夢、うつつ


作詩 sato.

背伸びして うんと強がって
聞き分けのいい大人のふり
もう何度あの日を反芻している
遠ざかるあなたの夢を見た

春ですか 布団の恋しさも薄れていく
はじまりの日ざし
隣にはあなたじゃない人の温度
違和感はない
彩りもない

「なぜ、私じゃないの」と泣きついて
意地を張らず伝えていたら… 

あの時、
あなたはどうしただろう
もしかしたら、離れることなく
泣いたり笑ったりしながら今でも
それなりにやってたかな?
そっちの方がよかったのかな
今夜もあなたをむかえにゆくわ

『元気でいる? 君は何をしてる?』
『来週には会いに行くからね』
声の主は 微睡みの中ではぐれた
伸ばした手 力なく垂れた

君に会いたい 忘れられないみたい
もう知らないふりも限界

数年前のあなたの面影を頼りにあの街へ
洋菓子店、喫茶店 川沿いの道
初めからわかってたけど 動き出さずにはいられなくて
馬鹿ね 滑稽な自分を笑うわ

踏切、私の目の前 急行電車が過ぎる
どこか懐かしい顔が 反対側に立ってる
込み上げる熱情はどうにもできないから
バーが上がり、すれ違い様…

私を見て微笑むの
『老けたね』といたずらに
またあなたが遠くなる
警鐘が鳴り響く

人混みを掻き分けて、あなたの背中に抱きついた
きっと困った顔してるんだろうな
お願い あと30秒でいいから

顔をあげたらあなたは
どう言うだろうか

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