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【太陽の城 月の砦】後追い実況&現場レポ4~6回


中村小夜の実況レポ、続きです!
ヘッダーの絵はみかさのさん@kasago_yuuです。
4回~6回のキャストの皆さんはこちら。

アーミナ(華優希さん) 
ユーセフ(上口耕平さん) 
マフムード(横田栄司さん) 
シリーン(彩吹真央さん)
シールクーフ(酒向芳さん) 
フェイルーズ(桜咲彩花さん)
ファーディル(藤岡正明さん)
ザイド(横山賀三さん)
シャーワル(高松潤さん)
カラクーシュ(山賀教弘さん)

第4回 ミシュミシュの森

後追い実況④

今日は星クラ(星占い・占星術クラスター)さん向けに、ダマスカスの地図のお話を少し。

城壁に囲まれた町には7つの門があり、それぞれ太陽と月と5つの惑星に割り振られています。というか、ローマ時代からある門なので、ローマ神話の神々にちなんで命名されており、それが象徴的に7つの星と対応しているというわけです。門の名前はイスラーム征服後にアラビア語に変更されています。現在は街全体が世界遺産です。

ダマスカス攻囲戦は1154年春。もちろん完全に無血開城ではなく、武人同士の戦いはありますが市街戦(って現代的な用語ぽいけど)はなく、民にはほとんど犠牲を出さずに門が開かれました。

ダマスカスの東の郊外には「グータの森」があり、春にはミシュミシュ(あんず)の花が咲き乱れます。パッと見は桜か桃にそっくり。散り際には「桜吹雪」ならぬ「ミシュミシュ吹雪」になります。

★ミシュミシュの画像はこちらをご参考に ↓

……とか説明してるけど、誰も聞いてませんよね?(みんな!言いたいことがあったらあたしが全部受け止めるからね!!)
『昼も夜も彷徨え』で結婚したい男ナンバーワンに輝いた男、ファーディル書記官、新キャストいかがでしたか? 
去年のオーディオドラマからのファンの方、原作からのファンの方はそれぞれイメージがあるので、シン・ファーディル様、どう受け取られるかドキドキしました。藤岡正明さんは自分のそういう重要性を意識せず、飄々と演じていらっしゃいますが……今回はいきなりエジプト方言からのスタートなので、べらんめえ調全開です。

エジプト方言ってアラビア語の中でもクセが強いんですが、宮廷などで公式な言葉を操るときは正則アラビア語を使うので、書記官のファーディルはどちらも自在に操れる弁舌とペンの持主。この時代の書記官はあらゆる外交文書を扱うので、外務省も文科省も兼ねている最重要ポストです。

この時代のエジプトはファーティマ朝。シーア派だったので、スンニー派のシリアのザンギー朝とは相容れない政体です。ただし、ファーディル個人はスンニー派で、シーア派王朝の中では異端者扱いされながら、ペンだけを武器に、30歳前後の若さでトップまでのしあがった俊才です。

カラクーシュは本来はシールクーフ配下のマムルーク(白人奴隷)なのですが、今回はすみません、エジプト王朝の行政官として登場してもらいました(大人の事情です(^_^;。

エジプト遠征を命じられたユーセフ君が「嫌です!」「エジプト全土をくれてやると言われても行きたくありません」とダダをこねたのは当時の史料に書き残されてます_φ(・_・。800年たってもダダコネが語り継がれる男ユーセフ……で次回に続きます。

現場レポこぼれ話④

4回のダマスカス攻囲戦は現場もなかなか盛り上がりました。それぞれの役者さんたちのここぞ!な掛け合い、迫力ありましたね! 実写だとこれを一発撮りするのは無理ですから、オーディオドラマならではの臨場感です。

