記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【銀英伝】外伝「汚名」は愛の物語

名作は何度も読み返してしまいます、ゆーです。

いきなりですが皆さんは、【銀河英雄伝説(銀英伝)】をご存じですか?
現在は「銀河英雄伝説Die Neue These(ノイエ銀英伝)」が、日本テレビアニメ枠「AnichU」で放送しており、幅広い層に支持されている作品です。

何を隠そう私は、この作品が大好きです。本当に出会えて良かったと思える作品なんです!だから少しでも多くの人が興味を持っていただければ嬉しいと思います。
(特に、私と同じ令和の若者に知ってほしい作品になっています。)

今回はそんな【銀英伝】の中でも、特に大好きな外伝について記事にしました。

※【銀英伝】を知らない方、本外伝を未読・未視聴の方へ…
 本記事は、本伝並びに外伝【汚名】の結末を含むネタバレがあります!
 読む場合は、ご注意ください。


【外伝】汚名について

【汚名】は、【銀河英雄伝説】の外伝として収録されているタイトルの一つです。本作は、【銀英伝】の主人公の1人・ラインハルトの友人兼補佐・キルヒアイスが主役の物語です👏

外伝の良いところは、本伝で語られなかった過去のシーンが読めることですよね!実際、キルヒアイスは本伝での活躍は少なかったので、ありがたいかぎりです!!
(申し訳ございません、理由は濁させてください...。)

というのも私、【銀英伝】の中で、1番と言っても過言ではないくらいキルヒアイスが好きなんです!なんなら、今まで出会ったキャラクターの中でも上位に入るくらいには大好きなんです!
(ちなみに【推し】ではなく【好きなキャラ】です…(笑)。ちなみに【推し】みたいな位置に君臨してるのはヤンです。彼に出会って人生が変わったからです。勝手に恩師と呼ばせて頂いております。)

あらすじ

【汚名】のあらすじは以下の通りです。

キルヒアイスは休暇を楽しむため、リゾート惑星クロイツナハⅢへと向かう。ラインハルトを待つ彼は、滞在先のホテルで暴漢に襲われた老人を救う。老人は、帝国軍が大敗した「アルレスハイム会戦」の指揮官、カイザーリング退役少将だった。治安責任者のホフマン警視はキルヒアイスに、暴漢はサイオキシン麻薬中毒だったと告げ、軍内部に麻薬を扱う秘密組織があると明かす。そして、司法の手が及びにくい軍内部の犯罪を撲滅するため、キルヒアイスに協力を要請する

https://www.amazon.co.jp/%E9%8A%80%E6%B2%B3%E8%8B%B1%E9%9B%84%E4%BC%9D%E8%AA%AC-%E5%A4%96%E4%BC%9D-%E6%B1%9A%E5%90%8D/dp/B08KPMF3V7より引用

1人休暇を頂いたキルヒアイスが、休暇先で麻薬取引事件に遭遇するという物語です。
本作では、ラインハルトもほぼ出てこないし、宇宙戦争もありません。そのため、少し新鮮かもしれません。

主な登場人物

キルヒアイスがメインではあるものの、今回紹介したい理由は「好きな人の活躍」ではないので...。
記事を書く上で重要な人物をまとめました。

  • ミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング

  • クリストフ・フォン・バーゼル

  • ヨハンナ・フォン・バーゼル

1人目は、ミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング(カイザーリング)退役少将です。彼は、帝国歴483年のアルレスハイム星域会戦で、中将として指揮官を務めますが、同盟軍に大敗を喫してしまいます。そのため、少将に降格・退役してしまったのでした。
彼は現在に至るまで、ただ1人の女性を愛しておりました。それが後述する登場人物・ヨハンナです。しかし、彼女には別に好きな人がおり、カイザーリングの愛は叶うことはありませんでした。
周りから無能扱いされていましたが、キルヒアイスは私人としてはマイナスな印象を受けませんでした。それもそのはず、アルレスハイム星域会戦で敗北を促したのはカイザーリングではなかったからです。

