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平戸を走る 2

 離島に住んで2年を経過した。
 感覚がずれて来てしまったのか、平戸が大陸のように見える。
 自分の住んでいる島にはコンビニはないし、信号機も教育目的として町役場に1本、小中学校前に1本あるだけ。それからすれば都会の基準は、かなり大らかになるなぁ。
 平戸から生月島に渡る。
 生月島の海を見ても、感動の量は少ない。離島生活の、これは日常のひとつだ。海原の美については、価値基準は高偏差値になってしまった。もう郷里の長崎市の海には入りたくない。
 この断崖を望む展望台は、中学生の娘を連れて登ったのが、最後だったと思う。彼女のこの数年はよく知らないが、風の噂で上京すると聞いた。
 イラストレータと心理カウンセラーを目指していると聞く。
 彼女も創作で身を立てようとしている、全く血は争えない。

 生月はクルマのCM撮影に多用された場所だ。
 実に雄大な風景の中で、映える画像が撮れる。

 生月島は捕鯨で隆盛を極めた土地だ。
 鯨はかつて勇魚と呼ばれ、捕鯨は命懸けの生業だった。
 しかも日本の伝統で鯨には戒名が付けられ、丁重に葬られてきた。その伝統を欧米は長く理解してこなかった。
 今回の取材でいい話を聞いた。
 武田信玄の四天王のひとり、山縣三郎兵衛昌景の血筋がこの島に渡ってきたという。そして変名を使い、鯨漁で財をなして山縣姓に戻したのだという。
 コレはどこかで使えそうなエピソードだと思う。
 山縣昌景と言えば、赤備えという武田軍の代名詞でもある強軍を率いていた。その剛力と心胆は子孫に引き継がれていたのだろう。
 血は争えないものだね。

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