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2つのダイジェスト~人は何に興味を持つのか?

新聞・雑誌にせよ、Webメディアにせよ、プロによる本の紹介というのは難しい。ある本の中で「記者が興味を持った所」が、必ずしも「そのメディアの想定読者層が興味を持つだろう所」と一致するとは限らないからだ。

個人の読書感想・書評ならそんなことは関係ない。ただ自分がいいと思った所(&疑問点など)を書けばいい。
しかしプロは、まず「メディアの想定読者が興味を持つだろう所」を押さえる。極端な話、ギャル向けメディアと中高年向け健康情報メディアでは読者の興味が違うのだから、同じ本でも当然別のポイントを取り上げるだろう(そんな両メディアで紹介したい一冊の本が存在するのかどうかは、問わないでほしい)

今回の新刊『トークの教室』はおかげさまで重版がかかった。多くの方が興味をもち、いろいろなメディアが紹介してくれた。

その中で、2つのWebメディアがダイジェスト紹介をしてくれた。書評でもインタビューでもなく、本の内容から一部をダイジェストで抜粋する(もちろん出版社の了解を得て)というもの。当然、抜粋箇所のチョイスに個性が出てくる。

1つは文春オンライン。前後編になっている。

もう1つは、プレジデントオンライン。これも前後編だ。

ちなみに、写真の選び方に若干の違和感があるのは、そのメディアが持っているアリモノの写真かフリー素材を使うからだ。もう一つWebメディアの特徴は、見出しがやや煽り気味になる点。ちょっと誤解を招きかねないケースもある(ひょっとしたらわざとそうしてるのかもしれない)。
が、どちらにも本の著者は関与できないので、許していただきたい。

それぞれの想定読者層は、どういうものだろうか? ともにオジサンメディアだが、文春は広く一般向け、プレジデントはビジネスマン向けなのかな…と私は思っている。それぞれの想定読者層の興味と記者の興味の折り合いをつけたダイジェストなのだろう。読んで、
「うん、うん。いい所を選んでくれた」
と思うのも嬉しいし、
「ほう、そこをチョイスしたのか」
とちょっと意外に思うのも楽しい。

面白いのは、どちらも「その話、オチは?」という項目を選んでいる点だ。
これ、見出しだけでは誤解を招くかもしれないけど、本文ではちゃんと「トークは、途中の話が面白ければオチはなくてもいい。もちろん、あってもいいけど」と紹介している。
実はこれ、他の新聞紹介記事やラジオ番組にゲストで呼んでもらった時も、必ずピックアップされる。たしかに本の中の重要な一項目ではあるが、それはたとえば、十あるトピックの中の一つにすぎない。
だがどのメディアもこぞってこれを採り上げるのは、わかりやすいという点に加え、みんなそれほどオチを重荷に感じていたのかという点が、私には興味深かった。

ところで、私は星新一ショートショートコンテスト出身の作家だ。放送作家としての私ではなく、藤井青銅をショートショートやショートドラマの作家だと認識している方もいるだろう。そしてそれらの小説やドラマの中では、私はかなりオチにこだわる作家なのだ。いや、こだわるというか、自分を律していると言ってもいい。
なのに、この本では気にしなくていいと書いている。
そこらへんを矛盾していると感じる方もいるかもしれない。が、私の中では相反しないことなのだ。

短いダイジェストだと、どうしても細かいニュアンスが伝わらない。誤解を招きかねない点も出てくる。ご興味あれば、本を読んでもらえると嬉しい。新書だし、読みやすいですよ。


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