単位、発明しました。
さやか星小学校 教務主任・第1学年担任 島岡次郎
算数科の「どちらが ながい」という単元では、初めて「長さ」という概念を学びました。とはいえ、「先生の箒はすごく長いね。」とか、「僕の鉛筆、短くなっちゃった。」のように、「長い」「短い」という言葉を子どもたちは日常的に使っているし、感覚的には理解しています。しかし、「長い」「短い」というのは相対的なもので、比較対象によって「長く」も「短く」もなるということを学ばなければなりません。そこで、この単元では、長さを比べる活動にたくさん取り組みました。
学んだ比較方法を3つです。比べるもの同士を並べて比べる「直接比較」。並べることが難しいものの長さをテープなどに写しとって比べる「間接比較」。そして、同じ長さのもののいくつ分で比べる、「任意単位による比較」です。任意単位による比較は、2年生では「cm」「mm」「m」といった長さの普遍単位の基礎になるのですが、1年生では「自分の指の長さのいくつ分」とか、「消しゴムのいくつ分」のように、「同じもののいくつ分」で比べます。この単元では、長さの違う鉛筆や紐をたくさん用意し、とにかくたくさん比較する練習をしました。直接比較では、端を揃えなければ正確な測定ができないことを伝えて何度も練習しました。間接比較では、テープに印をつけて長さを写しとる練習を繰り返しました。さやか星小学校では、「課題分析」という方法で学習内容をスキルレベルに落とし込み、何ができれば、この単元で学ぶべきことを学習できたかの評価基準を具体化し、出来るようになるまで練習します。もちろん、楽しく練習できるように活動を工夫します。今回は、スタンプラリー方式で行いましたが、みんな目の色を変えて取り組んでいました。
単元の後半、任意単位による比較を学んでいる時のことです。消しゴムのいくつ分で自分の机の長さを測っていたA男君が、「先生、昨日は消しゴム15個分だったのに、今日は20個分になってるんだけど。」と教えてくれました。その理由は明白です。彼は前日に家で消しゴムをたくさん使ったのでしょう。明らかに消しゴムが短くなっていたのです。というか、折れていました。「同じ長さのいくつ分」じゃなくなっているのだから、当然の結果です。こうした学びも、実際に取り組んでみないと分かりません。正解することだけが学習ではないのです。
間接比較の学習のB男君は、さらに楽しませてくれました。当時の会話を記憶を頼りに再現します。
B男君 「先生、わかったよ。こうすれば長さを比べられるよ。」
島岡 「ええっと、テープになんか書いてあるんだけど、これは何?」
B男君 「絵本の横の長さは15ポンポンで、縦の長さは22ポンポンだよ。」
島岡 「ん?ポンポン?ポンポンて、何?」
この質問には答えず、勝ち誇った顔で去っていきましたが、彼はテープに長さを写し取る際にメモリを書き、そこに数字を書いて長さを数値化していたのです。単位の発明です。メモリの幅が一定ではなく、「ポンポン」という名の謎の単位でしたが、長さを数値化するという素晴らしい発想をすることができました。これを横目で見ていた多くの子どもたちがB男君の真似をしました。その結果、謎の単位が量産されたことは言うまでもありません。
この単元では、比較方法によって活動するテーブルを分けました。直接比較を理解した子どもは、間接比較へ。間接比較も理解できたら、自分の指の長さや消しゴムを使って任意単位による測定にと、ノンストップで進めるようにしました。逆に、1時間では理解が難しかった児童は、分かるまで繰り返し取り組めるようにしました。落ちこぼれも、浮きこぼれも作らない。そんな授業ができるように、日々工夫しています。