「幕末三姉妹」1

「時代劇で連続ラジオドラマを書いてほしい」
という大変珍しいオファーがあったのです。しかも、2010年。しかも、民放(ニッポン放送)。しかも、「時代劇であれば内容はおまかせ。オリジナルで」。
こんなの、喜んで引き受けるに決まってます!

パッと頭の中に浮かんだのは、かつてNHKで放送された『天下御免』(脚本・早坂暁)というテレビドラマ。主人公は平賀源内。このドラマは時代劇なのに、間に当時のテレビ番組(現代)のシーンも入ってきて、とても斬新。すごく面白かったのです。
中高生の頃に漠然と「将来、こんな番組に関わりたいなあ」と思ったドラマはいくつかあるのですが、その一つです。

もう一つは、漫画の『風雲児たち』(みなもと太郎)。ご存知、前人未到の大河歴史ギャグ漫画。中学生の時に少年マガジンで『ホモホモ7』に出会った時からみなもと太郎の大ファンで、当然のことながらこの『風雲児たち』シリーズは各巻が出るごとに買って、全巻持っていました。

どっちも「シリアスとギャグ、過去と現在を混在させるメタ視点」「史実は曲げない」「知性を遊んでエンタメにする」という手法は同じ。時期も同じです(『天下御免』と『ホモホモ7』はほぼ同じ時期。『風雲児たち』は少し後から始まりますが)。
1970年代初頭はパロディ文化が市民権を得た頃。その時代感については、ここにも書いています(70年代の大きなゼンマイ)。
いまとなっては、当時のボンクラ中高生がハマるのもよくわかります。

「中高生の多感な時に影響を受けたモノを、大人になって作ろうとする」というのは、作家、漫画家、ミュージシャン、役者、映画監督、デザイナー…などすべてのジャンルでよく言われることです。
もちろんまったく同じものをコピーするわけではありません。自分なりの解釈であらたに作る。あるいはコピーを作ったつもりでも、どこかに時代の影響が忍び込んでいて、結局別物になる。
文化というものはそうやって、20~30年程度のサイクルでくるくる回りながら前に進んでいくんですね。

『天下御免』の舞台は江戸時代中期、『風雲児たち』は江戸時代全部(幕末を描くために関ケ原の戦いから始めるわけですから)。が、多くの方に人気の時代劇は「戦国時代」か「幕末」。NHK大河ドラマでは何度も何度もドラマ化されています。
そこで、ここは奇をてらわずに王道の「幕末」でいこうと思いました。

もう一つ、オファーの条件として「主人公は女の子で」というのがありました。そこで、タイトルは『幕末三姉妹』にしました。かつて大河ドラマに『三姉妹』というのがあったのは知っていましたが、これは私が小学生の頃。タイトルだけで、内容はまったく憶えていません(あとで、時代が幕末~維新だというのを知りました)。ま、いいか、タイトルはパロディということで。

当然、「シリアスとギャグ、過去と現在を混在させるメタ視点」「史実は曲げない」「知性を遊んでエンタメにする」という精神は同じです。私は過去にいくつかの日本史本を書いていますが、実はすべて同じ手法で書いています。今回違うのは、ラジオドラマという点だけ。

というわけで、『幕末三姉妹』のラジオドラマ脚本です。放送当時のそのままではなく、読みやすいように少し加筆修正しています。
いまはPCで書くせいもあって、横書きの放送台本も多い。けれど、ドラマ脚本だけは縦書きですね。やっぱりその方が読みやすい。が、こういう横書きサイトには向いていない。デスクトップPCで見ているのかスマホで見ているのか、表示画面のサイズがいろいろなので、セリフの改行が読みにくくなってしまうんですね。そこで、第1話は縦書きのPDFにしてみました。
「その方が読みにくい」という方がいらっしゃるかもしれません。どういうやり方がいいのか、試行錯誤しながら考えていきます。全20話ありますので。
こちら「ラジオドラマ脚本の読み方」を参考にしてみてください。

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