さて、4回から初登場の藤岡正明さんも到着されました。スタジオにはそれぞれの役者さんのお名前と役名が書かれた席が用意してあり、皆さんそこで出番を待つのですが、藤岡さんは自由人で、行方不明になったかと思うと、ふらりとスタジオに現れてバシッと決めて、またどこかへ去ってゆく……。超マイペースで飄々としつつ、やるときゃやるさのリアル・ファーディルっぽいな~と思ってしまいました。
ユーセフとファーディルは、後に堅い絆で結ばれる主従関係になりますが、上口さんと藤岡さんもリアルの仲良しさんで共演も多く、上口さんはX(ツイッター)で「まさくんとの会話はいつも安心します」と書かれていましたね。藤岡さんは上口さんより3つ年上で、ファーディルとユーセフの年齢差そのままです。

しかし、改めて聞くと、華優希さん・上口耕平さんの声から少女・少年ぽさがすっかり抜けてますね……時の経過を声だけで表現されているのは本当にすごいです! 現場で連続して聴いているとそれほど変化がわからないのですが、ラジオで聴くと明らかに成長していて、改めてプロの役者さんてすごいなーと思います。

第5回 急転

イメージイラスト/みかさのさん@kasago_yuu

後追い実況⑤

なんか気まずい週マタギでしたか? ごめんなさい……(;^_^
エジプト勢がどどどっと増えたから ↑ 上で整理しときますねー。

あ、グータの森で、ユーセフとアーミナは抱き合ってないですからね! 立ち去ろうとするユーセフの袖をアーミナちゃんがつまんで、後ろから抱きついただけ。だけっていっても男はつらい……ユーセフ君ごめんな……。

史実のエジプト遠征は、実際は3度に渡り、この間に6年経過していますが、今回はそれをギュッと1回に凝縮しています。
シリアの援軍のおかげで宰相に返り咲いたシャーワルは、今度はエルサレムに援軍を依頼して、シリアと相打ちにさせるという暴挙に出ます。戦況は泥沼となり(この後に「昼も夜も彷徨え」で出てくるフスタート炎上があり)、ようやく休戦に持ち込まれます。数々の裏切り行為をはたらいたシャーワルには処刑の命が下されます。

ファーディルは官庁のすべてを仕切る書記官ですから、シリア遠征軍のひとりであるユーセフのことは「叔父の七光りの坊や」として認識していましたが、実際に言葉を交わすのはこの処刑シーンが初めて。「エジプトの武将たちは身内のしがらみがあって手が出しにくい。誰が宰相を処刑する? え? こいつ誰だったっけ? ええと…ユーセフ殿? あ、やってくれんの? 助かるわー。だったら頼むぜ!」とファーディルが思ったかどうかわかりませんが、実際にユーセフが処刑したという記録が残っています。

その後、援軍を出したシリアの顔を立てるために、エジプトはシリアの将軍シールクーフを宰相の位置につけたのですが、わずか2ヶ月でシールクーフは急死。しかも宴の場で食べ過ぎによる窒息死。こんなご都合主義な急展開あるー? とお思いでしょうが… …
史・実・な・ん・で・す!!

今日のユーセフ君は、グータの森ではアーミナに背を向けていたし、最後のファーディルとの対話も、シールクーフの遺体にとりすがって泣いていたところに、急に入ってこられたので振り返れず。上口耕平さんはずっと背中ごしの演技をされてたんです。

ともあれ最初の一週間、お聴きくださってありがとうございました。

現場レポこぼれ話⑤

お待たせしました! 5回になって、ようやく横山賀三さんの登場です。さすが賀三さん、今どきの若者らしい、力の抜けたリアルな感じを出してくださって。他のベテラン勢の皆さんがドラマチックな演技をされている中で、賀三さんおひとりが「令和の若者」ぽくて、それが逆に物語を重層的に、リアルにしてくれたように思います。
賀三さんが特にすごいなあと思うのは、「え?」とか「うわ」とか「あの」みたいなちょっとした相槌がすごくさりげないところ。さすが場数を踏んでいらっしゃるなあ~と。アーミナ様にタメ口きけるのは彼だけです(^^♪

