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なぜ理解の深さに差が生まれるのか考察してみた

春から社会人になる学生です。大学時代はロボットコンテストに参加する部活動をしていました。担当していたのはプログラミング部分です。社会人になるこのタイミングで大学時代を振り返って、頭の中で考えていたことの一部をまとめます。前半で大学時代の経験を振り返っての理解の深さに対する考察、後半にどういったやり方で勉強していけばいいのか個人的な見解を書きます。

応用できる人は本質的な理解をしている

僕は自分でどんどん学んで発展していける人は、基礎的なことしかできない人とは根本的に理解の仕方が違うと思っています。例えば、公的老齢年金を「定年まで払い続けて定年してから月々もらえるお金」と認識している人と、「長生きリスクに対する保険だから、自分で用意したお金で生活して、まかないきれなくなったら頼るもの」と認識している人では、両者で同じ情報を受け取ったときの反応は異なります。2019年に老後2000万問題が話題になりました。反応の違いとしては、前者では"俺たちを助けろ、政府が何とかしろ"といった反応になりましたが、後者では"資産運用を初めて自分で贅沢分のお金を用意しよう"という反応になったのではないでしょうか。麻生氏も、快適に暮らそうと思ったら2000万円足りなくなる、だから年金保険だけに頼らずに投資をすることで自分で確保してほしいという意味合いだったのでしょうが、本質的な理解をしていない人には正しい意味では伝わらなかったようです。なぜこのような理解の仕方の違いが生まれるのかと言うと、それはベースとなる知識の違いによって起きると考えられます。

※老後2000万問題についてはhttps://www.youtube.com/watch?v=AmYkYxKnsw8 を参考にしています。

圧倒的に技術的理解がある先輩の話

僕は大学でロボットを作る部活動に参加していました。そこには、回路と組込みシステムのプロフェッショナルな先輩がいました。その先輩(ここではK先輩と呼びます)は、プログラム、回路、数学に関して変態的に深い理解をしていました。知識レベルが高く、高度な回路設計もプログラミングもこなしてしまう、所謂天才です。僕が回路に問題が起きて困っていると、いつも思いもよらないような方法で解決してくれました。そして、問題の解説のときに本質的な説明をしてくれたので、非常に理解が深まりました。僕はK先輩はすごすぎて何年経っても追いつける気がしません。しかし、K先輩は人に教えることが苦手でした。その理由は、"なぜわからないのかがわからない"そうです。

ロボット部では、プログラミング言語はC++を使用しており、初学者がよく躓くのはポインタでした。ポインタで躓く新入生はK先輩のもとに聞きに行きますが、K先輩はよく、「ポインタで詰まる理由がわからない。私は詰まったことがない。」と言っていました。ではK先輩はどうやって学んだのかと言うと、はじめはアセンブリ言語やCPU、メモリの仕組みを学んだそうです。その流れでC++を学んだため、そこまで苦労なく理解できたそうです。普通はアセンブリ言語なんて学ばないので、このとき"理解できる人は土台となる知識が違うんだな"と学びました。

他のエピソードとして、マイコンの動作の仕組みがしりたくて質問をしたときに「カーネルを作れ」と言われました。ローパスフィルタの仕組みを聞いたときはフーリエ級数展開の講義が始まりました。流石にそこまでできないないよ(笑)と思って流した記憶があります。(今思い返してみたら申し訳ないです)これらの経験から、高度なことができる人は基礎知識も理解のアプローチも違うということを強く実感しました。

何が理解の違いを生んでいるか

この経験から考察してみると、理解の仕方の違いを生んでいるのはベースとなる基礎知識です。勉強初期は、はじめに学んだものの関連情報を調べていくため、何を元にして学んでいくかによって大きな理解の差が生まれているのではないかと思います。

はじめの年金問題の話で言うなら、理解できていない人は、子供の頃に「年金は定年退職後に給与の代わりにもらうものだ」と教わって育った人、理解できている人は、金融知識が豊富な親教えてもらった人、専門の学校などで教えてもらった人です。こうしたベースとなる知識の質によって、その後の見え方や、入ってくる情報に差が出ており、深い理解をしている人としていない人の差を生んでいるのかなと思います。世の中のできる人たちは、ベースとなる基礎知識が違うのです。ですので、一般的な勉強(ここでは本質的でない基礎知識の上に積み重ねること)では追いつくことができないのは当然なのかもしれません。おそらく、簡単にできている人は、本質的な理解を生みやすいベースがあるために簡単に感じており、そのことに気づいていないためにできない人の気持がわからないのだと思います。

