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海外大学院受験は、ほとんど恋愛と一緒だった

昨日、UCLA教育大学院から頂いていたオファーをお断りするメールを送った。正直、想像していた以上に辛くて、なかなか送信ボタンが押せず、しばらくボーッとしたり、クッションに顔を押し付けて大声出したり、夫のりょうちゃんに、「間違ってないよね?大丈夫だよね?」って何度もきいたりして。胸がぎゅううってなるのを抑えながら、送信ボタンを押した。

UCLAで私のアドバイザーを務めてくれるはずだった教授からすぐに返信があり、

We are disappointed you won’t be joining us, Sayaka, but wishing you the best in your graduate studies. (さやか、うちに来ないのはとっても残念だけど、あなたの大学院での活躍を願っているわね)

と来て、泣いた。

それで思った。この感覚、なにかに似ているな、と。恋愛だ。

UCLAは、私を好きだと言ってくれた数少ない相手だった。しかもとってもイケてるからとんでもなくモテる相手だった。そんな中、わたしを選んでくれたのだ。そこにいったら絶対楽しかったし、素晴らしい出会いがあったし、学びたいことが学べることは、わかっていた。それでもその想いを、受け入れられなかった。それが本当に辛くて申し訳なくて、かなしかった。高校生のとき、モテる友達がよく言ってた「振られるより振るほうが辛いんだよねえ」という言葉を、なぜか20年ぶりくらいに思い出した。

海外大学院の受験を経験してみて思うのは、日本の大学受験のそれとは全く違うプロセスのなかで、そこに伴う感情の揺れ動きが、もうそれはもう、激しかった。え、このプログラムすっごいいいかも・・私が学びたいことが学べるし、私の興味とドンかぶりしているテーマで論文書いてる教授がいる・・それでその教授の本とか読んでみたり、動画出てないかなあと調べてみたりしながらそのプログラムのことを知れば知るほど、好きになる。ここで学びたい!!!と興奮してくる。さらに、現役生とかに話を聞いた日には、テンションがもっとぶち上がる。「彼とお付き合いすると、めっちゃ楽しいし、超学びになるよ!」と、今付き合っている彼女におすすめされるようなものなのだ(ちょっとこれは恋愛のシチュエーションでは普通起きないね)。

出願書類はオンラインのプラットフォームに登録をしてそこから提出するのだが、締切日がそれぞれ異なる。その締切り日の直前は、そのプログラムに送るラブレターであるエッセイを何度も書き直したり、プログラムについて調べ直したりする。つまり、それぞれの締切日の前は、毎回その相手のことばっかり考えて、大好きになってしまう。だから、わたしの志望度は、週替りで変遷していたと言っていい。私が恋した7つの教育大学院たちは、以下である(締切日早い順)。

①UCLA Graduate School of Education / Human Development & Psychology program(2021.12.1〆切)
②UC Berkeley Graduate School of Education / Education MA(2021.12.1〆切)
③Master's Program in Learning and Organizational Change at Northwestern University(2021.12.1〆切)
④Harvard Graduate School of Education / Human Development and Education program (2022.1.5〆切)
⑤Stanford Graduate School of Education/ Learning Design and Technology program(2022.1.7〆切)
⑥Teachers College, Columbia University / Cognitive Science in Education program(2022.1.15〆切)
⑦University of Pennsylvania Graduate School of Education / Learning Sciences and Technologies program(2022.2.15〆切)

わたしは、それぞれにちゃんと恋をした。でも、両思いになれたのは、コロンビア教育大学院とUCLA教育大学院だった。ずっとNo, thank youが続いていたなかでのオファーは、本当に本当に、泣けるほど嬉しかった。正直、全部に振られる覚悟で身構えていた。

受験が終わって、今年受験した方たちと話す機会があったのだけど、この恋多き乙女的な受験を経験したのは、私だけに限ったことではないようだ。「その感覚、わかります!毎回かなり好きになりますよね」と、30代男性も言っていた。毎回、「この人が運命の人かも・・」とやはり思ってしまうのだ。「出願する」ということは、めちゃくちゃ丁寧に理由を添えて、告白するようなものなのだ。ちゃんと好きになるのは、当たり前なんだ。

