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永遠に 第6話「事件」

もう、同じ痛みに苦しめられたくない。

そう思ったから、十分に注意をしていた。
それでも足りなかったのだろうか?
それとも、注意なんて必要なかった?

傷つけられる事を前提にしてしまう、私の悪い癖が悪いことを呼ぶのだと、そういえばカナ兄によく言われる。

そうなのだろうか?
でも、幾度となく傷ついてきた心の傷は癒えずに溜まる一方で。だから、忘れられるはずもなく、どうしても考えはネガティブになる。

結局私は、佑貴さんとお付き合いをする事にした。

2度目のベッドを共にしたあの日
朝まで腕の中から離してくれなかった彼が、次に私に求めたことは「連絡先を教える事」だった。

付き合う事にしたと言っても、はっきりとそう言われたわけじゃない。

「俺のものになれ」

なんて言われもしたけど。どうとでもとれる言い方だし。
実際には、お付き合いをするという関係のものではないのかもしれない。
また、彼女だなんて思っていなかった。と、そう言われるかもしれない。

古傷が痛む。心の傷はいつまでも痛む。
癒える事のない痛みをお付き合いが始まってからもずっと感じていた。

あの日以来、彼とは会っていない。

でも、佑貴さんは、毎日のようにメッセージをくれた。
「おはよう」から始まって。
「おやすみ」まで続く。
本人が眠るタイミングでの連絡ではなく、私が眠るタイミングで挨拶をするのがその日最後の連絡。

佑貴さんはどうもまめなタイプらしかった。

ただ。。。いつ、寝ているのか。いつ、食べているのか。いつ、帰宅しているのか。
それが気になるぐらいに、彼は忙しい人なのだとメッセージのやり取りをしていて感じた。

だから、返信は要らないという事も伝えてメッセージをする事もあるのだけれど。
律儀に遅くなっても必ず返事をくれた。

あの日から始まったこれまでにない日常
心の中はまだ慎重モード。
それでも、久々の恋愛に心が少し浮かれていたのだとは思う。

そんな時に限って事件って起きるんだ。

ある日、出社すると何故かいろんな人の視線を感じた。
普段は、空気のような存在としてしか扱われない私が。
その日は何故か注目の的。
それでいて、コソコソとこちらを見ながら話すのだ。

課に着いても先輩方からの冷たい視線を感じる。

なんなのだろうか?
先輩方からの冷たい視線はまぁ、いつもの事なんだけど・・・

とはいえ、そんなことを気にしている暇はないほど、仕事は山積みだから。
そして、この仕事は課にこもりっきりになる。
先輩方は程なくしていつも通りに戻ったし。
そうなると、特に気にすることなく仕事に没頭し、残業もしたためにほかの社員に会う事はなかったため、朝からのことなんてすっかり忘れていた。

だが、その日は帰りにも異変が待っていた。

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