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創作物感想録④:運び屋

クリント・イーストウッドの最高傑作は何か?とふと思いネットで調べたところ2018年公開の「運び屋」だという情報を目にした。イーストウッドの映画を視聴するのはこれが初めてであったが、非常に楽しむことができたので、面白かった部分をメモ。

緊張感のあるプロット

あまり波のない物語であった。
主人公がトラックを運転するシーンを中心とした物語であるから。
だけど、同時に緊張感もある。
いつか主人公が警察に捕まるorマフィアに殺されるのではないかという緊張感を以下のプロットで作り出すことに成功している。

①経済的に行き詰まっている主人公が、知人から仕事を紹介される。
⇒読者:やばいんじゃないか?
②指定された場所に行くと、銃を構えた男どもが待ち構えている。
⇒読者:やっぱやばそうだな…
③捜査官達の会話シーンに切り替わる
⇒読者:何かやばい事件に巻き込まれていくのでは?

なお、③の段階では、主人公が何を運んでいるかについては明らかにされない。主人公が何を運んでいて、どのような結末を迎えるのか、終始気になりながら観ることができた。

情報を出す順番が良く、勉強になった。

主人公が魅力的

やんちゃなお爺さんが主人公で、この主人公が格好良くもあり可愛くもあることが、この物語の魅力でもあると思う。

まず、カッコいい部分。

相手が誰であろうと臆することなく、自分の信念を貫く。※1
その上で懐に潜り込んでいける。※2
そして何より、自分で責任を取る姿勢の潔さ。※3

次に可愛らしい部分。
テクノロジーを毛嫌いしている言動に垣間見える、頑固さ。
だが次第にメールができるようになっていく部分に見受けられる、柔軟性。
そして、仕事に夢中になり、家庭をおざなりにしてきたがゆえに家族がハブられている不憫なところ。なお、その理由を家庭では無力だったから外を求めたと白状する部分は何とも言えない気持ちになってしまった。

自分も将来こうなりたいという側面と、そうはなりたくないという側面の両方を持ち合わせている魅力たっぷりの主人公だ。

※1...マイペースにドライブする、銃口を向けられても恐れないなどといった振舞
※2...自らの監視約であるマフィアに対しても美味しい食事を食べさせたり、真心からの助言を行ったりなど。個人的には助言した後の引き際もよい。「私の考えを述べたまでだ」
※3...マフィアに暴行されても自業自得だと言い切り、裁判においても自ら有罪を主張する


最期に

漫画家の倉田真由美さんは、「運び屋」の感想について以下のようにコメントしている。

「90歳」ってやっぱりすごいな。佇まいだけでも、物語になる。子供の無邪気さと長く生きた者の老獪さ両方が混在する90歳、誰よりも自分勝手で正義の人でもないのに、どうしても応援してしまう。

『運び屋』著名人コメント

言い得て妙。
なんともいえない爽やかで哀愁のある気持ちを味わせてくれる作品である。


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