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【1989年100日旅】25日目。モスクワ

1989年4月30日。旅は25日目。日曜日、晴れ。日本人4家族でモスクワの森林公園「銀の森」でBBQをした。銀の森に行くのはこの日が2回目。1回目は寒い時期だったけれど、この日は春爛漫で、高くそびえる白樺の間から太陽の光が明るく注ぎ、絵本のような美しさだった。大人たちもくつろいでいた。

銀の森にはモスクワ川が流れていて、夏場になると多くの人が泳ぐらしい。さすがにこの時期に泳ぐ人はいなかったけれど、日光浴をしている人は大勢いた。私たち子供は少し川に足をつけて遊んだ。空気は水に入りたくなるほど暖かかったのに水の中はやはり冷たくて、きゃあきゃあはしゃいだ。

BBQは肉が柔らかく野菜も新鮮で、とてもおいしかった。ソ連で我が家は車を持っていなかったので、食料はベリオスカ(外貨ショップ)ではなくロシア人庶民が行くような近隣の店で買ったり、モスクワ大学の寮の食堂やその辺のレストランで食べたりしていたけれど、ベリオスカやパリやロンドンで食糧を調達する在露日本人の食べているものは、色も種類も質もまるで違っていた。

ただ、今思い返すともう一度食べたいのは、やけに天井が高く薄暗い電気のついたモスクワ大学の寮の食堂の、粗末な皿に盛られたソリャンカ(ピクルスの入ったトマトスープ)や蕎麦粥、酸っぱい黒パンにふちに黒胡椒がついたハムとディルを挟み込んだサンドイッチの方なのだ。

そんな感じの25日目。旅は残り75日。

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