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梅田智也さん

おそらく生涯かけて聴いていくことになるピアニストさんと出会いました。
大切なご縁なので、自身の備忘録がてら記事を書かせていただきます。

衝撃の出会い

2023年5月。
X(Twitter)に、ヤマハさんからのリポストで演奏動画が流れてきました。

大袈裟でも何でもなく、雷の類に打たれたような衝撃を受けました。言葉では上手く説明できませんが、一瞬で演奏に引き込まれました。

え?誰??
梅田智也さん…お名前知ってる!
8人のピアニストさんがリレーで英雄ポロネーズ弾いた動画!あの中にいた人だ!

あの時も「上手いな〜素敵だな〜♪」とは思ったんです。でも、8人の凄腕ピアニストさんが束になっている動画の雰囲気に酔いしれ、個々への注目が欠けていました。

検索

今回、梅田さんの演奏の魅力を垣間見てしまったからには、youtube行脚が始まるわけです。
でも、個人のチャンネルをお持ちではないし、演奏動画自体も本数は多くない…なんで?

理由は経歴や職歴を拝見してわかりました。
藝大の院を首席でご卒業の後に留学。帰国後は藝大や高校で教壇に立っていらっしゃいます。合間に演奏活動や個人レッスン、コンクール審査員までこなし、とにかく移動、移動の毎日…ご多忙なのです。日本のピアノ界を背負って立つ方なのです。そりゃすごい演奏なわけだ。納得しました。

昨今「ピアニスト」と定義されているであろう方々とは、少し毛色が違います。でも、だからこそ、いや、何だかわからないけれど、強烈に引き込まれました。やっぱり言葉では上手く説明ができませんが。

もちろん生演奏が聴きたくなり、公演情報を調べてみました。すると、演奏活動の拠点は名古屋。開催の回数も決して多くはありません。
横浜に住む私にとっては遠いですが、昼公演ならば日帰りできなくはないので、いつか遠征しよう!と心に決めました。

そんな折、インスタに東京公演の情報がアップされました。

三軒茶屋 サロンテッセラでの開催

神様、いつも本当にありがとう!
私は生まれつきとても運が良く、強く願うことは何らかの形で叶うことが多いのです。日頃の行いが特に良いわけでもないのですが。

9月30日(土)は仕事もなし、娘の用事もなし、行ける!!近年稀に見る嬉しい瞬間でした。
お友達もご一緒してくれることになり、ランチの計画などしながら、ワクワク気分で当日を待ちました。

いざ三軒茶屋へ

運の良い私ですが、楽しみにしている公演に限って、前日に娘が発熱して行けなくなる…ことは時々あります。
小学校高学年のセンシティブな心身を、過剰なほどに守りながら当日を迎えました。
ここ数年で一番楽しみな公演!自宅から最寄り駅まで、いつも漕ぐ自転車のペダルが軽く感じられました。

三軒茶屋に降り立ったのは久々でしたが、過去に通った様々な公演が思い起こされました。
数名のボーカリストさん、お友達のジャズピアニスト、ヴァイオリニスト、イギリスから来日したバンド、ゴスペルの発表会にも誘われたっけ、そういや自分もアンサンブル演ったな…これら全て三軒茶屋で行われた公演でした。隠れた「音楽の街」なのかも知れません。

サロンテッセラ

とても響きの良い、落ち着いた空間。
面積に対しての音の満足度は過去一番でした。最前列にも関わらず耳触りがソフトで、相当緻密に設計されていることがわかりました。

梅田さんご登場

高さのある鋼の扉が開いて、梅田さんが登場されました。
佇まい、歩き方、お辞儀の仕方。一つ一つの所作が見惚れるほどに美しく、聴く前からもう「圧倒的にすごい感」がありました。
ふらりと現れて、ラフに弾き始める…そんな演奏もありだけど、本来「クラシックを聴く」ってこういうことじゃなかったか?と、聴き手として原点に戻らせてもらった気がしました。

椅子への座り方も、何となく、ではなく、ご自身のベストなポジションを慎重に探っておられる様子でした。
座り方、これ本当に大切なことです。
私も生徒に「お尻の二つの肉を割って、尻尾の骨を椅子に突き刺すように座って安定させよう」と、常々言っています。姿勢は出てくる音の基礎になりますから。

