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タイマグラで考えた地域に根づく力

注:このnoteは、寝る直前や移動時間などに音声入力ソフトで記録したものを編集しどこまでちゃんとした文章が書けるか挑戦するシリーズの第1弾です
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●タイマグラと「タイマグラばあちゃん」
 念願かなって岩手県宮古市(旧川井村)のタイマグラを訪問することができました。タイマグラは、現在は4世帯しか住民のいない本当に小さな集落で、現状では4世帯すべてが移住してきた方々です。

 移住者の集落、と言うと、ここ5年や10年で都会からの移住者が一気に増えた地域をイメージされがちな昨今、タイマグラはそのさきがけと言うべきか、20~30年前つまり1990年から2000年頃の間に住み始めた方々とそこで生まれた子どもたちが暮らしています。
 遡ると実はタイマグラはそもそもが太平洋戦争後、開拓移民の方々が開墾し作り出した集落で、アイヌ語の地名です。30年近く前の時点ではタイマグラに長く暮らした方がまだご存命で、最後の住人であるおばあさんの姿を描いたドキュメンタリー作品「タイマグラばあちゃん」は2003年頃に上映されて岩手県内を中心に大きな話題となりました。当時、盛岡を拠点に記者をしていた私もその作品を撮った澄川監督に取材をしたこともあり、今でも印象に残っている作品です。
 「タイマグラばあちゃん」は、自分で育て自分で加工し自分で保存する、という自分の手でつくることのできるもので生きています。それを「丁寧な暮らし」と呼んだりしてあえて実践するのではなく、ばあちゃんにとってはそれが当たり前のこと。だからこそ、わたし自身が失った、というか、そもそも持っていない力強さとか知恵とかいろいろなものを教えてくれます。
※監督の澄川さんは元々はNHKのディレクター(カメラマンも?)をされていた方で、タイマグラばあちゃんを撮影していた当時からしばらくはご家族とともにタイマグラで暮らしていたそうです

●民宿「フィールドノート」
 前触れがだいぶ長くなりましたが、タイマグラにある民宿「フィールドノート」をご夫妻で経営されている山代さんと打ち合わせのためにお邪魔しました。
 打ち合わせの目的は今年の秋に実施する岩手県移住交流体験ツアー 第2弾(10/6-8を予定)で参加者の皆さんとタイマグラに行く予定で、その内容についての調整が主な目的でした。山代さんは成人した子どもさんがいると聞いてびっくりするほど華奢でチャーミングな方でしたが、その言葉のひとつひとつが25年間タイマグラというこの「陸の孤島」で暮らし続けてきたからこその経験に裏打ちされた説得力のあるものばかりでした。
 さらにすてきだと思うのは、都会の便利な生活を否定するでもなく、田舎の人付き合いや風習を礼賛するでもなく、そのどちらでもない距離の取り方や物の見方が絶妙なところです。
 

 そんな山代さんがなぜタイマグラに住み始めたのか……気になるところですが、これがまたいいんです!!
山代さんが友人の紹介で初めてタイマグラを訪ねたのは20代半ばのこと。帰り道、一緒に行った友人が「タイマグラはとても素敵なところだけれど、たまに来るところだね」というのを聞き、逆に自分は「暮らす場所」として考えようとしていることに気づかされたそうです。25歳にもならない女性が初めてこの陸の孤島(しつこい)に来て、ここに住むこと「アリ」と思うその感性には正直少し驚かされましたが、彼女はタイマグラに拠点を移すことを決断、その後、すでにタイマグラに住んでいたご主人と結婚しました。
 それから25年、3人の子供を育て、訪ねてくるゲストと交流しながらの生活は続いています。移住して2、3年は「自分で決めたことなのにどうしてこんなところに来ちゃったんだろう……」と思ってばかりだったと言う山代さん。でも、着実にひとつひとつ、自分でできることが増えていく時間とともに過ごしていたと話してくれました。

●ここで生きる覚悟
 「結局はここで生きていこうっていう覚悟なんですよね」と軽やかに笑う飄々とした様子がこれまたすてきです。地方移住が国の政策として進められている昨今、その反動もあって「関係人口」とか「定住しなくてもいいですよ」という流れになっているし、私たち岩手移住計画 もそのように伝えているし、「定住の覚悟ができてから移住して来い」などと言われた日にはそりゃあ誰でも逃げ出したいです。
 でも一方で、行政や地域から言われて決めるのではなくその人自身が「ここで生きていくんだ」と決意しそのためにひとつひとつ知恵や技術を身につけて生きていく姿は本当に魅力的だと思いました。


 そんな感慨にふけった翌日……。私の車は原因不明のパンクで走行できなくなり、やむなく自力で応急措置の薬剤を注入してタイヤ屋さんへ向かいました。これで田舎暮らしに必要な生活の知恵をまた一つ身に付けることができました。
 ひとところで暮らし続ける人、旅の人、どちらがうらやましいとかすごいとかではなく、タイマグラには魅力的な住民がいるから旅の人もやってくる、そんな単純なことに気づかせてもらった半日間でした。

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