次に紹介するのは、クリストフ・フォン・バーゼル(クリストフ)中将です。彼はヨハンナの夫です。アルレスハイム星域会戦では後方主任参謀として補給部門の責任者を担当していました。そして、何を隠そう大敗の元凶です。
彼がサイオキシン麻薬を所持しており、それが気化した影響で帝国軍が攪乱し敗北したのでした。
しかし、カイザーリングがそれを主張しなかったことで、今日まで中将という地位にいます。
そして、妻・ヨハンナ、カイザーリングの3人でクロイツナハⅢで会うことになった際、麻薬密売組織の長であることを通達されたことで、カイザーリングに手をかけようと考えたのでした。

最後に紹介するのは、ヨハンナ・フォン・バーゼル(ヨハンナ)です。彼女は、先ほども記載した通り、クリストフの妻です。そしてカイザーリングが愛し続けた女性でもあります。
彼らが出会った40年前から美しかったことがわかるように、老いてもなお女性の美しさを秘めたような方です。
ヨハンナは、クリストフが犯した過ちをカイザーリングに詫びてほしいと考えていました。そのため、「クロイツナハⅢに麻薬密売組織の長が来ること」「クリストフに彼が悪事を働いたことを知ってるものがいること」を通達したのでした。

以上の3人が今回のnoteで取り上げる【愛の物語】の登場人物です。

【愛】について読み解いてみた

普段生活していて「愛ってなんだろう?」と考えることは少ないと思います。「そんなこと言葉にしなくても、考えなくても、ただの感情だし…」って感じですよね...。
ですが、本作を読んだときに私は「これは【愛の物語】だ」と思いました。そして改めて【愛】について考えてみたのです。
(補足:ここでいう【愛】とは【友愛】ではなく【恋愛】の方です)

【人間】としての評価と【男性】としての評価

カイザーリングは、過去にヨハンナから【いい人】と言われたことがありました。このとき、カイザーリングはヨハンナから【男性】として見られていなかったことを察したのでした。

これ、現代でもたまに聞きますよね。「優しい男はつまらない。ちょっと刺激のある男が好き」とか...。
ヨハンナもそういう危ない男に惹かれるタイプだったのでしょう。ですがこれは別にヨハンナに落ち度があるわけではなく、実際のところ多くの女性がそれに該当するのではないかと考えています。
いつだって少女漫画のヒーローは【いじわるなアイツ】が王道と言われているのがそれを表しています。
(とはいえクリストフはどう見ても悪役ですけどね😅)

いずれにせよ、ヨハンナにとってカイザーリングは【男】として映らなかったのが事実なのです。
またヨハンナは、キルヒアイスに次のようなことを言及していました。

「(前略)人間としての評価の高さと、愛情の深さとのあいだにはなんの関係もないのですよ」

銀河英雄伝説外伝5【黄金の翼】(創元SF文庫)p.250より引用 

このことからわかる通り、ヨハンナの愛は人間性で評価される部分にはないように思えます。

【愛した女性】が選んだ男性像

アルレスハイム星域会戦の敗退の原因はクリストフにあるものの、カイザーリングはそれを言及しませんでした。
なぜか?それはカイザーリングが言った通り「ヨハンナが選んだ男は、彼女にふさわしい、高潔で実のある男でなくてはならなかったから」です。

正直こんなのただのエゴですよね。クリストフも「アイツが勝手にやった」みたいに言っていたので感謝なんかされていないし...。
1人の男のエゴで多くの犠牲や犯罪の隠蔽が行われたことに関しては、さすがのキルヒアイスも彼を問い詰めていました。カイザーリングも今思えば「なんてことをしたんだ」と反省できますが、当時は愛する女性を守りたい一心で、悲しい選択をしてしまったのでした。
(本人も、誰も幸せにならない結果だったと言っています。)

と、カイザーリングを問い詰めてしまいましたが、正直負けた男が好きな女にできることなんて限られてますからね。彼にとって彼女を幸せにできるのは、クリストフを彼女にふさわしい存在にすることくらいしか思いつかなかったのでしょう。まぁ、それだけ忘れられなかった存在だったんだと思います。