教室で全員同じ説明を聞くことの課題

普段はあまり意識していないかもしれませんが、勉強とは自分の中にある知識と結びつける行為です。例えば、ピアノを習っていたことによってキーボードを習得する際に習得時間が短くなったりなどは想像しやすいと思います。そのため、人によって同じ経験でも、結びつきやすさ結びつきにくさといったものがあり、全員に同じ説明をすると、本質的な理解に結びつきやすい経験を重ねてきた人はどんどん上達し、結びつきやすい経験をしていないひとはなかなか上達しないことになっていると考えられます。

学校では皆で同じ講義を聞いているので、その説明が自分の経験に結びつきやすい説明だったらすぐに上達し、結びつきにくい説明だったらなかなか上達しないことになります。これが先生との相性につながっているのかと推測します。ですので、本来は説明する人の経験に合わせて説明の喩え方を変えないといけませんが、どうにもそれをしている人は多くないように見受けられます。

このベースとなっている知識がどう違うのか、初学者が経験者に聞くことは非常に難しいです。僕は進めているうちに偶然先輩から聞き出せたり、感覚でやっていたところがあるのでいまいち再現性のある方法がわかりません。少なくともそれができると多くの人の勉強がやりやすくなる可能性は高いです。

上達しやすい知識ベースは皆同じなのか

上達しやすい知識ベースは人によって異なります。例えば、自動車の運転をしたことがある人はそれをベースに他の乗り物の乗り方も簡単に理解できますが、自動車の運転をしたことがない人に、「乗用車の運転と同じだよ」と説明してもわからないでしょう。このように上達しやすい知識ベースは人によって異なるため、偶々上達しやすい知識に出会った人はどんどんできるようになりますが、そうでない人は苦労することになります。

独学が困難な理由は、自分にあった知識ベースに簡単に出会えないことがあります。誰かがその人のベースにしやすい知識を見極めて説明をしてくれれば良いですが、それもなかなか難しいのです。

初学者が感じる"理解の壁"の正体

説明をするときは、相手の知識レベルに合わせて簡略化して説明するので、初学者にわかりやすいからと言って、それをベースにして知識を構築してまうと危険です。途中で大きな壁に当たり、知識ベースを構築し直すまで苦労することになります。わかりやすさとは、知識への結びつけやすさですから、初心者にわかりやすくするためには本質的な理解から外れて説明せざるおえません。そのため、早く上達したい人は、"初学者にわかりやすい説明"を聞いてわかった気にならず、自分のレベルに合わせて徐々に本質的な説明を知ることでレベルアップしていく必要があります。

本質的な理解をするためにはどう勉強すればいいのか

自分がベースにしやすい知識に出会うためには、現状は数をこなすしかありません。参考書も偶々買った1冊を何度も繰り返すだけではなく、様々な情報に触れて基礎を作っていくことをおすすめします。一つの参考書だけを永遠と繰り返さず、様々な参考書の説明をみながら発見を積み重ねることで徐々に理解を深めていくことが大切です。

今後の発展への期待

世の中では、経験者が"このスクールに通った"、"この参考書を使った"、"この手順で学んだ"といった説明は多いですが、"これをベースに知識の構築をしていった"ということを話している人は殆どいません。それを説明してくれれば、「私も同じような経験を持っているから同じやり方でうまくいきやすい」といった勉強戦略の立てやすさに繋がります。ですので、先生方は「これと似たようなものだと思って勉強したよ」ということをもっと共有していただきたいです。

しかし、自分が何を元に知識を構築しているかなど、言語化するのは難しいと思いますので、それはテクノロジーで解決すればいいと思います。今後、テクノロジーが発達していくことによって一人ひとりの経験に合わせた解説が提供されるようになれば、人々の理解レベルは飛躍的に上がります。あなたは何を経験してきましたか?それは何年くらい続け、どれくらいの成果を生みましたか?といったアンケートに答えることで、その人に最適な解説が自動生成されるようなシステムができると、世の中の知識レベルは大きく変わることになると思います。



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