるという経験は、死ぬほど自己肯定感を上げてくれました。顧客獲得ってこうやるんだ、みたいな経験学習にどっぷり浸れたように思います。多分配信も、書道を見に来てくれたひともいれば、私に会いに来てくれた(書道は割と関心なし)という層もいたはずで、それぞれにどう届けていける余地があるのかも、試行錯誤の中で手応えを感じたりしました。もちろんうまく言ってないこともたくさんあります。

一方で、自分の社会的肩書が、自分自身をを律してくれていたことにも気づきました。なにもない自分がいかに駄目なやつで、時折人に迷惑をかけたりすることもあり、自分自身の未熟さを、ある意味肩書を抜きにして真正面から向き合うこともありました。

それ以上に、肩書とっぱらって何者かよくわからない人になれたことは、私にとってある意味新しい居場所をつくることに繋がりました。いろんなバックグラウンドがある人、顔も本名も知らない人と、ゲームやエンタメで楽しく過ごせることは楽しいし、「NPO法人Collableの代表をしている山田小百合」だと絶対に会えなかった人たちと知り合えました。これが一番の財産でした。

そして、確実に私たちが支援対象にしている生きづらさを感じている人も、その中にはたくさんいて、自分の肩書があったらこのリアルには触れられなかった。確実に自分の仕事の糧になっています。配信サイトのADHDタグの乱用?が話題になったときもあるし、当事者の人が配信しているというのも全く珍しくありません。

この経験を経て、お友達であるNPO法人サンカクシャのあらいちゃんの、配信でのアウトリーチについてはいろいろと一時期相談にも乗らせてもらいました。サンカクシャの取り組みは1つの希望だと思っています。

一方で、展示をすることになるにあたって、実は、この匿名性(正確には匿名にもはやなりきれてない)のあるものをさらけ出すことに抵抗がありました。Twitchのそれは、ただの遊び場で実験場だったから。はっきり言って付き合っている人間関係も全然普段と異なります。

でも、書道をするようになってお披露目をする機会が増えると、流石にもう匿名です!とは言い逃れできなくなる事情もあります。

リスクを洗い出せばキリがありません。ただ、分人としてもう一側面の自分がいることも事実で、SNSの発展は人の多面性を生み出すことにつながっているのも事実。だったら真正面から向き合う実験として、こういう形でお披露目することにしました(多分この記事を読む人ほど、普段の配信は見に来ないでしょうし)。

この二面性との向き合い方、融合のさせかたも、雪峰さんと「一緒に実験」というかたちで割り切って、今回展示にします。ここまで割り切るなら自団体にも少しでもプラスになるようにやるぞ!って感じです。

ちなみに書道の配信をする中で、フォーゼロスタジオも一時期使ってみたのですが、やっぱり配信に人が来てくれている実感を持ちやすいのはTwitchだったので、結局使わなくなってしまいました。(運営さんごめんなさい。。この辺はまたいつか書けるときに書きたいなと思います。気が向いたら)

【告知】書道の枠を超えた展示のご案内

書道の若手人口は減っているそうで、それは私自身も競書展に出すようになって感じています。一方で、Instagramはもちろんのこと、TikTok、YouTubeなどでは書道のクリエイティブな発信がちらほらあります。

当時Twitchで唯一書道配信をしている人として認知される中で、この流れで展示を一緒にしようよと雪峰さんに声をかけてもらったのが昨年。

そこからじわじわと二人で準備をしてきまして、お披露目となるのが来週です。

下記詳細です。よかったらぜひいらしてください。打ち合わせ等で不在にしている時間もあるので、確実にわたしに会いたい方、ご一報ください!でも基本毎日います!


「point or dot.」

2022.11.21(月)-26(土) 11:00-18:00(初日15:00スタート)
Sun Gallery Hongo (Newbury Tea and Coffee 併設)
本郷三丁目駅より徒歩4分

併設されたNewburyTea&Coffeeさん。
とっても美味しい珈琲やスイーツ、ランチもあるのでゆっくりしていって下さい。

当日は参加型のブースもあり、NFTも絡んでおります。詳しくは下記のプレスリリースをご覧ください。(このプレスでなんの肩書にすっかなという話で書道デザイナーになった、異論は一旦認める)

なお、私自身の作品販売はありませんが、当日は代表を務めるCollableの寄付ボックスも置いてます。わたしへの応援は、当団体への応援にぜひ変えていただけたら嬉しいです。

あと、配信で書き続けた面白い、変な、楽しい言葉たちも見られるようにする予定です。もはやリアルで見せるものでは無いんだけど…

本番までのプロセスも見られます!

ちなみにありがたいことに、Collable(というか私)は大変忙しくさせてもらっていて、法人としても新しいフェーズにいまして、全然うまく時間がつくれていません!!!創作って、何もしない時間が大事なのに、何もさせない時間をつくらせてもらえません(ありがたいことなんだけど)

でもって、わたしの書道の真骨頂は「ライブ」なので、もうこうなったら当日まで、夕方(16時ごろ目標)から、チャンネルで創作プロセス垂れ流すことにしました!ってかいつもそうしてるんだけど!!!

この記事を公開した本日は19時ごろから切りが良い時間まで。
以降、平日は16-21時(予定)、週末は午後(ざっくり)から、以下に垂れ流します。

(Collableのみなさん関係者の皆さん申し訳ありません…小声…)

この展示が終わって以降は、わたしの下記のTwitchのチャンネルについて発信することはありませんが、遊び用のアカウントと、仕事用のアカウントを作り分けましたので、もしかしたら今後は仕事用のアカウントを何かしらするかもしれません。

▼書道の配信が垂れ流されるほうのチャンネルは、以下よりどうぞ。


いただいたサポートは、多様な人たちとの関係性が当たり前にある社会の実現に向けて、Collableに寄付します!