幕末三姉妹14
このドラマは全20話なんですが、さっさと全部UPしてしまわないと、他のドラマ脚本をご紹介できない。なので、どんどんいきます。
ラジオドラマ脚本・第十四話。
(脚本が苦手な方はスルーしてください!)
幕末の流れを面白くわかりやすく、を目指したドラマです。
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痛快、愉快! 奇想天外時代劇!
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幕末三姉妹
第十四話「長州、踏んだり蹴ったり」(1864年)
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【登場人物】
(日和見藩)
星姫
凛姫
弓姫
日和見忠典(ひよりみ・ただのり)
じい(左右田頼母)(そうだ・たのも)
桂小五郎
西郷隆盛
N(ナレーション)
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TM CI~BG
N 「タイトル・クレジット」
西郷 おいどんは、薩摩藩軍賦役(ぐんぶやく)・西郷隆盛でごわす。
N 京都の日和見藩藩邸に、突然、西郷ドンが訪ねてきた!
西郷 おりいって、伺いたいことがあって、参った。
N 数日前。「蛤御門の変」で、長州軍を蹴散らした男だ。「西郷率いる薩摩軍は強い」、と京都で評判になっていた。
いま、薩摩や会津、そして新撰組は、血眼になって、長州の生き残りを捜している。その大物中の大物・桂小五郎は、この時、裏庭の物置小屋に匿われているのだ。
星姫(モノローグ)ま、まずい。バレたのかしら…。
N と星姫は、冷や汗たらり。だが、そんなことを知らない日和見藩の連中は…
日和見 おお、そちが薩摩の西郷か!
凛姫 お噂はかねがね聞いていました。
日和見 わが日和見藩は前々から、薩摩びいきじゃ。なあ、じい?
じい もちろんでございます! みんなで話しあって、「これからは薩摩だ」と。
弓姫 そう。私が選んだのよ。「ど・ち・ら・に・し・よ…
じい あわわわ、弓姫様! そんな話はあとで。
凛姫 さ、どうぞ、おあがりください。
M コーダ
N 西郷隆盛は座敷に通された。小藩とはいえ、日和見忠典は殿様。対する西郷は、大藩・薩摩とはいえ、身分は下級武士。百八十センチにもなる巨体を、小さく折り曲げてかしこまった。
星姫 西郷さんは…なぜ、ここに?
西郷 実は、天璋院(てんしょういん)様に薦められたとでごわす。
弓姫 天璋院様っていうと……
日和見 先の将軍の御台様(みだいさま)で、
じい 以前のお名前は、篤姫様。
凛姫 篤姫様!?
N 凛姫は以前、お輿入れ直前の篤姫と会っていた。その時…
(#4・回想エコー)
篤姫 そう畏まらなくていいのよ。凛姫。
凛姫 は、はい。
篤姫 私と、友だちになってください。
N …という会話を交わしていたのだ。
西郷 天璋院様からの手紙で、「なにか相談事があれば、日和見藩の凛姫様をお訪ねするように」と。
凛姫 そうだったんですか。でも、西郷さんはどうして篤姫様を?
西郷 島津家からお輿入れの時、おいどんは、藩主・斉彬(なりあきら)様の御命令で、あれこれと準備に走り回っておりもした。
弓姫 へえ~。
凛姫 西郷さんて、その頃からこの国のために働いてたんですか。
星姫 でも失礼ながら…、お名前を聞いたのは、最近。
西郷 まあ…。おいどんはこの三月まで、ずっと島流しにあっておりもしたから。
日和見 島流しとはまた、大げさな。
じい どこか閑職に追いやられていた、という意味ですな?
西郷 いやいや。本当に島流しでごわす。
全員 え!?
N 島津斉彬に引き立てられた西郷ドンだったが、その斉彬が急死。弟の島津久光が、かわって薩摩藩の実権を握った。この久光に、西郷ドンは嫌われたのだ。
SE 海~BG
西郷 おいどんは船に乗せられ、途中、屋久島、奄美大島に立ち寄り、さらにその先にある、徳之島に流されもした。
ところが、「それでは手ぬるい」とお達しがきて、そこからさらにもっと遠い沖永良部島(おきのえらぶじま)に流されたのでごわす。
弓姫 ああ~ん、島の名前がいっぱい出てきて、なんだかわかんない!
西郷 ハハハ。たしかに、そうでごわすな。では、この座敷を、現在、政治の中心である京都だと思ってくだされ。
N と、西郷ドンは急に立ち上がって、歩き出した。季節は夏。開けたままの襖を二つばかり通り過ぎ、縁側まで歩く。
弓姫(OFF)ちょっとお、どこまでいくの!?
西郷 この縁側が、薩摩の国でごわす。
じい(OFF)たしかに。薩摩は日本の端っこですからなあ。
日和見(OFF)遠いのう。
SE 風鈴ちりりん
西郷 おお。気持ちよか風じゃ。
凛姫(OFF→ON)じゃあ、縁側が薩摩だとすると、その先にある裏庭が、海ってわけですね。
西郷 そうなりもす。凛姫様ご覧ください。あちこちにある庭石とか燈篭が、海に浮かぶ島です。
凛姫 なるほど。
星姫(OFF→早めのON)まあ、庭の話はそれぐらいにして、もう座敷に戻って…
弓姫(OFF→ON)あら、面白いからいいじゃない。この裏庭が海だとすると、西郷さんが流されてた島ってどのへんになるの? 教えて、教えて!
星姫(モノローグ)んもう~。弓姫、余計なことを。
西郷 庭に降りた方が説明しやすかとですが、よかでごわすか?
星姫(モノローグ)いいわけない。だって、裏庭の端っこに物置小屋があるのよ!
西郷 よかでごわすか、…星姫様?
星姫(モノローグ)どうして私に? …この人ひょっとして、すべて知っていて?
凛姫 どうぞ。西郷さん、降りて説明して。
弓姫 いいわよね、星姫お姉様?
星姫 え? …も、もちろんよ。どうぞ。
N 西郷ドンは庭下駄を履き、裏庭をずんずん進んでいく。
SE 蝉~BG
西郷 まず、こん庭石が種子島と屋久島。ここまでは近いが、ここから先、えんえんと島のない海が続くとでごわす。
……
弓姫(OFF)まだなのー?
西郷 まだまだ。
凛姫(OFF)そろそろじゃないのー?
西郷 もう少し。
N 西郷ドンが進むほどに、気が気じゃないのが星姫。
星姫(モノローグ)あああ…、そっち行っちゃ駄目なのよ!
西郷 そうですな、この石灯籠のあたりが奄美大島でごわすー!
弓姫(大OFF)そんなに遠いの!?
西郷 そしてこの先の「松の木」。姫様方ー、ここが徳之島でごわす!
凛姫(大OFF)そんなところに流されたんですかー!
西郷 沖永良部島はさらにその先で…。
N 松の木の先にあるのは…
星姫(モノローグ)え? まさか!
西郷 …そうそう、ちょうどこの物置小屋の位置でごわすー! おいどんは沖永良部島で、このような小屋に入れられて……
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