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東京で一番急いでいる女

のんびりしたい。のんびりさせて欲しい。「のんびり」という字面を見ているだけでため息が出る。喉から手が出るほどのんびりが欲しい。のんびりください、サンタさん。

1日の中にのんびりする時間はほぼない。朝はスマホの目覚ましの音で飛び起き、そのままキッチンへ直行。既に夫は出勤。息子の朝ごはんの支度を半目で済ませる。ご飯になんかしらをかけて混ぜたもの(納豆とかツナとかレトルトのあんかけとか)、果物、牛乳を準備してテーブルにセット。息子を起こし、のそのそと寝室から出てきたところをそのままひょいと抱き上げてすぐさま食卓に着席させる。息子は寝起き5秒くらいなのに、うひょー!飯ー!!って感じで大喜びしてもりもり食べ始める。ありがてぇ。

実家の母にテレビ電話をし息子の朝ごはんを毎朝中継。息子と母がテレビ電話越しにわーわー!楽しげに言い合ってる様子をうかがいながら、わたしは顔を洗い歯を磨き、全然時間に余裕などないくせにコーヒーを淹れる。一分一秒を争っているので心の中ではめちゃくちゃ焦っているのだけど「まぁコーヒーでも飲みなよ」と自分を労っている。美味しいとか美味しくないとかは関係のないこと。

息子が食べている向かいに座りコーヒーをすすりながら化粧。たまに「牛乳おかわりー!」とコップを掲げる息子に「はいよー!」と牛乳を注いでやりつつ化粧を手早く終わらせる。その頃には食べ終わっている息子の手や口を拭いて、テーブルや床をザッと水拭きし息子を椅子から下ろす。下りた途端に大体息子のうんちタイム。その間にわたしは着替えを済ませ、うんち終了を見計らってオムツ替え。息子は嫌がって一目散に逃げる。捕まえてはすり抜ける息子と部屋中をバタバタ走ったり転げたりしながらなんとかかんとかオムツを変えパジャマを脱がせ服に着替えさせる。息子にコートを羽織らせ靴下を履かせ、私も身支度を完全に整えて息子を担ぎベビーカーにくくりつけ、いってきまーーーす!までが私のモーニングルーティン。

乗り遅れたら遅刻!という電車に滑り込みセーフで乗り込んでの出勤。毎朝このパターン。リアルフェイス。通勤中に本を読んだりYouTubeを見たりラジオを聴いたりするわずかな時間だけが至福の時。仕事の休憩中は持参したノートPCで副業のライターの仕事を進めているが5日で5記事のノルマ、結構ハードで息切れしている。

仕事を終えるとマッハのスピードで職場を出て目にも止まらぬ速さで歩き、乗り換え案内を巻きまくって電車を乗り継ぎ最寄駅へ。1秒でも早く帰り、息子にご飯を食べさせ、風呂に入れ、寝かしつけたい私は東京で一番急いでいる女と言っても過言ではない。そう!私は東京で一番急いでいる女よ!!

保育園にお迎えに行き息子をピックアップしてダッシュで家に帰る。到着したら手洗いうがいを済ませてそのままキッチンへ。息子は愛用のトトロのぬいぐるみとの朝ぶりの再会を喜んでいる。毎日帰宅したらすぐにトトロに駆け寄って、飽きずに再会を喜び合っている(?)様子が可愛い。

朝よりは少しマシなものを作る。おかずはハンバーグとか蒸した野菜とか具沢山味噌汁など、果物は朝と違うものに。作っているうちに、トトロとの再会に満足した息子がお腹を空かせてダダダ!とキッチンに走ってくる。足にまとわりつき大騒ぎなので、食卓に着席させ出来たものからテーブルに出すコース料理スタイル。

朝と同じく夕食も実母にテレビ電話で中継。画面越しでもわーきゃー楽しむ2人を横目に朝のドタバタでとっ散らかった部屋を片付け、ベットメイキングをし、掃除機をかけて、寝室に干してある洗濯物を取り込む。この辺り、朝のうちに済ませておきたいけどそんなことは無理なお話。コーヒーを淹れる時間を削るつもりもないし、ちょっと早めに起きるなども論外。つまりこれが限界なのじゃ。

保育園で汚した服やらタオルやらの洗濯物を保育園カバンから取り出して他の洗濯物と一緒に洗濯機にぶち込んでスイッチオン。食べ足りないと騒ぐ息子に追加の果物や牛乳、おやつなどをあげてから、そこら中に飛び散った食べカスを片付けてジャっと全体を水拭き。息子も顔から手から足からベタベタなので綺麗に拭きあげてようやく椅子から下ろす。息子は早速トトロを抱きしめ、夕食前ぶりの再会を喜んでいる。

朝の食器もそのままなので息子の相手をしながら皿洗い。それが済んだら取り込んだ洗濯物を畳む。これも息子の相手をしながらなのでまぁ進まない。畳んだものを端から順にめちゃくちゃにされて振り出しに戻る(×3)。

ようやく畳んだ洗濯物をしまい終えた頃には、帰宅して回した洗濯機はとっくに止まっている。洗濯物を干すのが憂鬱すぎるがやるしかない。前から思っていたけど「洗濯」こそ無限ループそのもの!畳んだかと思えば洗って、洗ったかと思えば畳んで、皮肉にも本体も回ってるし、なんて恐ろしいこと….!

洗濯物を干していると息子が私の目を盗んで、玄関のタイルの上でゴロ寝したり、キッチンの食料ストックのカゴの中にコップの麦茶を全て注ぎ込んだり、トイレの便器に手を突っ込んで水遊びしたりと悪さをするので、私はこらー!とか、ぎゃー!とか、やめてー!!とか毎晩悲鳴をあげている。想像もしない出来事に急に直面すると人はやはり悲鳴をあげるようだ。

この後大人たちの夕飯の支度に取り掛かるが、限界を迎えて電池切れの時は潔く放棄!作れる体力が残っている時はテキトーなものをテキトーに作ってテキトーに食べる。

夫の帰りが遅いことが多いので、そんな時は息子と2人でお風呂。疲れているけど結構楽しい。最近の息子はとなりのトトロのさつきとメイのお父さんがお風呂でわっはっはっはっ!!!と笑うシーンのモノマネにハマっているので、それをお風呂で再現して披露してくれる。水面を叩く演技も込み!!天才!!

バタバタとお風呂を出て、保湿して、麦茶を飲ませて、歯磨きをして、ようやく寝かしつけ。息子も疲れ切っているのでベッドに入るとぐっすり。わたしも一緒に寝落ちするパターン。とは言っても、副業のライターの仕事が残っているので、0時過ぎに起きて記事作成に取り掛かる。気づくと2時、3時。切り上げて息子の保育園バックの準備をしてようやく就寝。

こうして私の20時間労働が終わるのであった。


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