見出し画像

バンコクの台湾式足裏マッサージ(痛い)

タイといえばマッサージ、マッサージといえばタイである。
バンコクに来たからには、時間の限りマッサージ屋に通い、全身をぐにゃぐにゃに揉みほぐしてもらわねばならない。

いいマッサージ屋の情報を求めて、人に聞いたりGoogle先生に訊ねたり、リサーチ活動に余念がない。そこで見つけたのが、バンコクはトンロー駅の近くにあるマッサージ店「徐瑞鴻診療所」である。

である、って書いてるけどこのお店の名前、いまだに読み方がわからない。じょたんこう? わからん。英語表記も知らないから、GRABアプリで目的地を設定するときも、近くにある別の施設の名前を入れてる。マヌケだ。タイ語を勉強しろ。

ここが他の店と違うのは、「台湾式足裏マッサージ」のお店だということ。
タイでマッサージと言ったら、なんと言っても「タイ古式」とか「オイルマッサージ」とかになると思うが、ここは台湾式なのだ。「バンコクまで来て台湾式?」なんて言わないで。それもまた一興、ではないか。

調べてみると、ここのマッサージは足裏がメイン。そして、かなり痛いことで有名なようである。ブログとか、Googleマップとか見ると、「かなり痛い。けど、スッキリしたし身体が軽くなった」的なコメントが多い。うーむ。「かなり痛い」と言われると、あの読みづらい店名も急に恐ろしく見えてくるではないか。「徐瑞鴻診療所」。画数が多くて強そうすぎる。なんて読むんだ!まずそれを教えてくれ!

実際に訪れてみると、人や車の多い通りから少し裏に入った、静かな路地に店はあった。白がメインのきれいな外観に、何やら足ツボをあしらったデザインの看板。通りの静けさも相まって、映画だったらほんとうにヤバい奴が住んでる家じゃないか。ハンニバル・レクターとかさ。こんなのどかな雰囲気のところで、地獄の悶絶マッサージが行われていると思うと、マジで帰ろうかなという気持ちになってくる。

見た感じは普通の一軒家。説得力のある静けさ。

様子を窺いつつ看板の写真を撮ってみたりしていたら、庭の掃除をしていたおばちゃんに見つかってしまった。タイ語で何やら話しかけてくるが、おそらく「いらっしゃい」みたいなことを言っているのだろう。さすがに走って逃げるわけにもいかない。覚悟を決め、おばちゃんに続いて室内に入る。

窓が大きくてほどよく開放的な室内は、照明をつけていなくて、自然光でいい感じにほの明るい。しかし、まだハンニバル登場の可能性もあるため気は抜けない。勝手に緊張していると、おばちゃんに「足のマッサージ?一時間?」と確認され、席へ案内される(1時間500バーツ)。気がついてみたら、おばちゃんたちは半袖の白衣を身にまとい、心なしか前腕が太く見える。なんだか説得力のある格好をしてるのだ。

ゆったりと身体を伸ばせるマッサージチェアが横並びに四つ。仕切りなどはなく、隣で施術を受ける人たちの様子も丸わかりである。友達と来たら面白いのかもしれないけど、知らない人と並ぶとなんとも言えない感じになる。

先客に日本人女性2人組がいた。彼女らの隣に案内され、マッサージを受ける。すると隣から、「う”う”ぅぃぃぃい”い”ぃぃっでぇ」と、とても女性の口から聞こえてくるとは思えない唸り声が。どうやらとんでもないツボを押されているらしい。椅子の肘掛けを掴んで、痛みに耐えている。
すると、マッサージを施しているおばちゃんが嬉しそうな顔で、

「アタマ、ワルゥイ」

と、カタコト日本語で言うではないか。どうやら今押されているツボが痛い人は頭部の調子が良くない、ということらしいのだが、カタコトのせいで、ただ馬鹿にされているようにしか見えない。

おそろしすぎる。
肩とか腰の不調を指摘されるくらいならいいが、「アタマ、ワルイ」なんて言われては日本男児の名が廃る。それどころか、万が一にも「脇が臭う」とか「男性の象徴が小さめ」とか、そんなことを指摘されてしまったら、もう国に帰れないではないか。これは困った。

勝手に妄想が暴走しているぼくをよそに、おばちゃんのマッサージは進んでいく。はじめは腕を軽く全体的に。それから足のマッサージにうつる。

おばちゃんが手元のカゴから、先っぽに球がついたようなボールペンくらいの木の棒を取り出す。それでツボを刺激しようというのだろう。見た目が怖すぎる。めちゃくちゃ痛そうな気配が妖気となって漂っている。勘弁してください、と心で泣いて、顔は平静を装う。日本男児だから。

しかし、予想に反して足裏の痛みはそれほどでもない。まあ痛いけど、耐えられないほどではないし、効いてる感のある痛みである。ああよかった。これで安心して国に帰れる。いやはや台湾式足ツボ敗れたり、などと思っていると、突然鋭い痛みが足から昇ってきて脳天を貫いた。

足裏のツボ押しを終え、次は指をマッサージしているようなのだが、これがめちゃくちゃ痛い。ぼくの場合、足の指、特に親指から薬指くらいの「側面」が、嫌んなっちゃうくらい痛かった。

「でえ”ぇっっっ!!」

声にならない声が漏れ、目を見開くとおばちゃんに、

「アタマ」

と言われてしまった。屈辱の敗北宣言である。
そのほかにも、「メ(目)」とか、「ミミ(耳)」も良くない状態だったらしい。くるぶしの周辺もめちゃ痛かった。あとで聞いてみると、その辺は「生殖腺」のツボがある場所らしい。なにそれ。恥ず。

とまあこんな感じで、反対側の足もやってもらって(同じような場所が痛かった)、最後に軽く肩周りのマッサージもあり、一時間の施術は終了。ウワサ通りの痛みであったが、終わってみるとなんとも清々しい。生きてるって感じ。

施術を終え、スッキリとした気分

ずいぶん大げさに恐ろしげに書いてきたけど、おすすめである。
たしかに体が軽くなった感覚があるし、好転反応なのかわかんないけど、翌朝にお腹が痛くなって、トイレに行くとたくさん出た。デトックス効果もあるんだろうか。マッサージ前後すぐに食事をするのは控えたほうがよさそう。
マッサージをしてくれるおばちゃん、お兄ちゃんたちはみんなプロフェッショナルで、丁寧にやってくれるし、腕も確かである。ハンニバルも出てこない。

バンコクで、「台湾式」足ツボマッサージ。試してみるだけの価値はあるんじゃないか。

ほな



いただいたサポートは、旅、コーヒー、本などに使わせていただきます。ありがとうございます。