さて、憎々しい演技が小気味いいほどすがすがしいシャーワル役は高松潤さん。シャーワルって世界史では出てこない人物ですが、サラディン(アイユーブ朝)クラスタにとっては、絶対に欠かせない重要人物! さらに高松さんは多数の兼ね役も一気に引き受けてくださってまして、十字軍の騎士(2回)、医者(6回)、捕縛人(7回)、シリアの将軍(7回・8回)、アサシン(9回)など、まさに変幻自在なご活躍。贅沢すぎました! ご自身も舞台の演出をされていますから、ドラマ全体を俯瞰で見た上で演じ分けてくださっているようで、本当にありがたかったのです。

第6回 裏切り、そして死

イメージイラスト/みかさのさん@kasago_yuu

後追い実況⑥

後半スタートです。 はじめましてさんもいるかもなので、改めて相関図マップ置いときますね。

ようやくユーセフ君にも尊称が与えられたので、本名と呼び名一覧を置いときます。本名と別にある程度の年齢、役職、地位についた人間は尊称(ラカブ)が与えられ、普段はこちらで呼びます。ファーディルだけ変則的で、物語上では役職名の一部を取り出しています。マフムードを名前で呼ぶのはアーミナとユーセフだけです。

アレッポ〜ダマスカスは東京〜名古屋の感覚でわりと気軽に行けますが、ダマスカス〜エジプトのカイロは青森〜京都ぐらい……遠いな!
googleさんは24時間休まず歩いて約9日だと言っています。地中海の海岸線を行くのが最短距離ですが、このルートは当時も、そして今も、自由に通行することができません。

たもとを分かった史実のマフムードとユーセフは幾度か戦場でニアミスしそうになりますが、ユーセフは慎重に避け続けていたようです。二人が実際に邂逅したかどうかは神のみぞ知るですが、可能性としてヨルダンのシャウバク城塞をイメージで置いときますね。あまりに砂漠の辺境にあるので私が宿まで帰り着けなかった城塞です。

というわけで、今日はシンボル的な皆既日食の回でした。マフムードの横田さんはまだまだ出番ありますからご期待くださいね〜!

現場レポこぼれ話⑥

さて、このあたりからカラクーシュの山賀教弘さんが、突然ハジケ出しました。「もう真夜中ですよ~」がすごく眠そう(笑)。史実のカラクーシュは、奴隷から行政官にまで出世した人物で、いろいろマヌケな失政をしたお役人として当時の史料でディスられています。お調子もので、空気を読まず、後にサラディンに抜擢されて図に乗ってるとこもあり、トリックスター的な愛すべきキャラ。そういう背景を山賀さんに特にお話したわけではありませんが、ちょっとしたセリフから人物像を感じとってくださったのか、時々調子に乗り過ぎて声が裏返っちゃうおチャメなカラクーシュさんが爆誕しました。

戦場で遠くに相手の姿を見たかつての主従が、お互いに届かないモノローグを交わすというシーンは、舞台や映像なら手法としてありますが、オーディオドラマでやるのはけっこうチャレンジングです。このシーンは、決して感情を表にほとばしらせない上口耕平さんと、何も言わずともすべてを受けとめた横田栄司さんの掛け合いが素晴らしく、それをつなぐ彩吹真央さんの語りも音楽もすべてが一体化して、忘れがたいシーンになりました。

マフムードの臨終シーンでは、横田栄司さんと華優希さんのじっくりした対話。第1回の無邪気なやりとりがすでに遠い時の彼方に感じます。
華さん、上口さん、横田さんという主役クラスの3人が、わかりやすく「成長⇒老け役」を演じるのではなく、いつ変化したともわからず、「気づけば時間と役割を背負ってそれぞれに違う道を行っていた」というふうに、運命の奔流を歩む人物たちを鮮やかに生かしてくださいました。あえて年代を出さない歴史物語で「時の重み」や「過ぎ去った日々」を感じていただけたとしたら、このお三方を始めとする役者の皆さまのおかげです。

リンク集

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役者の皆さんのキャストボイスもあります。
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