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創作物感想録①:マトリックス

人類が現実だと思っている世界は、実はAIが作り出した仮想空間(マトリックス)でしかなく、現実世界での人類はAIのエネルギー源として管理されている。そのことを知らされた主人公・ネオは、人類をAIの支配から解放する戦いに身を投じていく。

上記がマトリックスのあらすじだ。
改めてこの大ヒット作品の第一部を視聴したが、個人的にはあまり面白いと思えなかった。当然面白いと感じる点もあったので、双方についての整理していく。

各プロットの説得力不足感?

物語全体を通じて感じたことは、全体的に各プロットに説得力が不足していて「なんで?」となるシーンが多かったということ。

まず、主人公・ネオの動機が不明瞭に思える。物語の冒頭ではネオはこの世界の真実を知らない。その後、レジスタンス集団のリーダー・モーフィアスから真実を告げられ、vs AIに身を投じていく訳だが、その動機がよく分からない。

また、彼がなぜ救世主たり得たのか。ここも説明が特になく、説得力に欠ける。(凄腕ハッカーであるがゆえに、AIが作り出したプログラムをも凌駕でき、AIの世界をも支配できる…という設定?)

更に、ネオ達の敵であるエージェント・スミスが、マトリックスの存在に気付いたものを排除するセキュリティプログラムなのであれば、一対一の格闘に終始するのではなく、もっと圧倒的な力でネオ達をねじ伏せられたのではないかとも思ってしまう。

他にもあるが、個人的に一番がっかりしたのは、裏切者のサイファーの死に方。裏切者という物語上かなり重要な役割を担いながら、その最後は殺したと思っていたタンクが実は生きていてドカン!…とあっけない。悪役を演じるなら、しっかり殺しておけよとも思う。また、これは説得力という観点でがないが、せめて主人公級のキャラクターが倒すプロットであって欲しかった。

私は世界観や各キャラクターの動機に疑問符を持ってしまうと、物語にのめり込めないタイプであるらしい。

ただ、これらの疑問符は、後続のシリーズで明らかにされる可能性もあり、作り手が意図的に開示しなかった情報かもしれないことは断りを入れておく。(私は第一部しか見ていないです。)

世界観は圧倒的

今でこそ、AI vs 人類 みたいな世界観をベースとして物語は増えてきた気がするが、マトリックスはその先駆者的存在ではないかと思う。(この世界観を通じてのメッセージ性については、後述する。)

また、仮想現実の中では、思い込み(脳内のプログラム)次第で、どんなこともできるようになるという設定はかなり説得力がある。そして、この設定があるから、超人的なアクションシーンが可能になる。超人的なアクションシーン(特に肉弾戦)は、ただの銃撃戦よりも遥かにそそるものがある。マトリックスを通して、この個人的な嗜好にも気づくことができた。

人類はテクノロジー(AI)の奴隷?

マトリックスの世界における人類は「テクノロジー(AI)の奴隷」とも言える。これは今の現代社会とも通ずるものがあるのではないだろうか。AIがはじき出した最適解に人間が従う社会とまではいかなくとも、自分で考える前にAIに答えを求めるという行為は大なり小なり皆が行っている。それが行き過ぎた世界の帰結を描いたのがマトリックスなのかもしれない。

また、「テクノロジーによる監視社会」という観点でもマトリックスの世界が現実になりつつあるように思う。

この辺りの整理はまた別途。



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