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じごくゆきっ

じごくゆきっ
過去という呪いを抱えて生きてゆく者たち。桜庭一樹さんの小説は痛みを伴うのに読む手が止まらなくなる。魅惑的です

今日はこのなかの短編の一つである「脂肪遊戯」のことを想った。

"醜さとは謙譲の美徳を発揮するまでもなく、貞操保持を余儀なくされる、神々がある種のおんなたちに与える贈り物"

納得しかけて、そんな救いはなんだか嫌だなと思った。醜くいないと自分自身を護ることができないなんて、そんなのは間違っている。でもそんな当たり前な常識さえ跳ね除けられる世界に紗沙羅は一人で闘っていた。まだほんの中学一年生である少女には忍耐という絶望と脂肪という鎧で身を守る術しかなかったと思うと、それはあまりに残酷で。
普通の少女になることができても、元通りの心はきっとどこにもない気がした。それでも、救われてほしいと願うのは"お兄ちゃん"の父の言葉と同じような大人の無責任な気持ちなのかもしれない。

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