段ボールひと箱の重さ
実家の整理をしている。両親が共に亡くなってから住む人がいないので、そろそろカタをつけなければならない。新型コロナのせいで3年ほど何もできなかった。が、恐る恐るまた片付けを再開したのだ。
実家の本棚に並んだ本がある。たいして量はないし、たいした本もない。売っても二束三文だから捨てるしかないのだが、中に私の本が何冊かある。
かつて私が本を出すたびに、実家に送ったものだ。
「息子が東京で何をやってるのかよくわからないだろうけど、とりあえずこんな本を書いて、出版しましたよ」
と安心させる意味で毎回送った。
親が読んで面白い本はあまりなかっただろう。いや、なにせ藤井青銅の本だ。年寄りから見ればチンプンカンプンな内容もあっただろう(安心させるつもりが、かえって不安を抱かせてしまったかもしれない)。
感想を聞いたことはないし、こっちだって、言われても困る。
ただ単に、私が活動を続けている証として本棚に並んでいっただけだ。
私の本こそまさに売っても二束三文だ。が、さすがに自分の手で捨てるのはしのびない。せめて自分の本くらい救出して自宅に送っておこうと、段ボール箱につめた。
つめてみて驚いた。同じ本が何冊もあるのだ。
私は毎回、実家には一冊しか送っていない。ということはおそらく、両親は時々本屋さんで私の本を見つけて買い、少しでも売れ行きに貢献しようとしてくれていたのだろう。
そうやってささやかに買い支えてくれたけど、世間で私の本が大ベストセラーにはならなかった。パッとしない息子で申し訳なかったなあ、と今さらながら思う。
結局、段ボールひと箱になった。
持ってみると、予想より重さがあった。
お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。