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永遠に 第4話「彼の話」

暖かな部屋にホッと息を吐く。

「さぁ、どうぞ。」

佑貴さんはにこやかに、私をソファーへと促した。

結局、ついてきてしまった。
この弱さが、これまでの男運の悪さも招いたのだろう。
そうはいっても、この弱さもまた私が持ってうまれたものかもしれない。
暖かさにホッとしたのもつかの間、今度はため息を吐く。

部屋に着くや否や、佑貴さんは部屋に備えられた電話を使ってどこかへ電話。それが終われば、自身のスマホを手にして、今度は違う人へと連絡をしていた。

社長ってこんなに忙しいんだなぁ。ソファーに座り、ぼんやりと彼を見つめ考えていた。

ついてきてしまったものは仕方がない。
たとえそういう雰囲気になっても、私が嫌がることはこの人はしないだろう。そうは思うものの、なんとなく寛げなくて、上着も脱がずにソファーに座ってしまった。

窓の外へと目線を動かせば、まだ深々と降り積もる雪。
ほぼ30年という年月を生きてきて、記憶のある限りではこんなに降った雪を見たのは初めてかもしれない。
スマホを手に持ち天気予報を確認する。
この天気は、明日にも続きそうな雰囲気だった。

「これで邪魔は入らない。」

佑貴さんは、スマホを懐にしまいながら私の隣へと腰かけようとした。
だけど、そこでタイミングが良いのか悪いのか、誰かの訪問を知らせる部屋のベルが鳴る。

「そうそう。頼んでおいたのでした。」

彼はすぐに対応に向かい、ワゴンを引いたホテルスタッフと共に部屋へと戻ってきた。

「まずは、温まりましょう。」

ルームサービスを頼んでくれていたらしい。
まず、運ばれてきたのは温かい紅茶。そして、簡単なお茶請け。

「食事は一緒に頼みましょうね。あなたの好みも知りたいし。」

スタッフが下がった後に、ルームサービスの案内を持って私に差し出した。
聞きなれないメニュー名に、驚く料金の高さ。

「あの、私・・・こういうところは慣れてなくて・・・」

なんでもどうぞと言われても、選べそうになくて佑貴さんにメニューを返した。
そんな私に少し残念そうな顔を見せたけど、それならば適当に頼みますねとスマートに対応してくれるのはさすがだなと思う。

先にいただいていた紅茶に口をつけながら、佑貴さんが隣に座りニコニコとこちらを見てくるのがなんとも心地が悪い。

「まずは、あなたの聞きたいことを聞いてください。それが済まないと、落ち着かないでしょう?」

上着も脱げずに、ちょっとおびえて心地悪くしている私に、彼は気を使ってくれたのだと思う。
だから、素直に聞くことにした。

「どうしてこんなに私に構うのですか?」

一晩の思い出で終わるはずだった彼との出会い。
なのに、佑貴さんは私と出会えば必要に声をかけてくる。
だからずっと聞きたかった。その理由がなんなのか。

彼の答えは私にとって驚くものだった。

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