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人生最後の挑戦! 推し、母。


「わたし、YouTuberになったよ!」

あるとき、68歳の母からLINEが届いた。動画を観ると、確かに母は料理をするYouTuberになっていた。

母は、iPadもパソコンも持っていないので、撮影はスマホ一台でしている。

「びっくりしたー。どうしてYouTuber?」

「わたしより年上の90歳でも、YouTuberになれる時代だよ! わたしにも、できると思って」

よくよくヒアリングしてみると、弟が母にYouTuberになることを勧めていた。最初は、ピンとこなくて、「ふーん……YouTuberかあ」特に気にとめていなかった。

あるとき、母からLINEが届いた。料理動画をアップしたのだけど、「再生数が伸びなくてねえ」そんな悩みだった。

なにか力になれないだろうかと、考えを巡らす。

「カセットコンロで料理をしている様子を映してみたら? どうして、ガスを契約せずカセットコンロで調理するに至ったのかも理由を添えてみて!」そうアドバイスをすると、魂を込めた1本の動画が出来上がった。

できあがったお試し動画を観てみると、肝心のカセットコンロの部分が映ってない。どうして? わたしはすかさず、LINEでカセットコンロを映した方がいいよ、とアドバイスした。兄と弟も同じ意見だったので、母は更に動画を撮影し、最初に撮影した動画と繋ぎ合わせて一本の動画をつくった。

その動画がみるみるうちに、大ヒット! 86万回再生され、収益化にも成功した。

母は、「ウソ! 信じられないーー!」と大興奮だった。初めてGoogleからお金が振り込まれた通帳を見たとき、ようやくバズりを実感したらしい。

Googleから振り込まれたお金を元手に、母は、わたしが住む東京へ会いに来てくれた。

ちょうどそのとき、夫が福井へ単身赴任になり、引っ越しの手伝いと、わたしは夜10時まで仕事をしていたので、母に東京に来てもらえて、命がつながったように安心した。母の助けなしでは、わたしは倒れていただろう。なんせ、わたしは2度入退院した実績があるのだから(笑)。

母は、現在もYouTuberとして活躍している。収益化に成功したと言っても、大々的に成功しているわけではない。現在、月々の収益はランチ代くらいに落ち着いている。

現実は甘くない。

一度、大ヒット動画を出せたからといっても、1回きりのこと。自分に着目し続けてもらえることは簡単じゃない。

動画の世界はシビアだ。
現在は数百回再生にとどまっている。

ずっと料理動画を出し続けていた母。マンネリぎみだったあるとき、こんなアドバイスをしてみた。「47年連れ添った婚礼タンスを処分とき、それを動画を出してみたら?」と。

婚礼タンス処分の動画は、久しぶりに800回再生超え、プチヒットになった。


大ヒットでもなく、ヒットでもなく、プチヒット。


これはどう判断して良いのか、あぐねいているようだった。ただこの動画をきっかけに、「発信を料理にこだわらなくていい」と肩の力がぬけたみたい。そして、これからは料理をつくる動画だけじゃなくて、終活やシニアのライフスタイル動画を出してみようかなと意欲が生まれてきた。

わたしがこんなにも、母のことを応援しているのは、本音を言えば再び東京に来てほしいからだ。また動画をヒットさせて、その資金を元手に東京へ来てほしい。そのために、わたしはモノも時間も母に貢ぎ続けている。

貢いだモノは、撮影で映るケトル、ふきん、ランチョンマット、タオル、ヘアゴム、ブラウス、エプロン、オリーブオイル、食器、ペーパーナプキン、スポンジ、ドレッシング入れ、マリメッコの鍋つかみ、バッラリーニのフライパン。

貢いだ時間は、動画のアイディア出し、サムネイルの作成、動画をアップした後のフィードバックなど。

弟は包丁とミルサーをプレゼントしたし、兄夫婦は撮影で映るキッチンの壁紙リフォーム代をプレゼントした。

母には、「人生の最後にスポットライトが当たる経験をしてほしい」と家族みんなで応援している。ずっと家族を支えるために日陰的な生きてきた人なので、最後に輝ける一幕をつくってほしい、それも自分の力で。そして、田舎町に住むシニアのスーパーエネルギーを世界へ届けてほしい。

それでも、

何かを生み出すのは苦しい。つくり続けることが大変なことをわたしは知っている。そんなときは、休んだっていい。母は、今回2ヶ月の休みをとった。それは、モノづくりをするために必要な休息だったと思う。

もうすぐ70歳になる母。不思議と初期の動画より、今のほうが若く見える。人に見られることを意識しているから?

68歳のときの母
69歳(現在)の母


どうして観てほしい?

一億総発信時代のいま、発信する人が増えている。田んぼに囲まれた田舎町に住む69歳の動画を観るなんて、退屈だろう。

だけど、築年数が古いながらも、隅々まで整えられたキッチンは見ていて気持ちが良いし、「まるで1つのお部屋みたい!」とキッチンの収納動画は好評だ。


少しでも興味を持ってもらえたら〜なんて、生ぬるいことは言わない。

単刀直入に伝えると、

「良子のキッチンTIME(りょうこのきっちんたいむ)」観てくださーーい!!(笑)。



#エッセイ部門
#エッセイ部門2024

【6月2日追記】
「婚礼タンス処分」の動画がおかげさまで伸びました。

  • 公開直後→800回再生

  • 2週間後→1300回再生

毎日再生数が微増し、ロングランヒットとなりました。ひとえにみなさまのお陰です。ありがとうございます。

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