【誰に愛されたか】ではなく【誰を愛したか】

ヨハンナは、キルヒアイスに事件の真相を問われた際に、以下の発言をしました。

「お若い人、わたしが誰に愛されたかということは問題ではありません。わたしが誰を愛したかということが重要なのですよ」

銀河英雄伝説外伝5【黄金の翼】(創元SF文庫)p.250より引用 

確かに、改めて考えてみても、彼女の言い分に納得する部分はある気がします。例えば恋人に置き換えて考えてみます。彼女は【彼が自分を愛しているから恋人になった】わけじゃないですよね(一般的に)。彼女は【彼が好きだから恋人】なんです、逆も然り。仮に別の誰かに告白されたとしても、それが好きな相手ではなかったら、その人を特別大事にする必要もない気がします…🤔

そういった感情が今回は悲劇につながってしまいましたが...。彼女は、夫・クリストフが罪を犯したことを知っていながらなお、彼の味方をしていました。彼に言われ証拠を燃やそうと手伝ったり...。

普通に考えたら、犯罪に加担するようなことは許されない行為ですし、誰もが選択するような行為ではありません。ですがヨハンナはそれを選んだ。私たち読者からみてクリストフは悪人にしか映らないけど、彼女にはどこか魅力的に映ったのでしょう。そして彼を愛したことが、彼女にとっては重要なのでした。

改めて思ったこと

【愛】って何だか素敵な響きですよね。暖かい印象を感じます。

ですが本作では、その【愛】が悲劇を生んだというか、誰も幸せにはなりませんでした。ですが、それもまた【愛】なのかもしれません。

なぜ【愛の物語】と思ったか

物語に【愛】が絡み合って起こった事件ということもあり、【汚名】は【愛の物語】と思いました。

【愛】とは、時に誤った選択を誘発してしまう存在でもあり、人を狂わせてしまうものなのかもしれません。
ですが、そんな存在を否定するわけではなく、うまく付き合っていく必要がある気がしました。本作では悲劇を生んでしまいましたが、私たちはそれを繰り返さないようにしたいところであります。

それにしても、カイザーリングとヨハンナは、本当に感情的に生きているんだなーとも思いましたね。繰り返しますが、彼らの行為を肯定するわけではありません。ですが、それだけ彼らを取り巻く【愛】という存在に、少しだけ感動してしまうのです。

物語の最期に、カイザーリングは証拠隠滅を図ろうとしたヨハンナを、キルヒアイスに代わって打ちます。その結果ヨハンナは亡くなりました。自分で手を下したのはそうですが、彼女の傍で崩れ落ちるカイザーリングは、一体どんな気持ちだったんでしょうか...。

【人を愛する】ということ

今回の事件を通して、キルヒアイスは改めて【人を愛する】ことについて思い直していましたね。
彼にとって、大事なのはアンネローゼ様の愛を求めることではなく、彼女を愛したことなんだ、と。

見返りを求めるというのはアレですけど、報われない恋ほど辛いものはないですよね。でもカイザーリングやヨハンナの存在を通して、それをキルヒアイスは良しと思った。辛い選択かもしれないけど、それを受け入れることにしたんだと思います。
実際に本作では、事あるごとにアンネローゼ様を想うシーンが出てきます。本伝の頃から、キルヒアイスがアンネローゼ様を愛していることは伝わるのですが、よりそれを感じた作品でもありましたね✨

【人を愛する】ということは、必ずしもポジティブなことではないのかもしれませんが、その行為・感情は大切にしたいですね。
私も、キルヒアイスのことを3次元から想い続けようと思います。

最後に

いかがでしょうか。
拙い文章ではありますが、一人でも多くの方が本作の魅力に気づいて頂ければ嬉しいです。

また読む前は【汚名】というタイトルの意味がわからなかったのですが、今思えば【汚名】はカイザーリングのことだけでなく、彼の【愛の代償】だったことがわかります。そう思うと、本当に良いタイトルだなーと思いました。
(余談ですが、こう愛ゆえに過ちを犯してしまう、という物語になぜか感動してしまいます。例えば【容疑者Xの献身】とか好きです。献身という言葉が、あまりにも作品を表していて…)

では、次の記事でお会いしましょう!
さいならー👋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?