【1989年100日旅】24日目。モスクワ
1989年4月29日。旅は24日目。母と妹が二人でバレエを見に行ったので、ホテルで父と弟と留守番する予定だったのだけれど、二人が早々に寝てしまった。
部屋には父が人に頼まれてソ連に持ち込んだ漫画『はだしのゲン』が全巻あった。このマンガ、日本で通っていた小学校のクラスで、大流行していた。担任の先生が何セットか買ってきていて学級文庫として置いていたのだけれど、給食を食べながらあれを読む男の子が多発するほどだった。私も、読むと必ず夜うなされるのに、やめられなかった。だから、(眠る父と弟はいるけど)ゲンと二人っきりになるわけにはいかなかった!ラララ ラララ
仕方がないので一人で外をふらつくことにした。80年代のソ連は治安が比較的良かったので、私たち子供は自由に出かけることを許されていた。この頃になるとソ連に来た当初は感じていた人々からの視線にも慣れて、気にしないようになった。
またこの頃になると、学校のロシア語の授業と日々の生活のおかげで言葉を知り始め、使うのが楽しくなった。ホテルのぶっきらぼうなコンシェルジュのお姉さんに、あえてトイレの場所を聞いてみたり、部屋番号を読み上げてみたり。クールなお姉さんの口端が少し緩んでいた。
ホテルのコンシェルジュのお姉さんは数人でローテーションで勤務していた。今考えると、彼女たちはかなりオシャレだった。当時欧米中で流行していたマレットヘアやふわっと盛った髪型をして、濃厚な香りを纏っていた。毎朝スクールバスに乗る前に挨拶をするのが楽しみだった。
そんな感じの24日目。旅は残り76日。
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