永遠に 第8話「最低な私」
カナ兄は、佑貴さんと話した内容は教えてくれなかった。
愛梨は、愛梨の目で見て、耳で聞いて、感じたことを信じればいい。
カナ兄が言ってくれた言葉。
ただ、佑貴さんの立場上根も葉もない噂は立ちやすいから、周りに振り回されないようにと忠告してくれた。
カナ兄も佑貴さんの良くない噂をたくさん聞いていたのだと言う。だから、そこから作られた先入観があって、彼の印象はあまり良くなかったらしい。
私が佑貴さんと関わることになるのは、正直嫌だったと。それだけを教えてくれた。
たった1度の会話ですべての誤解が消えるわけではないと思う。
でも、私がカナ兄の尊敬するところは、人を信じようとするところだ。
とても話しやすい人だったよ。そういう雰囲気を作ってくれたんだと思うけど。でも、仕事ではこうはいかないですよ!って釘は刺されたけどね。
って、笑って話してくれた。
カナ兄が私に、自分と向き合う機会をくれたから。
ちゃんと自分の気持ちを大事にしようと決めた。
流されるのではなく、自分の気持ちを自分がまず聞くことだ。
カナ兄と話した次の日、佑貴さんと待ち合わせをした。
待ち合わせ場所は、2人が出会った場所。
今日は、佑貴さんもお休みだと言っていた。
待ち合わせ時間より少し早く着いたのだけど、佑貴さんはすでに待っていてくれて。
「どうぞ、乗ってください。」
車の助手席の扉を開けてくれる。
「運転するんですね!」
「ええ。いつもは移動時間も仕事に当てるために、運転手がいてくれるのですけど。今日はプライベートですから。」
運転席に乗った彼は、ウィンカーを出して車を走らせた。
時間でいえばまだ午前中。
どこかでランチをいただきながら話をしましょうという佑貴さん。
こういう時、上手にエスコートしてくれるのがこれまでお付き合いしてきた人たちとは違うところ。
走り出した車の進行方向を見つめながら、どこに行くのかと聞いてみたけれど、それは秘密だと言うから・・・それ以上は聞かなかった。
正直に言えば、ゆっくりと話せる場所ならどこでもよかったから。
でも、程よく緊張していた私は沈黙も怖くて話す内容が欲しかった。
「落ち着かないみたいですね。」
「はい。」
「僕も同じです。でも、せっかく会えたのだから楽しみたいです。」
「楽しむ?」
「ええ。僕はデートのつもりで出てきました。お付き合いを初めての初デートです。」
笑顔で本当に楽しそうに、そう言い切った佑貴さん。
たったこれだけの会話でも、私にとってはかなりの情報量だ。
ちゃんとお付き合いしていることになっているんだなとか。
初デートを楽しみにしてくれる人なんだなとか。
まだ、知らない事がいっぱいなんだ。お互いに。
それを知る一歩に今日はなるのだろうか。
それとも・・・
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