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創作物感想録⑦:『Coda コーダ あいのうた』

総評

家庭の事情で、思うような青春を送れない主人公にとても感情移入してしまった。主人公の境遇が、私の親と境遇が似ていることもあってのことだとは思う。

それはさておき、物語内の対立構造としては、主人公 VS 主人公の家族(聴覚障害者)だ。主人公の家族は、唯一の聴覚者である主人公を「通訳」として頼らなければ生計を立てることもままならない。一方、主人公には自身の夢がある。「家族だから」という理由だけで自分の全てを犠牲してまで、家族に尽くさねばならないのであろうか。これがこの物語で提示された問いである。

最終的には、「家族だから」という義務感ではなく「家族を愛しているから」という理由で、主人公は自分の夢を諦める。しかし、家族の方が「主人公を愛しているから」という理由で、主人公の夢を後押しする。

家族の在り方にこうあるべきというものはなく、自らの意思で選択して構築していけるものであるということというメッセージのように感じた。(勿論、様々な事情があるので一概には言えないが)

ちなみに、この物語を観る中で思い起こされた一つの話がある。
ブレイディみかこさんの以下の話だ。答えはいつだって、シンプルなのかもしれない。

家族の問題について

家族の在り方を、子供目線で描いた作品を最近目にすることが多い。あくまで私にとって最近なだけであって、はるか昔からずっと記されてきたテーマなのであろう。ちなみに「家族の問題は家族内で解決すべき」という考え方が私の中には根付いている。ひと様に迷惑はかけられないという意識があるからだ。これは私だけなのだろうか。それとも日本人だけなのだろうか。この考え方を相対化して、もっと色んなことを考えていきたい。

備忘録:場面の切り換え

テンポの良い作品であり、テンポを生み出す場面の作り方をしていた。
「出来事+リアクション」
で場面を構成するのではなく
「出来事」
の後にすぐ次の「出来事」を持ってきている。
リアクションについては想像させるか、もしくは後の場面で回収。(それも直接的でなく)

例えば、あるシーンでは、寝起きの主人公の愕然とした顔から始まる。そしてすぐさま、家族で車に駆け込むシーンに切り替わる。多くは語られていないが、この描写だけで
・主人公の試験の日であること
・その試験に寝坊したであろうこと
が読み取れる。
多くを語らずとも、場面の説明が十分になされている。
なお、このシーンに続く、ラストのシーンでは、最後まで試験の合否はセリフでは表現されていない。当人たちのリアクションや、周囲の人間の言動を通して伝えている。そこもとても参考になった。


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