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叫び

夏の日の朝
洗濯ものを干していると
じりじりとした暑さとともに
セミの鳴き声が聞こえてくる

子どもの頃の夏休み
祖母の家の庭を思い出す
たくさんの木々にアブラゼミがとまっている光景
気負うものはなく、ただ夏を感じていた
ただ、その目の前にあるものを
好きとか嫌いとかではなく
「ああ、夏だ」という感じていた

大人になった私はどうだろう
いつも何かに追われ、息つく間すら惜しんで
その場その場のタスクを片付けている

コントロールできないほどの仕事
思いもよらない行動をしだす子供たち
言葉にうまくできない期限付きの論文

私は確かにここにいるのに
私の意志はここにはない
気づいたら奪われていく私の時間

声にならない思い
このモヤモヤ
立ち止まった時に出てくるつぶやきは
「たすけて」
それが本心なんだろうか

誰に求めている助けかはわからない
ただ誰かに助けを求めている

夏の日に聞いたセミの声は
たった8日間しか地上で生きられない
セミの叫びなのかもしれない

叫んでも、もがいても
救う術はない
ただ限りある命を生きているからこそ
叫んで、もがいている
セミも、私も

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