#317 まさかの再会

僕はこのままラグビーサークルにいるだけでは国立競技場や秩父宮ラグビー場などの大舞台で試合が出来る様になるとは思わなかった。
高校時代に花園を経験できたことで、より高みを目指して浪人までして目指した早稲田大学。
2浪の上、合格し入学が叶った。ただ、肝心のラグビー部への入部が叶わず、行き場を失った僕はラグビーサークルに加入した。
念願のラグビーを再開することは出来たが、思っていた自分が目指すべく方向性とはかけ離れてしまっていた。
ラグビーが出来ることに純粋に喜びを感じてはいたが、どこか物足りなさを感じつつ、週末の練習や試合に臨んでいた。練習や試合をやっている時はラグビーを楽しくできていた。中々戻らない体力を回復すべく、ジム通いとラントレーニングは欠かさず行っていた。
ラグビーサークルの毎年恒例の行事として、5月末に行われる野球の早慶戦観戦があった。
前日から神宮球場に並び、当日券を買い求めることから始まるものだった。
その当日券を買う役割を新入生と2年生が担っていた。
徹夜で並んで宴会しつつ、夜が明けるのを待った上で当日券購入。この行為自体もイベントとして組み込まれている様だった。
この日ラグビーサークルの練習が終わり、一度帰宅してから22時過ぎに原宿駅に集合し、宴会用の飲み物や食べ物を買い出ししてから神宮球場へとみんなで向かった。
神宮球場付近に着くと、他のサークルの学生達も同様に早慶戦の当日券を買うべく、たくさん集まっていた。周囲が異様な熱気で包まれていた。
僕らは並ぶ場所を確保した後、ゆったりと宴会を始めた。周りの他の学生たちも同じ様な感じだった。
薄暗い中、数えきれない学生達の歓声で賑やかでざわついていた。
宴会が続き、日付も変わり真夜中に僕は気分転換に周囲を散歩した。
神宮球場付近にある聖徳記念絵画館の近くを歩いていると、前から何だか見覚えのある人物とすれ違った。すれ違う瞬間にお互い目が合い、誰であるか気づいた。
続く…

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