見出し画像

イチマンブン ノ ゼロ

  布団屋の奥さん飛んでやって来た
  冷えるからねと毛布抱えて

 夕方、布団屋の奥さんから電話。母が入院したことを知らせて電話を切ると、まもなく呼び鈴が鳴った。毎日お見舞い大変やろう、と心配してくれるので、コロナ禍で面会禁止なんですと伝えるとガックリした様子。必ず渡しますと毛布を受け取るとニコニコした顔になった。 
 布団屋さんが店を畳んで、もう半年ほどになる。閉店の日、母と一緒にバラの花束を持って駆けつけると、おばちゃんは涙ぐんでておじちゃんは表に出ていっちゃった。やりきれん思いやったんやろうと思う。布団屋さんがあった所は最近歯医者さんになった。

 夜は声朗堂メンバーとオンライン会議。男女2名ずつ、全員30代というメンバー構成。近く開催する文学フリマに出品するため、皆で本を作っている。今夜の会議は熱を帯び、なかなか終わらなかった。2時間半の間に本のタイトル、表紙、奥付、本文の統合などほとんどが仕上がる。私は皆のすすめでまえがきを書くことに。
 本のタイトルは「イチマンブン ノ ゼロ」。売れ残ったら、来年の文学フリマで再び売ろうと話し、ネット上での販売は見送った。何しろ0巻である。1巻にもまだ手が届かない、ひよっこたちの出立の本なのだ。

【今日の書き出し短歌】
 布団屋の奥さんが本当に飛んできたんやないかってぐらい、電話切った瞬間に車のエンジンかけたんやないか、ってぐらい、あっという間に玄関先にいて、すごいなって思った。人っていくつになっても走れるんやなって思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?