演奏

初めに出てきた一音で、全て持っていかれました。なんでしょうか、美の結晶みたいな音。
その、色彩や材質が少しずつ異なる音が連なり、大きなキャンバスを編み上げるような感覚。
一つ一つの音やフレージングに対して、魂を吹き込む作業のように映りました。心の動きだったり、集中だったり、「弾く」という動作に付随する、目に見えぬものを深く感じる演奏でした。

クラシック好きにはたまらないプログラム

アンコールは
シューマン:アラベスク ハ長調 Op.18
ラフマニノフ(コチシュ編):ヴォカリーズ Op.34-14
バッハ(コルトー編):チェンバロ協奏曲 第5番より「アリオーソ」

一曲ごとに、これはどうだった、あれがこうだったという説明はしませんが、どの曲も、美の中に梅田さん「らしさ」が感じられました。
正確には、私が徐々に「らしさ」を感じられるようになっていった、ということでしょうけれど。
大学で教えているからといって、ただのお手本のような演奏に終始しない。梅田さんとピアノの間にある、真剣で美しい対話に、心から感動しました。
クライスレリアーナ素晴らしかった…。
自分が今まで生きてきた、様々な場面が思い起こされたり、何か映画を観ているような感覚でした。

最後の曲ということもあり、アリオーソもとても印象深く、帰宅してすぐに楽譜を取り寄せました。
梅田さんのようには弾けないけれど、少々長い目で、自分なりの表現を探っていきたいと考えています。

お人柄

ピアノに向かっている時とはまた違い、穏やかで優しい笑顔でお話をされていました。
来場されていた門下の生徒さんたちにも慕われているご様子で、「また明日ね!」などと、にこやかに声をかけていらっしゃいました。
新参の私たちにも丁寧に応対して下さり、お写真もご一緒して下さいました。
そうだね、こういうお人柄だからあの音が出るんだね…と、妙に納得してしまいました。人柄は演奏に出ますね。人や物を大切に扱う人は、音も大切に扱う。そういうことですよね。

帰り道

帰りの電車の中で、いつものように耳にイヤホンを付けて…さて、何を聴く?もう既に梅田さんが聴きたい。さっき聴いたばかりなのに。あぁCD欲しい…なんか泣きそう…となりました。一耳惚れというのはかくも心が持っていかれるものなのですね。理屈じゃないのですね。こんなピアニストさんに出会えて本当に幸せだと思いました。

現在

ご多忙な方なので、SNSの更新も緩やかですが、時々の発信を楽しみにしています。
またいつか、あの素晴らしい生演奏を聴けることを願いつつ、密やかに推し活中です。でもやっぱりCD欲しい…(2回目)

↓この演奏が素敵すぎて作った記事
どうしたらこんな音が出せるんだろう。

おまけ

三軒茶屋はグルメも豊富。
お友達とのランチやお茶もとっても楽しかったです。また行きたい♪

梅田智也さん

プロフィール

岐阜県出身。5歳よりピアノをはじめ、これまでに奥村真、杉浦日出夫、長谷正一、西川秀人、東誠三の各氏に師事。愛知県立明和高等学校音楽科、東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業後、同大学大学院修士課程首席修了。修了時にクロイツァー賞、大学院アカンサス音楽賞、藝大クラヴィーア大賞受賞。修了と同時に、ロータリー財団奨学生としてウィーン国立音楽大学に留学し、M.ヒューズ氏に師事。

第62回全日本学生音楽コンクール全国大会第2位、第38回ピティナ・ピアノコンペティション特級銅賞、第12回東京音楽コンクール第1位並びに聴衆賞、リヴォルノ・ピアノコンペティション(イタリア)第2位、第11回ラニー・シュル・マルヌ国際ピアノ・コンクール(フランス)第3位、第9回トレヴィーゾ国際ピアノ・コンクール(イタリア)第1位、第10回浜松国際ピアノ・コンクールにて日本人作品最優秀演奏賞を受賞など数々のコンクールで優勝、入賞を果たす。

オフィシャルサイトより

オフィシャルサイト