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〜小人の冒険シリーズ〜

床下の小人たち メアリー・ノートン 作 |林 容吉 訳

岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b269537.html


図書館が大好きな10歳くらいの女の子が本棚の間を歩いています。どうやら途中まで読んでいた本をさがしているようです。
昨日の続きをはやく読みたくてうずうずとしながらぱっと笑顔になりました。
本を手にしてテーブルまでもどるのがもどかしく本棚の間に座りこみました。
わくわくとした表情で本をひらきページをめくっていきます。


これが私と小人たちとの出会いでした。
もうかれこれ30年以上前のことです。

イギリスの古い建物とそこに住まう家族たち。
床下の小人家族と人間家族との不思議な共存に、
幼い私はドキドキしながら、上下段組みの小さな文字がならんでいる厚い本を読み進んでいったのでした。


ストーリーはアニメ映画にもなっているので大体知っている人も多いでしょう。もちろん本ではシリーズ化されているのでまだまだ冒険は続くのですが。

私は小人の女の子と友達のように思い、お昼休みや少し長めの休憩時間のたび会いにいくかのように図書室に通っていました。
時には家に本を借りて帰り、わくわくとしながら2段ベッドの自分のベッドの中に潜り込んで本を読みました。そして同じようにクッキーを準備して眠りについた夜もありました。
目覚めた翌朝、もちろんクッキーはそのままでちょっとしょんぼりしながらも自分で食べたのでした。



しかしながら映画を見た時はあの時の女の子だと気づかずにいました。

舞台がイギリスから日本になっていたし、
なにしろ遠い記憶の奥にしまいこんでいた友達でした。
だけど見ているうちに、あれ?この子はもしかして…?とだんだんと記憶の中の女の子とエピソードが一致していきました。

懐かしの友達と久しぶりに再会したような気持ちで改めてこの本の世界のことを捉え直してみると、
小人たちの世界からみれば人間たちの世界と共存しているし、人間たちの世界では小人たちは存在していないことになっています。
小人たちの目線からみる人間たちの家は毎日が冒険の連続でした。食事の用意をするにも危険が伴い、外に出るなんて生死をかけた大冒険です。
それでも丁寧な手仕事をして家を整えているお母さんや、こつこつと道具をつくり必要なものを探しに行くお父さん、はちきれそうな好奇心をもって元気よく飛び出していく女の子たちの生活がとても好ましく感じられました。


それからこういう不思議な世界観が好きになり、ファンタジーやSFは今でも大好きなジャンルです。

きっと誰の中にも遠い昔の大切な友達はいるのでしょう。たとえすっかり忘れてしまっていたとしても…。


いつかまたどこかで再会し、
日々の中で忘れさられ、どこかにおき忘れてきてしまった冒険心を思い出させてくれるかもしれません。

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