このように、海外大学受験は「フィット感」がすべてだ。いくらTOEFLの点数が高かろうが、超高学歴で大企業に勤めていようが、志望動機やこれまでやってきたことがそのプログラムで学べることや在籍している教授たちが行っている研究内容などにしっかりつながっていることを相手にアピールして納得してもらえないと、OKはもらえない。また、大学院側にも「この人すき!」と強く思ってもらえないと、受け入れてはもらえないのだ。

UCLAの教育大学院は地域の学校との繋がりが強く、「地域に開かれた学校」を実践する面白い取り組みをしている。掲げるヴィジョンもさることながら、仕組みも実に面白い。地域のステークホルダーや保護者たちが、一緒に学校の予算編成を決めたりするらしい。だから、学校と地域と家庭が同じヴィジョンを持って三位一体となって、子どもたちの学習環境を共に作っていくことが可能になる。また、研究者と現場の先生たちが密に協働し、細かくデータをとったり観察したりして、子どもたちの学習環境がよりよくなるように日々研究している。そんな素晴らしい環境で、実際の学習例を考察しながら「多様なスキーマを持ち、多様な価値観を持っている実に多様な学習者たちを、いかに教室でmotivateするか」というテーマで、教育におけるdiversityを長年研究してきたSandra Graham教授のもとで学びたかった。西海岸の気候のせいか、穏やかで面倒見がきっととってもいいんだろうな、という、教授やスタッフさんたちの気質が、メールのやり取りからもにじみ出ていた。このプログラムの博士課程で学んでいる現役生のアンナさんは、見知らぬ私からの突然の連絡に本当に親切に対応してくださり、多忙な中私のエッセイにアドバイスまでくれた。ほんとにほんとに大好きだった、UCLAのHuman Development & Psychology program。

こんな素敵なオファーをお断りして、私はコロンビア教育大学院に行くことを決めた。シンプルに、これをも超える魅力が、コロンビアにはあると確信したからだ。世界中から情熱を持った教育者たちが集まるTeachers College, Columbia Universityは、世界最大の教育大学院だ。同じ「教育」といっても、81個ものプログラムがある。ここでは、UCLAより1年長く学ぶことができる上、より幅広く多様な視点で教育について学び、考える機会を得ることができる。ニューヨークという街の特性も相まって、出会う人の桁も多様性も、違ってくるだろう。さらに、私が進学するCogtive Science in Educationのプログラムには、学習者のモチベーションについて興味深い研究をされているXiaodong D Lin教授や、教室でどんな学習環境や学習機会をつくれば生徒はよりよく学ぶのかについての研究を行っているDeanna Kuhn教授など、ほかにも素晴らしい教授がたくさん在籍しており、授業選びが大変そうだ。授業のシラバスを見ているだけでもうワクワクする。私は、ほかにもまだたくさんあるいろんな理由を全部考慮して、Teachers Collegeを選んだ。

こうして、恋多き私の大学院受験は、幕を閉じた。Teachers CollegeとNewYorkという街で、私は必ずとんでもなく成長してみせる。この決断を、絶対後悔しないように。どれだけ辛くても、全力で努力を継続すると、昨日改めて誓った。

最後に、これから受験をしたいと思っている方のために、少しだけ。もし、時間を巻き戻せるならば、もっと多くの時間をかけて、相手を知る努力をすると思う。TOEFL足切り100点をもっと早くクリアしちゃえるようにもっと勉強頑張って、もっと早くにスクールリサーチを始めて、もっとたくさん教授の論文を読み漁ったと思う。そしてさらにもっと前に戻れるのならば、自分磨きももっとしておきたかった。自分でオーナーシップを持って、もっといろんなことに挑戦しておきたかった。挑戦したはいいけどなかなかうまくいかなくて、自分の足りない所を痛感せざるを得ない苦い経験を、もっとしておくんだった。いろんな経験をしていろんな価値観に触れていっぱい考えて、そしたらもっと自信を持って、説得力のあるラブレターを書けたと思う。

これから海外の大学や大学院を目指したい!と思っている方、ぜひ素敵な恋をして、理想の進学先を見つけてください。そのための準備は、多ければ多いほどいいし、早ければ早いほどいい、と思います。

色々書いたけど、わたしは理想の、最高の進学先を決められて、本当に幸せです。この運命に、全力でしがみついて、がむしゃらに頑張ってきたいと思います!!!




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