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バックパッカー

 数えてみれば5年ぶりになる。
 空路を使っての旅は台湾行きがラストだった。
 あれから独り身になったけど、世間はコロナ禍で自律的な封鎖状態になって、身軽には動けなかった。その間に私は離島に移住したので、さらに航路が加算されて空路には縁遠くなった。
 けれども今回は思い至った。
 一年以上をかけて書き綴ってきた「風花の舞姫」という小説のラストを描くに至って。どうしても現地の空気を吸いたかった。
 記憶にある信州はもう40年近くの昔のことで、もう幻の彼方だと思う。

 旅路の前に荷造りするのは、愉しい。
 これで充分かな。いや機材が入らないかも。
 機内への持ち込みもサイズや重量とか、制限が色々できたしな。
 何度も何度も詰め替えては、思案している。
 
 かつてはこのグリーンのディパックひとつのサイズで、海外を旅していた。
 旅程は最短でも一ヶ月の気ままな旅だった。
 小さな鞄でも、大きな想い出を詰めて帰る。
 この旅程も、そんな収穫を期待する前夜だ。


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